映画コラム

REGULAR

2021年08月27日

映画『鳩の撃退法』は藤原竜也に翻弄されっぱなしの119分。あなたは一度でどこまで理解できる?

映画『鳩の撃退法』は藤原竜也に翻弄されっぱなしの119分。あなたは一度でどこまで理解できる?

二度目の鑑賞で注目して欲しいポイント

 ここからは、二度目の鑑賞へと至る方へ向けて、注目して欲しいポイントをご紹介。二度目の鑑賞となれば、おそらく8~9割のことは腑に落ちる。予め物語のカラクリを把握できている分、入り乱れる時間軸の変化にも対応でき、一つひとつの描写を正しく理解しながら目にしていくことができるはず。ただ、二度目の鑑賞であればこそ、より一層腑に落ちない部分がくっきりと見えてくる。そして、それは劇中において答えが明示されていないことにも気が付くはず。



 カフェの店員・沼本(西野七瀬)。津田に好意がある素振りを見せる彼女の中盤以降における言動・行動に、気になる点はなかっただろうか。一富山県民として倉田(豊川悦司)の存在(噂)を認識していたとも取れるが、秀吉(風間俊介)が「スピン」のオーナーであることや、彼の妻・奈々実(佐津川愛美)の経歴や運転している車の車種についてまで把握していたのは何故だろう。「バイト帰り」とは言いつつも、「スピン」へ向かおうとする津田の前に突然姿を現したのは何故だろう。その辺りが気になり出してくると、倉田に関しての質問に「ノーコメント」と言って口をつぐんだり、津田が持つキャリーケースに興味を示していたり、父親のことを「パパ」「お父さん」と呼ばず、「父」と呼んでいることにも何かしらの意図があるように思えてくる。

 また、床屋の店主・まえだ(リリー・フランキー)の「パチンコ狂の義理の姉」と、「中学の時の2個下の加奈子センパイ」についても気になるところ。まえだの口から彼女たちについて詳しく言及されることはなく、その後は、高円寺のバー「オリビア」のママとして、津田と鳥飼(土屋太鳳)の小説を巡る問答に同席する一人として描かれていく。捉え方次第では、厄介者でしかない津田を匿っている立場にある加奈子(坂井真紀)。であるにも関わらず、津田が「オリビア」にいることが倉田サイドに把握されてしまったことが判明してもなお、動じる素振りを一切見せない。それはつまり、自らに火の粉が降りかかることはないと確信していたからではないだろうか。細かな事情を把握している素振りを見せたり、富山の新聞を取り寄せていたり、バーに立ち寄った秀吉から「ピーター・パンとウェンディ」を受け取っていたりと、彼女の言動・行動にもまた多くの疑問が浮かんではこないだろうか。



 津田は言う。「今ある事実から考えて、何が自然か。そう考えれば自ずと“隠された事実”が見えてくる」と。劇中において描かれている全ての事実を取りこぼすことなく把握することができたのなら、果たして自ずと見えてくるものがあるのだろうか。それとも、只のTMI(too much information)なのか。何をどう判断するのか、どういった答えへと辿り着くのかは、あなたの眼と心次第。二度目の鑑賞が、あなたにとってより有意義なものになりますように…。

(文: ミヤザキタケル)

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(C)2021「鳩の撃退法」製作委員会 (C)佐藤正午/小学館

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