〈新作紹介〉『フォーリング 50年間の想い出』あの名優がこの名優を主演に初監督した、父子の長年にわたる葛藤と絆
〈新作紹介〉『フォーリング 50年間の想い出』あの名優がこの名優を主演に初監督した、父子の長年にわたる葛藤と絆
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
『ロード・オブ・ザ・リング』3部作(01~03)のアラゴルン役や『グリーン・ブック』(18)などで知られる名優ヴィゴ・モーテンセンが初監督&出演した映画です。
彼は息子を演じます。
主演は『エイリアン2』(86)のビショップ役で今なおファンの伝説的とも圧倒的ともいえる多大な支持を集め続けるランス・ヘンリクセンです。
彼は父親を演じます。
もう、出来が良かろうが悪かろうが、これだけで映画ファンは必見でしょう!
(だって、アラゴルンが監督した映画にビショップが主演しているのですから!)
いや、そんな言い方は父と子、そして家族の葛藤と絆を見事に描き上げたこの秀作に対して失礼かもしれません。
そう、本作はヴィゴ・モーテンセン監督の秀逸で時に大胆なキャメラ・アイに基づきながら、ランス・ヘンリクセンが一世一代の名演を披露してくれることで、改めて「彼らのファンでいて良かった!」と映画の神様に感謝したくなる作品なのです。
父ウィリスは反共主義者でイスラム教徒をにらみつけ、そして同性愛者に対する差別と偏見を隠そうともしない男です(きっとジョン・ウェインのファンだとも思います)。
息子ジョンは同性愛者で、現在はアジア系のパートナー、ヒスパニア系の養女と同居しています。
そして父に認知症の兆候が表れ始めたことから、息子が面倒を見ることになるのですが、案の定スムーズに生活できるわけがありません。
映画は現在と、およそ50年前から遡っての父と子の長年にわたる確執を、時間軸を錯綜させながら端正に描いていきます。
若き父に扮するのが『蜘蛛の巣を払う女』(18)などのズヴェル・グドナソン、ジョンの妹に『マイ・ライフ、マイ・ファミリー』(07)などのローナ・リニー、さらには医者の役で何とデヴィッド・クローネンバーグ監督が特別出演!
そう、モーテンセンは『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(05)『イースタン・プロミス』(07)といったクローネンバーグ監督作品の主演俳優でもあるのでした。
決してストーリーそのものが斬新なわけではありませんが、画面の端々から監督として、また俳優としてのヴィゴ・モーテンセンの、今回どうしようもないビッチな親父を快演するランス・ヘンリクセンに対するリスペクトが画面からあふれ出ています。
(もちろん、他の俳優たちの魅力の描出もツボを突いています)
そのような映画に対して、これ以上何の批評が必要でしょうか?
とどのつまり、ただただ名優たちの名演を堪能すべき映画というものが確実に存在することを、改めて痛感させてくれる作品でもあるのでした。
(文:増當竜也)
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