2021年09月03日

『科捜研の女 -劇場版-』内藤剛志インタビュー「男と女の最終地点が恋愛だという一つの現実があるとしたら…」

『科捜研の女 -劇場版-』内藤剛志インタビュー「男と女の最終地点が恋愛だという一つの現実があるとしたら…」


マリコと土門の関係性について決めている「二つのこと」


——『科捜研の女』は、マリコと土門の関係性がファンにとってどうにも気になるところですが、内藤さん自身は二人の繋がりをどのように捉えていらっしゃいますか?

内藤:これに関しては、実はやっちゃんと決めていることがあるんです。一つは、土門のマリコに対する「お前」という呼び方。この呼び方ができるのは、夫婦か恋人、もしくはきょうだいか仲のいい友人ですよね。なので、マリコと土門の間で「お前」という言葉が濁ってきたら考えよう…と注意しています。もう一つは、「兄妹」ということ。以前、土門が昔関わりのあった女性と再会する話で、最後に彼女が残してくれたものに土門が心を掴まれて、それをマリコが見ている…というシーンがあったんですが、「どういうつもりでこの話やる?」とやっちゃんに相談したら、「え、兄妹でしょ。私はそのつもりでやるわよ」とポンと返されたんです。血のつながりはないんですけれど、兄妹というのは、その考え方は正しいと思いましたね。だから、自分たちとしては「お前」が濁ったらやめる、兄妹であり同志である…という二つを守りながらやっています。



——なるほど、二人の関係にはそういう決めごとがあったんですね。

内藤:もちろん、見ている方々がマリコと土門の関係性を誤解したり楽しんでくれたりするのはいいと思うんです。ただ、自分たちの方からその部分をくすぐることは一切ないですね。二人の顔の距離が近かったらワクワクするだろうな…なんて思ってやることはなく、そこは単純に芝居として要求されるものをやっています。たとえば、もし二人が結婚することになったら、逆にがっかりする人もいるかもしれないし、そのギリギリまでのところが見どころなんじゃないかと自分は思いますね。

——マリコと土門のような関係性というのは、実際にはなかなかないものですよね。

内藤:そうですね。男と女の最終地点が恋愛だという一つの現実があるとしたら、現実じゃないものをやるのがドラマであり自分たちの仕事だと思うんです。マリコと土門は“ドモマリ”と言われているようですが、二人のような関係性が100年くらいたったときに「それ、“ドモマリ”じゃん」と当たり前に言われる単語になっていたらいいなと。それが自分たちの狙ったところで、“助さん格さん”みたいなジャンルとしてドラマを通して残せたらとは思いますね。


土門刑事も大岩刑事も「自分にとっての距離は同じ」

——ドラマ『科捜研の女』は2020年にseason20を迎えて、内藤さんは非常に長く土門刑事役を続けていますが、土門を演じるうえで心がけているのはどのようなことでしょうか?

内藤:土門については、シンプルに演じることをいつも心がけています。正義感の塊であり、見たままの男でいようと。他の刑事ならば、正義感が強い一方で内に悲しみを抱えている…みたいな作り方もありますが、土門はそういう二重構造にするのはやめていますね。口に出した言葉がまさに彼そのもので決して嘘をつかない、いうなれば“一筆書き”のような強くて率直な男でありたいと思って演じています。

——内藤さんは、『科捜研の女』以外でも『警視庁・捜査一課長』の大岩刑事など、刑事役を演じることが多いですが、「刑事」というよりは、一人の男としての土門を捉えて演じている…ということでしょうか?

内藤:そうですね。刑事というのは仕事にすぎなくて、他の役でもそうなんですが、どういう人間なのかというところから考えるし、そのほうが大事だと思うんです。若い俳優さんに「刑事をやるときのコツとかあるんですか?」と聞かれることも多いんですが、自分はそういうのもあまりないんですよね。刑事だからどうこうというよりは、たまたま仕事が刑事だった…というふうに捉えてやっています。



——刑事役に絡めてもう一つお聞きしたいのですが、『科捜研の女』で土門刑事の上司・藤倉刑事部長を演じている金田明夫さんが、『捜査一課長』では内藤さん演じる大岩刑事の片腕・小山田役で、両ドラマにおける立場の逆転が気になるファンは少なくないと思うのですが…?

内藤:それもよく聞かれるんですが、自分は役者として演じるだけなので、戸惑ったりやりにくかったりすることは一切ないんですよ。極端な話、一日の中で午前に土門、午後に大岩を演じても問題ない。どんな役でも自分にとっての距離は同じなんです。むしろ、この役は自分と距離が近いけれどあの役は遠い…というような捉え方はしないようにしています。そういうところは明夫ちゃんも同じだと思うし、距離が一緒だからこそ自分は両方の役を楽しんでいるので、見ている方々にとっても「今日は『科捜研』で土門のほうが頭下げてる」みたいな面白さになってもらえたらと思います。

——初の劇場版を作り終えて、またこの先も『科捜研の女』を映画でやりたいと思われますか?

内藤:楽しかったので、チャンスがあれば何度でもやりたいですね。映画って不思議なもので、ドラマと同じセットを使ってやっていることも一緒なのに、何か高揚感みたいなものがありました。試写を見たときも、自分たちで「すっげえ面白いじゃん、これ」と口に出して自画自賛していて(笑)。映画はドラマよりハードなものもやれるはずだし、毎年一回ぐらいやってもいいと思いました(笑)。


 
——最後になりますが、今回の劇場版で内藤さんが思う見どころをぜひ教えてください。
 
内藤:せっかく映画になるので、テレビドラマと違うということをぜひ楽しんでほしいです。科学の力で事件を解決するという目的は一緒ですが、映画はドラマとはルールがちょっと違う。いつもより少し激しかったり悲しかったり、テレビでは見られないものを見ることができます。本来であれば劇場で大勢の方に声を出して応援してもらって見ていただきたいのですが、今はコロナ禍なので、規制の範囲の中みなさんで一つの作品を楽しんでもらえたらと思います。

※榊マリコの「榊」は木へんに神が正式表記

(撮影/つるたま、取材・文/田下愛)

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(C)2021「科捜研の女 -劇場版-」製作委員会

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