2021年11月04日

〈新作紹介〉『ほんとうのピノッキオ』原作に即した美しくも残酷で甘美なダーク・ファンタジーは人生そのもの

〈新作紹介〉『ほんとうのピノッキオ』原作に即した美しくも残酷で甘美なダーク・ファンタジーは人生そのもの



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

“ピノキオ”といえばディズニーのアニメーション映画をはじめとして世界中で幅広く知られる物語であり、ウソをつくと鼻が伸びるなど子どもたちへの教訓を示唆してくれている人気キャラクターでもありますが、本作は『ゴモラ』などで知られるマッテオ・ガローネ監督が、そもそもの原作であるイタリアの作家カルロ・コッローディによる児童文学の世界観により近づけながら手掛けた作品で、そうするとどこかしら美しくも不気味で残酷、それでいて甘美なダーク・ファンタジーとしての色合いがぐっと強まるという興味深い印象の作品に仕上がっているのでした。



何よりも木目の肌の質感が実にリアルなピノッキオ(フェデリコ・エラピ)のキャラクター構築が秀逸で、可愛くもあり、人間になりたいと臨む純朴な悪ガキとしての愛らしさが自然に醸し出されています。

一方で特殊メイクによるさまざまなクリーチャー・キャラクターたち、特にコオロギの造形は登場した瞬間「ホラーか?」と思えるほどで、また森の中や後半の海などに登場してくるさまざまなクリーチャーたちもそれぞれ大いに異彩を放ちつつ、それによって妖精の美しさも一層引き立つ効果をもたらしているかのようです。



総じて、一見ファンタジーと夢見がちに唱えられがちなジャンルの奥底に潜むダーク・テイストと、それゆえに人は惹かれてしまうといった闇の諸要素、即ち人生そのものまでも見事に描出されており、たとえば『シザー・ハンズ』『アリス・イン・ワンダーランド』などを手掛けたティム・バートン監督も、本作の原作児童文学などの影響を多分に受けているのかもしれません。



ジェペット爺さんに扮するロベルト・ベニーニの名演も忘れられないところで、実は彼、2002年に映画『ピノッキオ』を監督・主演したこともあり、そういった縁もあってか、実に本作の趣旨にも賛同しながらノリノリで演じている感が大いに窺えました。

(文:増當竜也)

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