<祝・M1優勝!>芸人・錦鯉の魅力とは|強烈なギャグと愛のある気遣いのM-1ファイナリスト
お笑いコンビ「錦鯉」、この記事を読んでいる方の中には知っている人も多いだろう。
「知っている人は多いだろう…」と書けるだなんて、なんとも感慨深い。2020年、彼らが初めて「M-1グランプリ」の決勝に選ばれた際とは大違いだ。
当時、あまりの喜びで「錦鯉がファイナリストに選ばれたので、ぜひ決勝を見て!」と周りに言うも「錦鯉が好きなんですね」と返してくれたのは、お笑いファンだけ。
普段、私と一緒に男性アイドルの推し活をしているような友人たちは「おっけー!」とノリよく返してくれたが、頭の上にはクエスチョンマークを浮かべていたし、当時49歳と42歳の彼らを見て申し訳なさそうな表情で「詳しくなくて、ごめんなんだけど、M-1って若手の戦いだよね?」と確認してきたものだ。
2019年の「M-1グランプリ」敗者復活戦。その日から彼らのことを真っ直ぐに応援してきた1人のファンの目線で、今回は錦鯉の2人の魅力を語らせてほしい。
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錦鯉のおもしろさを成立させる2つの要素
錦鯉のおもしろさといえば、一度見たら忘れられない長谷川のギャグを思い浮かべる人も多いだろう。一見「怖い人なのかな?」と思わせる、白のセットアップスーツに身を包んだスキンヘッドの男性・ボケの長谷川雅紀が、びっくりするような声量で軽快に歌い(?)ながら、コミカルにパフォーマンスする、あの感じ。もうとにかくおもしろい。
例えば、初のファイナリストとなった2020年「M-1グランプリ」の決勝で披露したギャグ「レーズンパンは、見た目で損してる!」なんて、おバカな長谷川らしさ全開だ。
…しかし、今こうやってテキストで書いてみても、「レーズンパンは、見た目で損してる!」ってなんなのか、つくづく意味がわからない(褒めている)。
意味がわからないけど、吹き出してしまうレベルでおもしろいから、それでいい。
なにかと考察ブームな昨今の流れと逆行し、小難しいことをすっ飛ばして「ごめんなさい!おもしろいです!」と言いたくなっちゃうようなおもしろさこそが魅力の1つなのだ。
ただ、錦鯉の魅力は長谷川のギャグだけではない。長谷川の頭を容赦なく引っ叩いている相方・渡辺隆による、愛のある言動にもぜひ注目してほしい。
例えば前述した「レーズンパンは〜」のギャグ中、渡辺は小さな声で「お?お?なんだ?」と合いの手のようにつぶやいている。また、長谷川のギャグ終わりに「ウケるわけないだろ!」とすぐにツッコむのではなく、「これは〜…どうなんだ?」と架空の観客の反応を待ってからツッコむ。
長谷川の意味がわからないおもしろさと、渡辺の細かい演技。この2つが合わさることにより、錦鯉のおもしろさは成立している。
見ている人にとっては、一度笑いのツボを掴まれたら、ずっとツボにハマってしまう“没入型”漫才。だから、何度見ても楽しい。次がどんな展開かわかっていても、腹が捩れるほどに笑ってしまう。
ピュアな2人が醸し出す柔らかさ
ところで、彼らの存在が気になり、ドキュメンタリー番組を見たり、インタビュー記事を読み漁ったりする中で、私は驚いたことがある。長谷川は渡辺のことを「タカシ」と呼び、渡辺さんは長谷川さんのことを「マサノリさん」と呼んでいることだ。
さらに、彼らはお互いに「ここまでこれたのはタカシのおかげ」「マサノリさんがおもしろい」とリスペクトを言葉にする。もっというと会話の中でさらっと「そういう考え方ができるところがイイよね」「おもしろいよね」とお互いを褒め合うこともある。
コンビ間に限った話ではない。お世話になった芸人、長谷川にとっては札幌吉本時代の同期・タカアンドトシ、渡辺にとっては同じ事務所のハリウッドザコシショウやバイきんぐに対して「おかげさまで」と感謝を表すことも多い。
これは私の体感ではあるが、大人になり、仕事をするようになってからというものの、下の名前で呼び合っている人、年齢が下の相手に感謝を述べている人を見ることは減った。それを彼らはさらっとやってのける。そんな柔らかさと謙虚さが、とても好きだ。
1本の動画から垣間見える錦鯉の人柄の良さ
さらに後輩芸人たちとの間にも、彼らの柔らかさは健在する。12月15日にM-1グランプリ2021のSNSアカウントで公開された動画を見てほしい。
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— M-1グランプリ (@M1GRANDPRIX) December 15, 2021
宮本浩次「昇る太陽」☀
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M-1グランプリ2021?
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今年もアツすぎる
コラボレーションが実現!
昇る太陽、M-1戦士たちを照らせ…!!
輝く明日へ導いてくれ…!! #人生変えてくれ #宮本浩次#M1 #M1グランプリ #M1GP2021 pic.twitter.com/sigecBSmfy
お気づきいただけただろうか?2分58秒、ランジャタイの方に体を向けてわずかに近づきながら拍手を送る渡辺。3分12秒で真空ジェシカやモグライダーらと、輪になって決勝進出の喜びを分かち合う錦鯉。
そして、動画のラスト、「最高の大会にしような!」と言う渡辺。
…いや、もう最高の一言に尽きる。
バチバチなはずの賞レースで、こんなふうに仲間を思いやることができる人柄。「絶対勝つ!」と闘志を燃やすのではなく、あくまでも「盛り上げていこう」という姿勢…。これは、なんという少年漫画なんだ…涙が止まらない…。
M-1ファイナリスト最年長コンビとして話題に上がることが多い2人だが、ちょっぴり怖い見た目とは裏腹に、心はいつまでもピュアなのだ。
「年齢は関係ない」をゆるく体現する錦鯉からもらえるパワー
そんな錦鯉だが、私はくじけそうになるたびに、彼らからパワーをもらっている。ライターの仕事をし始めて、5年。日々バズるコンテンツや、自分じゃ思いつかないような言葉の言い回しを見て、恥ずかしながら「もうダメだ!ライター向いていない!」と自暴自棄になることが多々ある。
でも、芸歴20年超の2人がお笑いの道を辞めることなく、過去最大6017組がエントリーした「M-1グランプリ2021」においてもファイナリストとして選ばれているのを見たり、2021年10月に初の単独ライブを成功させたりしたのを見ると「5年なんか、まだまだじゃん!」と思えるのだ。
しかし、このことについて長谷川は、2021年11月17日に発売された自叙伝「くすぶり中年の逆襲」(新潮社)の中で「辞める勇気がなかった、というのが正直な気持ちです。辞めても他にやることもないし、やりたいこともない。結果、芸人であることにしがみつき、50歳目前でようやくブレイクしました」と話している。
また、渡辺も同書籍の中で「よくオレたちのことを『中年の星』(中略)という紹介のされ方をするんだけど、それは逆の気がするんだよね」「世間の人たちには反面教師にしてもらわないと、元気をもらうのはいいけど、マネをしちゃダメだ」と言及している。
「年齢なんて関係ない」そうやって言うものの、決してキレイゴトにはしない彼らだから、もしかしたら、私がこうやって今「錦鯉かっこいい!」と書いているのも、本人たちは「違うんじゃないかな」と否定するかもしれない。
それでも、私は「錦鯉って、めちゃくちゃおもしろくて、めちゃくちゃかっこいいんです」と叫びたい。
どうか最高の大会で、最高の景色を見せてください!!!
(文:於ありさ)
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