寅年だから『男はつらいよ』シリーズを1作目から見ていこう!
2022年、あけましておめでとうございます。
今年もcinemasPLUSをよろしくお願いいたします。
さて、今年は干支でいうと寅年にあたります。寅ということで、映画ファンならずとも真っ先に思い出すのは、やはり寅さん!
そう、フーテンの寅こと車寅次郎が日本全国を旅し、故郷の葛飾柴又に戻っては大騒動を巻き起こす、あの人情喜劇『男はつらいよ』シリーズです!
せっかくの寅年、シリーズ全50作品を毎週1本ずつ見ていくというのもオツかもしれませんね。
というわけで、2022年最初の《金曜映画ナビ》は記念すべき第1作『男はつらいよ』にスポットを当ててみることにしました!
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実はテレビ・シリーズから始まった『男はつらいよ』
そもそも『男はつらいよ』は、1968年10月3日から1969年3月27日にかけてフジテレビで放送された山田洋次を原作&メイン監督とする全26話のテレビ・シリーズでした(映像そのものは、残念ながら第1話と最終話しか現存していません)。
もちろん、主演は渥美清です。
このドラマ、回を追うごとに好評だったのですが、最終回で何と寅さんは奄美大島でハブにかまれて死んでしまうという衝撃のラストを迎えてしまった!?
これには視聴者の抗議が殺到し、ならば映画で生き返らせよう(というか、今なら「パラレルワールドとして、一からやり直そう」みたいな発想ですかね)ということで、1969年8月27日に山田洋次監督のメガホンで映画『男はつらいよ』が公開されたのでした。
お話は、テキヤ稼業で日本全国を渡り歩く寅さんが、家出してから20年後にして故郷の葛飾柴又の団子屋「とらや(本家とらや老舗)」に戻ってくるところから始まります。(この「とらや」、第40作から「くるまや(本家くるまや菓子舗)」と店名が改称されます)
「とらや」に住んでいるのは、寅さんの育ての親でもあるおいちゃん夫婦(森川信&三崎千恵子)、そして寅さんの心優しい妹さくら(倍賞千恵子)。
そのさくらに良きお見合いの話が持ち上がったのですが、寅さんが親代わりとしてその場に出席してしまったことからお見合いはブチ壊しとなり、おいちゃん夫婦と大喧嘩の果てに柴又を去っていきます。そして京都から奈良へ赴いた寅さんは、そこで柴又帝釈天の住職・御前様(笠智衆)の娘で寅さんの幼馴染でもある冬子(光本幸子)と再会。
一目で冬子のことを好きになってしまった寅さんは、彼女の帰京に誘われる形で再び柴又へ帰還。
そこで寅さんは、とらやの隣の印刷会社の行員・博(前田吟)がさくらのことを好きであることを知ってしまい……。
対になっている第1作と第2作
今更ながらかもしれませんが、この『男はつらいよ』第1作には、シリーズ全50作に連なる毎度おなじみのパターンの原点が多数盛り込まれています。
寅さんが葛飾柴又に帰ってきて、何かやらかしてはおいちゃんたちと喧嘩して、家を出ていく。
旅先だったり故郷だったり、さまざまな場所で美しい女性と出会っては片想いの恋に落ち、最後はふられる。そのくせ他人の恋に関しては、かなりの確率で成就させるという、仲人おじさんとしては天才的でもあるのです。
そんな寅さんをなぐさめては心の支えになり続けるのが、妹のさくら。
実はこの映画版『男はつらいよ』、もともとシリーズにするつもりはなく、寅さんとさくらの兄妹関係を改めて描き、最後は彼女と博の結婚を以って終わらせる予定でした。
興行成績も特に大ヒットというわけではなく、まあまあ合格といった塩梅で、ただし新しいシリーズものを当時探し求めていた松竹は続編の製作を要求し、これに応じて山田監督は第2作『続・男はつらいよ』(69)を発表し、寅さんの実母を登場させて母子関係を描きます。
山田監督自身はこの第2作で終わらせるつもりでしたが、会社はさらに続きを求め、第3作『男はつらいよ フーテンの寅』(70)を森﨑東監督、第4作『新・男はつらいよ』(70)を小林俊一監督のメガホンで映画化(ともに脚本は山田洋次)。
すると回を重ねるごとに人気はうなぎのぼりになっていき、ついに第5作『男はつらいよ 望郷篇』(70)で山田洋次自身が再び監督として登板して更なる人気を勝ち得、その後も尻上がりでヒットを続けていくことになったのです。
こうして考えていくと、山田監督の真の構想として第1作と第2作は対の関係になっており、ここで終わっても問題はない形にはなっています。
その伝ではまずはやはり第1作を、続けて第2作を押さえておいて、そこからシリーズ鑑賞をじっくり始めていくのが得策ではあるでしょう。
毎週1本ずつ見ていけば、全50作を完遂するころにはちょうど2022年も終わる頃。
NHK大河ドラマではありませんが、今年はぜひ寅さんとともに1年を過ごしてみてはいかがでしょうか。
そして寅さんがもたらす数々の笑いから、みなさんが幸せな気分に浸れますように!
(文:増當竜也)
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