【厳選】今週公開オススメ映画!『竜とそばかすの姫』だけじゃない…!
【厳選】今週公開オススメ映画!『竜とそばかすの姫』だけじゃない…!
『少年の君』
孤独な少女と少年の出会いと事件から浮かび上がる現代中国のリアルな青春受験戦争、イジメ、ストリート・チルドレンと、現代中国が抱える思春期世代の諸問題を背景にした青春サスペンス映画の秀作です。
進学校のクラスメイトの自殺により、次なるいじめのターゲットにされてしまうチェン・ニェン(チョウ・ドンユイ)と、ふとしたことで彼女に助けられてボディガード的な役割を担うことになる孤独な不良少年シャオペイ(イー・ヤンチェンシー)。
映画はお互いが置かれた不遇な立場と、それゆえに心の拠り所として寄り添っていく過程を瑞々しく描いていきます。
しかし中盤、そうした青春映画的な情緒を巧みに保ち得ながらも、ある事件が勃発してしまうことから、後半はサスペンスフルな展開へとなだれ込んでいくあたりも実に妙味。
一方で、イジメをモチーフにした作品は日本でも(残念なことに!)今や珍しくも何ともありませんが、本作の場合、やはり熾烈な受験戦争が大きく影響を及ぼしているあたりも本作は隠さず描出できていて、さながら軍隊の訓練かと見まがうような全体主義的な色合いの異様さは、意外に自国の人々は気づいていないのかもしれません(日本も1980年代の受験戦争期、これに似た光景はあれこれ見受けられたものです)。
中国では「13億人の妹」とも称される若手女優チョウ・ドンユイ(どことなく元乃木坂46の生駒里奈にも似た面影を感じてしまいました)と国民的アイドルにして演技派イー・ヤンチェンシーの存在感だけで映画料金の基は十二分にとれるほどですが、ヒロインをイジメる美少女役・周也の可愛さ余って憎さ100倍ぶりも特筆すべきものがありました。
監督は香港映画界の個性派名優エリック・ツァンの息子デレク・ツァン。映画監督という形で親の映画的「血」を受け継いだとしか言いようのない見事さです。
第39回香港電影金像奨で12部門候補となり作品賞をはじめ8部門を制覇するなど、現在までに50以上の映画賞を受賞し続ける秀作。
実はエンドタイトルのみ個人的に違和感を覚えたのですが、その違和感もまた現代中国の現実をリアルに物語っていると言えるでしょう。
●2021年7月16日より新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマほか全国公開
配給:クロックワークス
監督:デレク・ツァン
出演:チョウ・ドンユイ、イー・ヤンチェンシー
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