映画コラム
マーベル作品(MCU)フェーズ3前半 一覧&全6作品の魅力を徹底解説!
マーベル作品(MCU)フェーズ3前半 一覧&全6作品の魅力を徹底解説!
『ブラックパンサー』の魅力
『ブラックパンサー』は、MCUの第18作初の黒人ヒーローによるマーベル作品。ヒーロー映画にブラックカルチャーを取り入れた斬新な物語が高く評価され、スーパーヒーロー映画としては初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされる快挙を成し遂げました。
ストーリー
アフリカの秘境にある超文明国家ワカンダ。国王ティ・チャカが亡くなり、その息子ティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)が新国王に即位、国の守護者ブラックパンサーとなる。同じ頃、ワカンダを狙う謎の男エリック・キルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)は、武器商人ユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)と手を組み、行動を開始。大英博物館からすべてを破壊するパワーを秘めた希少鉱石ヴィブラニウム製の武器を盗んだ2人は、ワカンダへの潜入を目論むが……。
現実世界でもヒーローだったチャドウィック・ボーズマン
本作の主人公・ティ・チャカ/ブラックパンサーを演じたのは、チャドウィック・ボーズマンさん。
劇中での名演から、一躍、ブラックカルチャーを代表するアイコン的存在になった彼ですが、その裏側には思わぬ事実がありました。
実は、ブラックパンサーとして初登場した『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の時点で、大腸癌を発症。
「自分ごとで世間を騒がせてはいけない」という母の教えを貫き通した彼は、シリーズの一区切りとなる『アベンジャーズ/エンドゲーム』までブラックパンサー役を全うし、2020年、43歳の若さでこの世を去ったのです。
突然の報道は全世界のファンに衝撃を与え、多くの人々が悲しみに暮れましたが、彼の勇姿が私たちの頭から消えることはありません。
惜しくも受賞は逃したものの、第93回アカデミー賞では『マ・レイニーのブラックボトム』で主演男優賞にノミネートされ、その生きざまは多くの人々に夢を与えたといえるでしょう。
ブラックカルチャー映画の風雲児・ライアン・クーグラー
本作のメガホンをとったのは、ブラックカルチャー映画の風雲児・ライアン・クーグラー監督。
黒人監督という立場から、自身に関する強い問題意識を持ち、黒人の銃殺事件を基にした『フルートベール駅で』や、ロッキーシリーズの続編で黒人青年の挑戦を描いた『クリード チャンプを継ぐ男』を描くなど、独自のキャリアを積んできた実力派監督の一人です。
彼の作品でよく見られるテーマが「世代間の違い」や「父と子の関係性」とも言われており、本作でも、その傾向は強く見られます。
主人公・ティ・チャラと父・ティ・チャカ、本作の悪役となるキルモンガーと父・ウンジャダカ。
まるで鏡のように対比できる彼らの運命には、アメリカにおける黒人問題の歴史を想起させられるのです。
ブラックカルチャーからの引用
登場人物が住む部屋の内装にブラックカルチャーの影響が見てとれるほか、劇中では、さまざまな部分で過去のアメリカ社会におけるアフリカ系アメリカ人の歴史が想起させられます。
巨大な隕石の力で高度なテクノロジーが発達した王国・ワカンダには、アース・ウインド&ファイアーのMVなどに代表されるアフロフューチャーリズム。
(精神的な故郷を失った黒人が自らのルーツを宇宙に求めたユートピア的な思想。)
また、人々の共存を願う穏健派の主人公・ティ・チャラと、急進的な行動を求める過激派の悪役・キルモンガーの2人の対立には、公民権運動や人種差別撤廃運動の指導者となったキング牧師とマルコムXの関係が反映されているのです。
娯楽映画として純粋に楽しめる作品でありながら、これらの文脈を知っていると、より楽しみ方が広がるのはまさしくMCU作品らしい魅力といえるでしょう。
007×ライオンキング
公開当時は『007』シリーズや『ライオンキング』とも比較されて語られていた本作。
確かに、その部分に着目すると両作と『ブラックパンサー』にはさまざまな類似点が見受けられます。
007に関しては、過去のインタビューで監督が「本作をMCU版のジェームズ・ボンドにする」という趣旨の発言をしていたことからも影響は明白。
世界的なスパイ活動を行うワカンダの設定はもちろん、主人公の相棒的役割で最新兵器を提供する妹・シュリの存在は、まさしく、007の相棒・Qに通ずるもの。
また、劇中で、主人公と仲間たちがカジノに潜入するシーンからは、ダニエル・クレイグ版ボンドを彷彿とさせられるでしょう。
一方、『ライオンキング』に関しては、王座を賭けた血縁通しの争い、アフリカの雄大な自然を切り取った映像美が類似点と言えるでしょう。
実際に本作の製作総指揮を担当した人物は『ゴッドファーザー』を参考にしたと言及しているため、直接的な影響は受けていないかもしれませんが、部族の調和を描いた家族ドラマとしては通ずるものが多いのかもしれません。
予測不可能な続編
主演俳優の突然の逝去に続編製作が止まるかと思われた本シリーズ。
しかし、続編の脚本はすでに完成し、現段階でキャスト陣の続投も決定しているとのこと。
果たして、作品を象徴する大きな存在を失ってしまったシリーズが、どのような展開を迎え、何を私たちに伝えようとしているのか。
2022年に公開が予定されているという最新作にも期待が高まります。
人気映画シリーズMCUの第18作となり、世界的な大ブームを巻き起こした『ブラックパンサー』。
単なる娯楽作品では終わらない社会的なメッセージや、批評性も含めて、ヒーロー映画やマーベル作品を観たことのない人にもオススメしたい一作でした。
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(文:大矢哲紀)
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