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2021年08月27日

ドラマ「上下関係」に見る<縦型コンテンツ>の将来性

ドラマ「上下関係」に見る<縦型コンテンツ>の将来性



窪塚洋介が「ロング・ラブレター~漂流教室~」以来19年ぶりに主演していることでも話題になっている「LINE NEWS VISION」2周年記念ドラマ第1弾「上下関係」

「ロング・ラブレター~漂流教室~」では高校生役だったので、時代の流れを感じますね。

「上下関係」は、スマートフォンに特化した新たな映像表現を目指した LINE NEWS の動画プロジェクト「VISION」によるもので、LINE アプリのニュースタブ内に掲出される縦型動画ドラマです。1話約10分、10話完結という濃縮されたテンポの速い展開と、縦型を生かした構図を随所に取り入れた、これまでにないミステリードラマになっています。

 窪塚洋介が演じるのは、アパートの屋上でソファーを置いて優雅に過ごす謎の男・カワサキ。

窪塚は出演について、「LINEがやっている実験的な縦型作品だということ、皆がスマホで動画を見る時代に、必ず面白いものが出来ると見切り発車で始めましたが、その想いは確信に変わっています」と熱い想いを明かしています。

ドラマはアパートの上層と下層、人間関係の上下、世界の上下といった縦型画面を意識したモチーフがふんだんに取り込まれています。主演の窪塚洋介にくわえて、河合優実、大島優子、降谷建志、田中麗奈、板尾創路、でんでんといった豪華キャストが並んでいます。

 「上下関係」のあらすじ

上下関係に厳しい田舎から上京した小夏は、クセのある“下層”の人々ばかりが住むアパート・メゾンピルグリムに引っ越してくる。

住人はキャバ嬢、売れないないバンドマン、怪しげな管理人、そしていつも屋上にいる男“カワサキ”。

引っ越してきた最初の夜、小夏は女性の恐ろしい悲鳴を聞いてしまう。

さらに訪ねてきた刑事から、同じ部屋の前の住人の女性が行方不明になっていることを知らされる。「このアパートは何かがおかしい?」と感じた小夏はカワサキの警告を無視してアパートの謎を追っていく…。


縦型コンテンツのこれらまでとこれから

二人以上の世帯でのスマホ普及率が90%に迫る中で、スマホの画面でモノを見るということが定着し始め、縦型画面で見られることに特化したコンテンツが増えてきました。

もともとは縦型画面のコンテンツというとLINEやInstagramのライブやロールの動画、そしてTikTokなどの“SNSの個人発信”のモノが多かったのですが、ここへきて、フィクション=ドラマの数も増えてきました。

 昨年から今年にかけて新型コロナウィルスの感染拡大により、リモートでのやり取りが一気に進むと、ドラマ「リモートで殺される」や映画『真・鮫島事件』『8日で死んだ怪獣の12日の物語・劇場版』などZOOMなどの“リモート画面”のフォーマットをそのまま取り込んだ作品が立て続けに作られました。

こういう最新のフォーマットを取り込むということについてはエンタメの作り手はいつも嗅覚が鋭く、素早く手を付けますね。

縦型画面特化型コンテンツの例を軽く調べてみても、フジテレビがFODで野村周平主演の「スマドラ」を2016年に配信しています。

ほかにもミステリー劇「A/LIVE」、川栄李奈主演の「片想い送信中」、広瀬すず&中川大志のタイアップドラマ「シーブリーズ チェンジストーリー」が立て続けに配信されていて、今年も「人のスマホを見てはいけない」が配信されています。「上下関係」もまたこの作られる流れの中の一つ言えるでしょう。

 よりストーリー性を深めたCMのロングバージョンやアーティストのPVも縦型画面を前提に作られているもの増えています。

どれもここ5年前後での出来事なので一気に進んだ感がありますね。

縦型コンテンツの長所

縦型コンテンツの長所は完全視聴される確率が高いことでしょう。

一本のコンテンツの時間が10分前後と短く、視聴者を飽きさせる前に、物語が終わっていきます。連続モノでも10分前後に切り分け、それぞれに見どころがある独立性を持たせることで、その長所をキープし続けています。

完全視聴の確率が高いことは広告の面で見ても大きな利点があり、企業との共作の可能性も拡がります。

また、そもそも、縦型画面に合わせた動画自体がInstagramやTikTok、LINEといったSNSから始まっていることもあるので、当然SNSとの相性の良さも持ち合わせています。

PVとも少し違うかもしれませんが昨年の星野源の「家で踊ろう」のコラボレーションがものすごく広さで拡大していったことは皆さんの記憶に新しいのではないでしょうか?

テレビやYouTubeの広告もどんどんスキップされてしまうこと前提に5秒のCMなどを作ったりすることもありますが、開き直って一本の長いコンテンツにしてしまうことで商品やサービスのPRにつなげるというのは今後も選択肢と選ばれやすくなるかもしれません。
 

縦型コンテンツの短所

長所と短所は表裏一体、コインの裏と表であることはよくありますが、縦型コンテンツの短所もまたそれに当てはまります。

10分程度の短さ故に完全に視聴してもらえていますが、逆に言うと10分程度のカタマリで物語を作らなくてはいけなくなります。

連続モノであってもそれぞれの10分間に独立性を持たせなくてはいけなく、長い物語を描くには少々不便です。

先に挙げた縦型コンテンツの配信済み作品もそこには苦慮しているところがあって、なかには、一つのパッケージではあるもののそれぞれは全く関係のないオムニバス形式をとっているモノもあります。

そういう点でいうと豪華キャストを集めて、全10話(計100分)の作品となる「上下関係」には注目ですね。現状1話1話の中で必ず一つ”物語のヤマ”となる要素が含まれていますが、これを100分間通して見たときにはどういう印象を持つのでしょうか?

 もう一つはより物理的なものです。

縦長のアングルであることを念頭に置くために、どうしても高さのある階段や建築物などを映り込ませる必要性が出てきます。

しかし、そうなると自然と物語の舞台となる場所が限定されてきます。舞台が限定されるとなるとストーリー展開も限定されることになります。

またこのアングル上しっかりと映せる人物は二人まで、しかもしっかりとしたツーショットでないと難しくなります。

こういう点からいうと雄大な風景を見せるような観光誘致の映像や、大人数をはっきりと映り込ませたりすることには不向きです。

まだまだ課題もある縦型コンテンツではありますが、スマホが生活必需品になっていることを考えるとまだまだ発展の余地はあるかと思われます。

「上下関係」公式HP

(文:村松健太郎)

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