2021年11月18日

〈新作紹介〉『モスル あるSWAT部隊の戦い』ルッソ兄弟が放つ壮絶!イラクSWAT対イスラム過激派の抗争から浮かび上がってくるもの

〈新作紹介〉『モスル あるSWAT部隊の戦い』ルッソ兄弟が放つ壮絶!イラクSWAT対イスラム過激派の抗争から浮かび上がってくるもの



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

イラクのSWAT部隊とISIS(イスラム過激派組織)の壮絶な攻防秘話を描いた異色戦争映画ですが、これを『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)&『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)などで知られるルッソ兄弟がプロデュースしている事実に驚かされます。

宇宙を股にかけた壮大なファンタジー・バトルから、現実の過酷なリアル・バトルへの転身。

そこには、かつて自分たちが正義であることを訴え続けてきたアメリカ映画の本質が徐々に、そして大きく変わりつつあることを痛感&実践する次世代の映画人たちの挑戦を物語っているかのようでもあります。



『ハート・ロッカー』(08)のスヘール・ダッバーシなど数名を除き、正直なじみのない中東系の俳優を大挙起用し、台詞も現地の言語を用い、ゲスト扱いのアメリカ人などは一切登場せず、ひたすらドキュメント・タッチでSWATのミッションが描かれていくという、この潔いシンプルさは一方でアメリカ側の余計な意識を盛り込むことを避けたいという、製作サイドの意向も強いように思えてなりません。



『大いなる陰謀』(07)などポリティカル・サスペンスものの脚本家として知られるマシュー・マイケル・カーナハンの初監督作品。

1991年に多国籍軍がイラクを空爆したときに子どもだったという彼は、イラク戦争を含む中東の実態をアメリカ人の目ではなくイラク人の目線で何とか捉えられないだろうかという、そんな責任感も含めた熱意もまた新たな世代の賜物であり、そうした挑戦がどこまで上手く成されているかは見る人それぞれの感性や知識や思想にお任せするとして、少なくとも見終えてイラクやISIS、中東、そして世界中の紛争について何某かの議論なり対話なりをしたくなる欲求に駆られることでしょう。



超リアルな戦闘シーンや、スヘール・ダッバーシをはじめとする個性豊かなキャスト陣の集結は自然と“いぶし銀”的なチーム映画としての魅力を醸し出すなど映画的要素をきっちり押さえた上で、見る側の意識を啓蒙させてくれることでしょう。

真のエンタテインメントとはそういうものであってほしいと常々願っている身としては、これは一つの試金石になりうる作品ではないかと思えてなりません。



エンド・クレジットに最初現れる名前の列記も、大いに考えさせられるものがありました。

(文:増當竜也)

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