【ジャニーズ結成秘話】ジャニーズファンが『ウエスト・サイド・ストーリー』を観るべき理由
編集部から出されるテーマを元に作品紹介をする「月間シネマズ」。今月のテーマ「2000年以前に公開された映画」でわたしがオススメしたいのは『ウエスト・サイド・ストーリー』だ。
この作品は1957年にブロードウェイのウィンターガーデン劇場で初演された舞台をベースにしているもの。1961年に『ウエスト・サイド物語』として映画になっており、今まさに公開中のものは約60年ぶりに再映画化された作品だ。基本のストーリーは同じなのでどちらでもお好みで選んでいただいて良いのだけれど、ジャニーズファンにはこの映画をぜひ一度は観ていただきたいと思っている。
鑑賞をすすめる理由は、この作品がジャニーズ事務所設立のきっかけになっているから。当時少年野球のコーチをしていたジャニーさんが、雨で練習ができない日にチームの子どもたちと映画館で『ウエスト・サイド物語』を鑑賞。作品に感動したのをきっかけに歌やダンスのレッスンを始め、結成したのが4人グループ「ジャニーズ」だという。CMに出演している東山さんも「『ウエスト・サイド・ストーリー』がなければ、今のジャニーズ事務所も存在していなかったかもしれません」とまで語っている。(引用:20th Century Studios)
作品の舞台は、ニューヨークのウエスト・サイド。移民が多数集まって暮らしている地域で、少年たちはチームを作り、対立するようになる。一方のチームのリーダーの妹と、相手チームの元リーダーが出会い、惹かれ合って恋に落ちる。二人の恋は抗争のきっかけとなり、決闘の末亡くなる少年も出てしまって…という話。
この「対立→仲間の死→対立していた少年たちが一つになる」という展開は、ジャニーズ事務所オリジナル舞台の定番。観劇していると、『少年たち』にも『DREAM BOYS』にも『Endless SHOCK』にも、『ウエスト・サイド・ストーリー』の影響を感じずにはいられない。
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分かりやすすぎるくらいにチームで対立する『少年たち』
過去にはA.B.C-Zと現ジャニーズWESTのメンバー、最近はSixTONESとSnow Man、HiHi Jetsと美 少年などが主演を務めてきた『少年たち』。場所は監獄、少年たちの中から1人が亡くなるのは脱獄がきっかけと、舞台や設定はアレンジされている。が、対立するグループの衣装もきちんと赤と青に分けられているなど、こんなに分かりやすくウエスト・サイド感があふれる作品はない。
まだ観ていない方にはネタバレとなってしまい申し訳ないのだが、『ウエスト・サイド・ストーリー』は、恋に落ちた少年が亡くなって幕を閉じる。彼の死をきっかけに争ってきたことを悔い、チームに関係なく亡骸を運んでいく。
『少年たち』でも、対立してきた少年たちが一つになるのはやはり仲間の死がきっかけ。ジャニーズ舞台でよく見られる亡くなった体をみんなで高くもち上げて運ぶシーンは、死をきっかけに対立する気持ちが消え、メンバーが一つになったことの象徴だ。
『ウエスト・サイド・ストーリー』との大きな違いは、その数年後、各メンバーが夢を叶えたり、家族と幸せに暮らしていたりと、それぞれがやりたいことを叶えている姿まで描かれているところ。そこまで分かりやすく伝えて、明るく幕を下ろすのはとてもジャニーズらしい。
主人公とチャンプの対立を描く『DREAM BOYS』
2004年に滝沢秀明主演で初演されて以来、事務所で受け継がれているのが『DREAM BOYS』。F1レーサーの話になった時期もあるが、基本はボクシングをしてきた少年たちが悩みや葛藤を乗り越えていくストーリーだ。主人公役を務めてきたのは亀梨和也、玉森裕太、中山優馬、 岸優太などの錚々たる顔ぶれ。相手役である「チャンプ」との対立を描く。菊池風磨が主人公・フウマを、田中樹がチャンプ・ジュリを演じた2021年版は、同期で入所して以来切磋琢磨してきた現実での関係性とも重なる大変エモい配役だった。
主人公とチャンプの対立はもちろんのこと、途中復讐心でナイフを手に取るメンバーが出てきて殺傷事件が起こるあたりにそこはかとなくウエスト・サイド感が漂う。
ショーに真剣に向き合うからこその対立『Endless SHOCK』
『Endless SHOCK』は、堂本光一が主演の舞台。2000年に初演された『MILLENNIUM SHOCK』から、タイトルや内容に変更はあるものの、20年以上続けられている作品だ。主人公は、ニューヨーク・ブロードウェイでストイックにエンターテイナーとして高みを目指すコウイチ。舞台の公演期間中も、よりよい作品にするために変更を重ね続けている。そんなコウイチについていけなくなり、憎しみの気持ちを抱くのがライバル役。屋良朝幸、内博貴、中山優馬、上田竜也らが務めてきたが、同じストーリーもライバル役を始めとしたキャストの違いによって別の視点からみられるのが魅力となっている。
コウイチとライバル役を中心とした考え方の違いから起こる意見のぶつかり合い。その結果起こるかの有名なコウイチの階段落ちのシーンでは、ウエスト・サイド・ストーリーの悲劇を思い出さずにはいられない。
また、舞台2幕の前半では、ライバル役の心の葛藤をシェイクスピアの作品を劇中劇として演じることで表現する。『ウエスト・サイド・ストーリー』もシェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』から着想を得てつくられているので、やはり通じるものがある。Endless SHOCK中のセリフを借りれば「シェイクスピアは芝居の原点」であるので、当然といえば当然のことなのかもしれない。
ジャニオタ生活をより楽しむための『ウエスト・サイド・ストーリー』履修
ジャニーズ内部舞台作品の『ウエスト・サイド・ストーリー』みは、今回ピックアップした作品以外に『ANOTHER』『滝沢歌舞伎』『JOHNNYS' IsLAND』などにも感じられるので、ぜひ着目してみていただきたい。これだけ構成の似たストーリーを舞台で行い続けるのは、やはり事務所を設立したジャニーさんの想いが強いのだと思う。少年たちが悩みや葛藤・分断を乗り越えて友情を築き、一つになることをどの作品でもテーマとしているのは、それだけ大切にしてきた価値観だからに他ならない。
歌やダンスが必修のジャニーズ事務所において、テレビやコンサートで音楽を披露するだけにとどまらず、舞台でミュージカル作品を公演し続けているのは少し意外に思われるかもしれない。しかし、メッセージを観客に伝えるには、やはりストーリーを用いることが必要だったのだろう。
リハーサルと本番の数か月間、少しずつ形を変えながらも先輩から受け継がれる作品に打ち込むことは、後輩たちにとってはジャニーズ事務所に伝わる伝統を自分にしみ込ませる期間でもある。
ジャニーさんが亡くなった今も、エターナルプロデューサーとして名前が掲載され続けていることからも、今後もきっとジャニーさんのマインドはジャニーズ事務所に受け継がれていくんだろうなと推察する。
わたしたちが応援している担当やそのグループの根底に『ウエスト・サイド・ストーリー』があると考えるなら。一度はこの映画を履修しておくと、今後のジャニオタ生活がより豊かになるかもしれない。
(文:荒川ゆうこ)
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