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マーベルのジャンプアップは大抜擢にあり!?<タイカ・ワイティティ、クロエ・ジャオ、ジェームズ・ガン>

(C)Shadow Pictures Ltd MMXIV



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1月に公開された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。

全米歴代第3位の大ヒットを記録中で、日本でも興行収入40億円を突破して、コロナ禍以降の洋画ナンバーワンヒット作品となっています。

過去作を見てもマーベル映画、特にスパイダーマン映画は日本で強さを発揮していましたが、今回も変わらずという感じです。

ところで、1月に「〈検証〉なぜ日本で『スパイダーマン』だけがヒットし続けるのか?」という記事をcinemas PLUSで書きましたが、その中でマーベル作品もかつては、大苦戦していた過去があることを記しました。

>>>【関連記事】<検証>なぜ日本で『スパイダーマン』だけがヒットし続けるのか?

それが、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』以降あたりから日本でもヒットの度合いが大きく変わってきました。そこには何があったのでしょう?

ヒットの目安興行収入10億円、大きな壁の20億円


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映画のヒットというのは作品の公開規模感などで大きく変わりますが、いわゆる全国公開される映画でいえば興行収入10億円というのが大きな目安です。

昨年2021年の洋画ではたった5本の作品しかこのラインを突破できませんでした。コロナ禍でさまざまな足かせもあって、100%の状態での公開ができなかった作品も多かったので、仕方がない部分もありますがなかなかに厳しい結果です。

例えば映画ファンの間では分厚い支持を受けた『DUNE/デューン 砂の惑星』や『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党集結』もこのラインを越えることはできませんでした。そんな中でマーベルは配信と同発だった2012年の『アベンジャーズ』以降はほぼこの10億円と言うラインを突破し続けています。

越えられていないのは2014年の『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』と『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の2本と昨年の配信と同時公開だった『ブラック・ウィドウ』とコロナの影響を受けた『シャン・チー/テン・リングスの伝説』の4本だけ。




2014年の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』から14作連続で10億円を突破し続けました。そのうち7作品が興行収入20億円を突破する大ヒット作となっています。

この20億の壁というのはかなり高い壁でして、同じアメコミの巨頭DCコミックス原作映画では2019年の『ジョーカー』以外に1本もありません。

ノーランの『ダークナイト』三部作や『ジャスティス・リーグ』でもこの壁は越えられませんでした。

マーベルのジャンプアップの影に大抜擢あり!?



なぜ、マーベル映画はしり上がりに数字を挙げることができたのでしょうか? 

最近マーベル作品の話をすると、もう作品数が多すぎて追いかけきれないという言葉を多く耳にします。その気持ちもよくわかります。

年に平均して3本程度の作品が2000年代後半から供給され続け、今年2022年の5月4日公開される『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』で28作目になります。

昨年公開された『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が60年かけてシリーズ25作品なので、その量と供給スピードの凄さを感じられるのではないでしょうか?

ここまで連作されてしまうと、必然的に“脱落してしまう人”が出てくるものです。これも仕方のないことかもしれません。

しかし数字の面では、コロナ禍などの特殊な条件がない限り右肩上がり続いています。


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コロナ禍真只中だって『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』はメガヒットを記録しています。

ここには監督の大抜擢というものが大きな理由になっているのではないかと思われます。

マーベルは大作の経験はないものの独特のセンスと作家性を持った監督にメガホンを託し、映画を「どこにでもある大作」から「独特な味のある大作」に変えることに成功しました。

これはケヴィン・ファイギというプロデューサーが一貫して関わり続けて、シリーズの根幹の部分を抑える役を買って出ていることも大きいのですが……。

それにしても、まだまだこれからというような監督に超大作を伸び伸びと撮らせて、作品とシリーズにスパイスを効かせ続けるというのはなかなかない考えだったと思います。

マーベルの大抜擢の実例


(C)Marvel Studios 2018

マーベル作品も初期は実績のある手堅い監督に作品を託していました。

『アイアンマン』1&2のジョン・ファヴロー、『マイティ・ソー』はケネス・ブラナー、『アベンジャーズ』1&2はジョス・ウェドンなどです。

これがガラッと変わったのが2014年の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』。

その後『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』を手掛けるルッソ兄弟を監督に大抜擢。

ルッソ兄弟はテレビドラマではそれなりにキャリアがありましたが、『ウィンター・ソルジャー』は何と長編映画3作目です。

同年の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のジェームズ・ガンはB級映画スタジオのトロマ・エンターテインメントで下積みを長くして、その後もB級に近いジャンル映画の“知る人ぞ知る”と言った人でしかありませんでした。

トム・ホランド版の『スパイダーマン』を手掛け続けているジョン・ワッツ監督も『スパイダーマン:ホームカミング』が長編3本目、『ブラックパンサー』のライアン・クーグラー監督も『ブラックパンサー』が3本目の長編映画でした。

『エターナルズ』のクロエ・ジャオ監督もまだ長編4本目での抜擢でした。

クロエ・ジャオと言ったら『ノマドランド』で2021年にアカデミー賞作品賞・監督賞を受賞したビッグネームですが、企画立案の流れを見る限り、『ノマドランド』を見る前に『エターナルズ』を発注しているようなんですよね。

『ノマドランド』を見てからでも『エターナルズ』の監督をというのはなかなかない選択肢だと思うのですが、それ以前のチョイスなので大抜擢といえます。


(C)Marvel Studios 2017 All rights reserved.

『マイティ・ソー バトルロイヤル』のタイカ・ワイティティ監督も長編5作目でした。

しかもブレイク作の『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』を含むそれまでの4作品は母国ニュージーランドで撮っていた映画で、アメリカで撮った初めての映画が『マイティ・ソー バトルロイヤル』でした。


(C)Shadow Pictures Ltd MMXIV

『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』は現代社会で共同生活を送るヴァンパイアたちの楽しい日常を、俳優たちの即興演技とモキュメンタリー形式を取り入れて描いたニュージーランド製ホラーコメディでなかなか楽しい映画なのですが、本作を見て『マイティ・ソー』の3作目を託そうと思った人の思考回路を覗いてみたい気がします。

タイカ・ワイティティ監督は『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』から3年で『マイティ・ソー バトルロイヤル』を撮り、5年で『ジョジョ・ラビット』を撮りました。

『ジョジョ・ラビット』は高い評価を受けてアカデミー賞脚色賞を受賞。

『マイティ・ソー』の第4作『ソー:ラブ・アンド・サンダー』ももちろん監督しています。


(C)Shadow Pictures Ltd MMXIV

『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』→『マイティ・ソー バトルロイヤル』→『ジョジョ・ラビット』→『ソー:ラブ・アンド・サンダー』という流れは高低差がすごいフィルモグラフィですよね。

■『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』配信サービス一覧

| 2014年 | ニュージーランド |85 分 | (C)SHADOW Pictures Ltd MMXIV | 監督:タイカ・ワイティティ | タイカ・ワイティティ/ジェマイン・クレメント/ジョナサン・ブロー/コリ・ゴンザレス=マクエル/スチュー・ラザフォード/ジャッキー・ヴァン=ビーク |

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マーベルがしり上がりに調子を上げてきていることと、この大抜擢が見事にリンクしていてると言えるでしょう。こうなると、次はどんな未知の才能をマーベルが抜擢するのかが楽しみなぐらいです。

振り返って見ると、DCコミックスの映画は監督の人選が手堅い印象があります。(『バットマン』のティム・バートンなんかは抜擢系でしたが……)

この辺りがマーベルとDCの差になって出ているのかなと思います。3月11日から公開される『ザ・バットマン』の数字の動向が気になるところですね。

(文:村松健太郎)

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