〈新作紹介〉『アンテベラム』“未解決の過去は現在に害をなす”ことの恐怖を知らしめるパラドックス・スリラー
〈新作紹介〉『アンテベラム』“未解決の過去は現在に害をなす”ことの恐怖を知らしめるパラドックス・スリラー
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
どの映画でも大小あるにせよ鑑賞前のネタバレには気を付けないといけないところがあるわけですが、『ゲットアウト』(17)『アス』(19)のプロデューサー、ショーン・マッキトリックらによる最新スリラーと聞いただけで、本当はもうそれ以上のことを記すのもいけないことなのではないかという気にさせられます。
とはいえ、こちらもお仕事なので一応ギリギリのところ(宣材プレスに載っている範囲内)まで論考していくと、本作はふたつの世界が描かれていきます。
ひとつは南北戦争直前のアメリカ南部で、もうひとつは現代。
おぞましいのはやはり奴隷制度たけなわの時代の諸描写で、ここではリチャード・フライシャー監督の問題作『マンディンゴ』(75)や、それに倣ったクエンティン・タランティーノ監督の西部劇『ジャンゴ・繋がれざる者』(13)などを彷彿させる黒人奴隷虐待の実態が、ヒロインのエデンの目を通してこれでもかと描かれていきます。
これらに関しては「人間、ここまで残酷になれるものか……」などと、慄然とさせられること必至。
オープニングの長回し撮影も、時代の過酷さをじわじわと巧みに描出してくれています。
一方、現代のシーンでは黒人女性でリベラル派のベストセラー作家ヴェロニカの日常が描かれていきます。
そして今回エデンとヴェロニカを『ムーンライト』(17)や『ドリーム』(17)などで知られるジャネール・モネイが演じていますが、はたしてこのキャスティングはいったい何を物語っているのか?
映画の冒頭、ウィリアム・フォークナーの「過去は決して死なない。過ぎ去りさえしないのだ」といった格言が出てきます。
そして劇中でもさりげなく「未解決の過去は現在に害をなす」といったセリフも……。
これらは当然アメリカにおける黒人差別の歴史を示唆しているわけですが、それが本作の中ではどのようなパラドックス・スリラーとして機能していくのか? は実際に映画をご覧になって確かめてみてください。
……と、これ以上記したら怒られそうなので、ここらで止めておきます。
(文:増當竜也)
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