「30までにとうるさくて」“令和の日本版SATC”に共感する「2つ」の魅力
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コンテンツが溢れかえるこの時代に、私達が求めるもの。それは“共感”。
今、20〜30代女性を中心に、話題沸騰となっている作品がある。
2022年1月13日より放送されているABEMAオリジナルドラマ「30までにとうるさくて」だ。
それぞれ異なった感性や価値観を持つ、現代の東京を生き抜く29歳独身女性4人組の恋、キャリア、性、友情の物語。SNSでも続々と情緒あふれるコメントが湧き上がっている。
「悩みが超イマドキ、リアルすぎてしんどい」
「最近感じていたモヤモヤに刺さってめちゃくちゃ泣いた」
「なんで女性ばかり犠牲に？理不尽すぎる」
「アラサーあるあるのオンパレード」
30歳、女性、独身、東京在住、仕事に趣味に恋愛に忙しい。そんな著者も見事に沼にハマっている。
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「え、これって私の経験談？」多様性あるキャラクターに既視感ありすぎるストーリー
本作品には、一世を風靡した海外ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」を彷彿とさせる、4人の女性が主人公として登場する。
大手広告代理店で着実にキャリアを積む営業／結婚を控えるもセックスレスに悩む美山遥（さとうほなみ）、PR会社のバリキャリ社長／男に一切興味がない三浦恭子（山崎紘菜）、ゆるふわと思いきや超優秀な社長秘書／玉の輿に乗ることを夢見る藤沢花音（佐藤玲）、好きなことを突き詰めるフリーのクリエイター／同性のパートナーを心底愛す佐倉詩（石橋菜津美） の4人だ。
僭越ながら、著者の共感度ランキングをキャラクターとストーリーに沿って発表したい。
共感度ランキング1位：美山遥
付き合って5年記念日に彼氏・長島奏多（堀井新太）からプロポーズされ、仕事も恋愛も絶好調…かのように見える遥。が、実態は“1年半のセックスレス”に悩み、自身の性欲に負けて、一夜限りの関係が増える一方であるという心の弱さを持つ。
この事実だけ切り取ると「遥、とんでもないビッチだな」と思うかもしれないが、いやそういうわけでもないよ？と全力で阻止したい。
そういう雰囲気にしようとあえてキャミソール一枚でベッドに潜り込むも、奏多の口から出た一言は「寒くない？風邪引くよ？」……そのいらない優しさ、もう心はズタズタです……。
同棲は結婚のためのリスクヘッジとは言うけれど、そのせいでセックスレスになるこの現象、まじでなんなんですかね……？
肉体関係を持つ＝浮気なのかどうかの議論はここでは置いておいて、セックスレスに悩む状況下で、浮気してしまう遥のことを頭ごなしに否定はできない。もちろん遥にも否はあるけれど、そうさせてしまう奏多にも問題がある……というのが著者の意見。
にもかかわらず、彼に「そろそろ子供のことも考えたいし……」と言われる遥の身にもなってほしい。
結婚もしたいし子供だって欲しい。でも私達、もう1年半もセックスしていない。それに、仕事も絶好調な今、結婚して、うまく両立できるのかーーそんな不安を抱える。
そして、絶妙のタイミングで遥の目の前に現れるのが同期の鎌田知也（栁俊太郎）。
久々の再会、「入社当初さ、俺遥のこと好きだったんだよね」という告白、部署飲み後にしれっと開催される二人飲み、どんどん距離が近付くカラオケ、我慢しきれずタクシーの中ではじまるキス……すべてにおいて既視感ありすぎて直視していられない。
奏多にセックスセラピーについての話を切り出すも、「別にそんな深刻にしなくても」「ちょっと仕事が忙しかっただけだよ」「こんなことで喧嘩したくない」……なかなかわかり会えない男女。うまくいってるのにうまくいってない、このぶつけようのないもどかしさ、どうしたらいいんだろう。そうしてまた、外で快楽を求めてしまう遥。
仕事も恋愛も全力投球、ただただ幸せになりたい。そんな遥に共感する声は多いはずだ。
共感度ランキング2位：藤沢花音
社長秘書という特権を行使し“年収2,000万円以上”の男性を探すもそう簡単にはいかず、ついには入会金40万円もする結婚相談所に通い始める花音。
「東京で家を建てて子供を育てながら暮らしていくとなると、それぐらい必要だと思うんです」
いやいや……と思いつつも、これが東京でなに不自由なく幸せに暮らしていくために必要な現実。
でも、結婚相談所にいる年収2,000万円以上の男って、例えるならドラマ「失恋ショコラティエ」のサエコさんの夫・吉岡さんみたいな人になっちゃいませんか？
現に、花音が結婚相談所で出会った歯科経営者だって“ビーガン主義”という超曲者ハイスペマンで、いやはやろくなヤツいないじゃん……なんてことは、言えない。
豪華絢爛な生活を送る社長を横目に、手取り25万円・家賃7万円のワンルームに暮らす花音。
そんな花音の実情は、あらゆる公共料金の支払いが滞るReal Faceばりにギリギリの生活で、信頼できる遥、恭子、詩にさえひた隠しにしている。本当に余裕がないことだからこそ、唯一無二な楽しい時間を過ごす大事な友だちには言えないものだ。
対して、社長の愛人は一晩の関係で30万円ももらってるし……人生って本当にバカバカしいったらありゃしない。
バリキャリでもない私が東京という街で生き残るには、もう結婚に賭けるしかないーー花音の気持ち、すごくわかる。でもこれって、本当に恋愛って言える？
30歳の訪れに戦々恐々としながら全女子の代表として日々を生き抜く花音、見れば見るほどに愛おしい。
共感度ランキング3位：三浦恭子
恋愛にも結婚にも子供にも興味がない、絵に書いたようなバリキャリ社長・恭子。
この先もずっと変わらないと思っていた矢先に、子宮腺筋症という将来子供ができなくなってしまう可能性がある病気が発覚する。
これを機に「私、子供は欲しい」と気付いた恭子は、気のない男とデートしたり合コンに出向いたりするも、やはり自分の気持ちに嘘はつけない。興味がないものは、どうやってもないのだ。
そんな中で、恭子は“選択式シングルマザー”という生き方を知り、社長業と並行して妊活を始める。
多くの人は、欲しいタイミングで子供を作ることができればいいと思っているのではないだろうか。著者もそう思っていた。そんな風に生きていて、まさか自分が子供ができない身体だなんて思いもしないし、思いたくもない。
ましてや恭子の場合は、子供は自分の人生には必要ないと思っていたもの。手に入らないかもしれないとわかった途端に、その事の大きさに気付くのはなぜだろう。
誰しもが、婦人科検診やブライダルチェックでどのような結果が出るかなんてわからない。
恭子の姿を見て、何事も当たり前と思わず、自身の幸せのために歩み寄っていく必要性を学ぶことができた。恭子、ありがとう。
恭子が恭子にとって最善な幸せを掴めるよう、心から祈る。
共感度ランキング4位：佐倉詩
パートナーでありモデルの真琴（中田クルミ）と穏やかな暮らしを送る詩。
芯が強く感情に踊らされない詩は、他の3人にとって心にぽっかり空いた穴を埋めてくれるような存在だ。
詩と真琴。客観的に見ても幸せオーラむんむんで、何一つ曇りがないように見える二人。
だが、あることをキッカケに、よきせぬ方向に事が進んでいく。
仲間内だと、「私達はレズビアンなんだ」ということは忘れてしまう。
でも、一歩でも外に出てしまうとそこはRPGの世界かのように敵で溢れている。
「どうして私ばっかり？」そんな風に自身のことを蔑んでしまう詩。
著者は同性愛者ではないけれど、誰を好きになったっていいじゃない。誰を好きになろうとその人の勝手じゃない。そもそも、誰かを好きになれるってこと自体が尊い。そう思っているからこそ、詩の気持ちは痛いほどわかる。
真琴のマネージャーに詩のことを“友達”と紹介するあたり、ダイバーシティな世の中なんてまだまだじゃんと思ってしまった。
……LGBTという性的指向がやっと知られるようになってきた世の中ではあるが、まだまだ手放しで喜べるわけではない。
遥、恭子、花音、詩。
個性豊かな4人それぞれの多様性がまさに令和という時代を象徴しており、どんな人でも共感するキャラクターに仕上がっている。
もちろん、主人公である4人だけでなく、脇を固めるメンバーのキャラ立ちも半端じゃない。
4人が集うカフェ＆バー「MIMOSA」の店員・みちる（菊池亜希子）は3回も再婚して「いや大豆田とわ子か！」と突っ込みたくなるし、遥の彼氏・奏多は旦那としてはきっと120点な男だ。
遥の同期・知也は同じチームの女3人に手を出していたというどうしようもないクズ男だし、知也のアシスタント・千葉ちゃん（糸原美波）は「彼氏（知也）に浮気されてた」と実名SNSで公表しちゃうし、遥の後輩・相田（島崎遥香）はかわいい顔してやることやってる。
恭子が合コンで知り合う小林という男の「絶対いい人なんだけど恋愛として好きになれない」感はすごい……。
脇を固めるキャラたち、胃もたれしそうになるくらいには濃い、濃い。
そんな彼らが織りなす「30までにとうるさくて」、おもしろくないわけがない。
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