2021年12月23日

<新作レビュー>『夫とちょっと離れて島暮らし』人気イラストレーターの島暮らしから浮かび上がるコミュニケーションの大切さ

<新作レビュー>『夫とちょっと離れて島暮らし』人気イラストレーターの島暮らしから浮かび上がるコミュニケーションの大切さ



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

Instagramのフォロワー10万人の人気イラストレーター、ちゃずさんが鹿児島県の奄美群島・加計呂麻島に期間限定移住した模様を綴ったドキュメンタリー映画。

東京で暮らしていたちゃずさんは都会に息苦しさを覚え、一方で旦那さんは都会が大好きということで、結婚4年目にして円満別居し、ちゃずさんは単身加計呂麻島へ。

地元の人々に受け入れられ、現地で日々イラストの仕事をしながら(しかし光回線がまだ通っていないのは、ちょっと大変そう)、旦那さんとも日々の電話連絡を怠らない仲の良さ。


>>>『夫とちょっと離れて島暮らし』全ての画像を見る(6点)

こう書いていくと何やらうらやましく感じられそうですが、実際はその地方独自のルールみたいなものは存在し、また地元の人々とのコミュニケーションは人口が少なければ少ないほど必要不可欠になっていきます。
(そういったものを煩わしく思う人にとっては、都会の方が住みやすいかもしれません)

その伝では、ちゃずさんは地元の人々と上手く触れ合い、また持ち前のイラストの腕もコミュニケーションを取る上で大いに役だったようです。

彼女自身、東京ではアパートの隣に住んでいる人の名前も知らないような希薄な人間関係よりも、濃密な関係性を保てる田舎のほうが肌に合ってはいたのでしょう。

だからこそ、島に滞在する期間がどんどん延長されていき、地元の人々からも東京へ帰還するのを惜しまれるような関係性が培われていったようです。


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一方で、そんなちゃずさんのライフスタイルに魅せられて、はるばる島へ赴いて彼女を撮り続ける女優の國武綾監督もまた、都会の生活に息苦しさを覚えていたひとりであり、そうこう考えると「類は友を呼ぶ」ではありませんが、同じような想いの持ち主が次第に集まりながら本作は自然に、そして必然的に完成していったのかもしれません。

もしかしたら人間は「都会に呼ばれる人」と「田舎に呼ばれる人」に大別できるのかもしれません。

その伝では、ちゃずさんも國武監督も「田舎に呼ばれる」人だったのでしょう。


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そしてちゃずさんは、東京にいた頃に比べて、島へ赴いて以降は描くイラストのタッチも雰囲気もかなり変わったといいます。

そして國武監督が完成させた本作も、単に「島暮らしは楽しいよ」の域を越えて、人生におけるさまざまな選択肢をいかに有効活用していくかの大切さを、巧まずして伝えているように思えてなりませんでした。

(文:増當竜也)

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