「IP~サイバー捜査班」第8話レビュー:物語は最終章へ…安洛よ、人の情を忘れないで!(※ストーリーネタバレあり)
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佐々木蔵之介主演、京都を舞台としたミステリー「IP~サイバー捜査班」が2021年7月1日より放映スタートした。共演に福原遥、間宮祥太朗ほか。
佐々木演じる安洛一誠(やすみや・いっせい)は、「サイバー総合事犯係」の主任で、サイバー犯罪に関する知識と捜査スキルはピカイチ、超がつくほどのデジタル人間。そんな安洛が自分の父親ではないかと考えている古宮山絆を福原遥、裏で安洛について調べる密命を担う多和田昭平を間宮祥太朗が演じる。サイバー犯罪と、その裏にある人間ドラマを絡めたミステリー。
本記事では、その第8話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
「IP~サイバー捜査班」第8話レビュー
今回お総事係が挑むのは、高度な技術で動画を加工する「ディープフェイク」動画の流出事件。警察庁で犯罪を助長する「犯罪インフラ」の撲滅に取り組んでいるという桐子香澄が安洛たちに協力を求める。
「美人すぎる警察庁のキャリア」と称される香澄。美しいだけでなく実力も確かなものらしく、難しげな用語を連呼する安洛の解説にまったくひるまない。それどころか、堂々と真っ向からやりあい「さすがです」と安洛を唸らせてしまう。演じる内山理名のキリッとした表情と立ち姿が役柄によくハマっていた。
ただ、香澄が安洛の警察庁異動の話を口にしてしまったため、お総事係の面々は少なからず驚く(係長の平塚すら寝耳に水だったのが、なんとも気の毒だった…)。中でも絆はショックを隠せない。
香澄によれば、ディープフェイク動画製作アプリを販売する闇サイトがあり、サイトを運営する犯罪インフラが京都市内のフリーWi-Fiスポットを利用しているという。安洛がフリーWifiスポットの防犯カメラを分析したところ、共通して映る一人の男がいた。現職の警察官・永尾だ。
永尾が犯罪インフラに絡んでいるとにらむ安洛たち。彼の行動パターンを解析した結果、フリーWifiスポットに出現する可能性の高い日時が判明。京都府警の刑事たちが各スポットに張りこむ大掛かりな捜査が行われることになる。
そんな中、安洛の引き抜き工作を進めようとする警察庁官房審議官・楡井と多和田。実は多和田は楡井の息子。父の命令で安洛を観察していたのだった。しかし、安洛が異動したらお総事係は解体…という話を聞かされて多和田はショックを受ける。そもそも楡井はお総事係を安洛引き抜きの道具としか考えていなかった。
張り込み捜査の当日、市内のフリーWifiスポットに絆や捜査一課の刑事たちが待機する。しかし、闇サイトでフリーWifiスポットを介したアクセスがあったにもかかわらず、永尾らしき人物は見当たらない。そこで安洛が気づいた。
防犯カメラに映っていた永尾の姿は、犯人がカメラをハッキングして作ったもの。つまりディープフェイクだったのだ。そして、フリーWifiスポット利用のために犯人が用いた手段は宅配便。起動したままのパソコンを発送し、配達員がWifiスポットに到着するたびに遠隔操作で闇サイトへアクセスさせていたのだった。
当該のパソコンと配達員を発見した絆たち。安洛の指示でそのまま配達を続けてもらい、永尾の居場所をつきとめる。しかし、刑事たちが中に踏み込むと、そこにいたのは毒を飲んで悶える永尾。彼は程なくして息を引き取るが、自分が死ぬまでの一連の流れを撮影していた。その動画がネットに流れてしまう。
永尾の動画を見て、「ディープフェイクより恐ろしい新たな毒が社会にばらまかれたんだ」とつぶやく安洛。彼の目に見えている毒とは果たして何なのか――?
解決は次回に持ち越しになったが、最終章にふさわしい見ごたえのある事件。防犯カメラの映像がディープフェイクとわかったところで、「ああ、そういうことか!」と思わず声を上げてしまった。防犯のための映像すら偽装できてしまう現代。怖い時代になりつつあるのをひしひしと感じさせるストーリーだった。
確かに警察庁に行けば、安洛のサイバー捜査の手腕が活かされてより多くの事件を解決できるのかもしれない。しかし、彼がいなくなればお総事係はなくなってしまう。毎週ドラマを見て応援してきた者からすると、この個性的なチームが解体してしまうのはどうにも寂しい。
犯罪解決に必要なのは情報解析なのか人の情なのか…?と問いかけをしてきた感じもある本作。今回、筆者は安洛と多和田に「人の情を忘れないで…!」と語りかけたくてたまらなかった。多和田が父親に反旗を翻すのは大変かもしれないし、安洛に譲れない志があるのもわかる。それでも、できたら絆や平塚ら同僚たちへの情を捨てずに進む道を決めてほしい…そう思わずにいられなかった。
次回はついに最終回。問題が山積みの中、どのように物語が決着するのかをしっかり見届けたいと思う。
「IP~サイバー捜査班」第8話ストーリー
安洛一誠(佐々木蔵之介)ら京都府警・サイバー総合事犯係のもとに、警察庁から警視正・桐子香澄(内山理名)が赴任してきた。香澄はその美貌から、メディアでもよく取り上げられる有名な人物だった。
彼女が出向してきた背景には、ここ数カ月、世間を騒然とさせている“ディープフェイク動画大量流出事件”があった。最近、政治家や著名人のスキャンダルを巧妙にねつ造した動画が拡散される事案が急増。
香澄はディープフェイク動画の製作アプリを販売する闇サイトを発見、その闇サイトを運営する犯罪インフラが京都市内の複数のフリーWi-Fiスポットを利用していることを突き止めたという。サイバー総合事犯係と連携して犯罪インフラを摘発したいと話す香澄に、安洛も快く協力を約束する。
そんな中、香澄と今をときめくメディアアーティスト・西堂牧彦(大東駿介)の密会フェイク動画が拡散。さらに、ディープフェイク動画被害にあった大学生が、拡散した相手を刺す殺人事件も発生する。ディープフェイクが殺人に連鎖する恐ろしさを痛感した安洛は、フリーWi-Fiスポットの防犯カメラを徹底分析し、怪しい男を見つけ出すことに成功。なんとそれが現職の警察官・永尾享二(波岡一喜)だとわかるが…!?
そのころ、警察庁官房審議官・楡井文則(升毅)は、多和田昭平(間宮祥太朗)からの最終報告を受け、安洛の警察庁への引き抜き工作を進めていた。古宮山絆(福原遥)は安洛の異動話を知り、激しく動揺して…!?
主軸である安洛が抜ければ、サイバー総合事犯係の弱体化はまぬがれない。もしやこれがサイバー総合事犯係、最後の事件になってしまうのか――!?
ついに物語は《最終章》に突入! ディープフェイク動画大量流出事件に潜む巨大な悪意とは…!? そして安洛はどんな選択をするのか…!?
(文・田下愛)
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