俳優・映画人コラム

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2022年04月05日

『女子高生に殺されたい』で注目したい、南沙良・河合優実・莉子・茅島みずきの存在感

『女子高生に殺されたい』で注目したい、南沙良・河合優実・莉子・茅島みずきの存在感



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一度見たら忘れられない鮮明なビジュアルと理解不能なタイトルに惑わされる、映画『女子高生に殺されたい』

女子高生に殺されたい男が、女子高生に殺されたいがために高校教師になり、女子高生に殺されるための“自分”殺害計画を実行するという狂気に満ちたストーリー。

タイトルだけを見ると「いやいや『女子高生に殺されたい』ってどんな映画やねん」と思うかもしれないが、このあらすじの通り、おもしろいほどにこのタイトルそのまんまなのである。

奇しくも“女子高生が選ぶ「お父さんになってもらいたい芸能人」ランキング1位”田中圭による狂演もさることながら、田中圭扮する東山春人を狂わせる、いや狂わされる女子高生たちの存在感にも注目してほしい。

全員2000年代生まれ、令和以降に大きな飛躍を見せる新星女優・南沙良河合優実莉子茅島みずきの4人だ。

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※本記事では、『女子高生に殺されたい』に関するネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

誰が本当のターゲット?十人十色な4人の女子高生たち



東山春人
(田中圭)が女子高生に殺されるためのターゲットに選んだのは、どことなく影のある美少女・佐々木真帆(南沙良)、不思議な力を持つ真帆の親友・小杉あおい(河合優実)、天真爛漫な演劇部員・君島京子(莉子)、柔道に打ち込む努力家・沢木愛佳(茅島みずき)の4人。

……と見せかけて、東山春人の本命はただ1人。
他の3人と本命の1人を比較すると、ショートケーキでいうスポンジや生クリームとでかでかと乗っかっている苺くらいの差がある。

あらゆる場面で描かれる匂わせ、それらを狂わせるミスリード、見事なまでの伏線回収……サスペンスの中に秘められたミステリーに唸らせられる。やられた、完全にやられた。

東山春人×真帆・あおい・京子・愛佳。

それぞれの関係性で展開される心理戦に没入するとともに、キャラ立ちの強い田中圭と真っ当に勝負する若手女優たちに誰もが心を掴まれる。

※以降、ネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

南沙良:こんな南沙良、見たことない!“かわいいだけじゃない”新境地



「第18回nicolaモデルオーディション」でグランプリを受賞し、モデルデビュー。その後、数々の映画・ドラマに出演し女優としてのキャリアを順調に積んできた南沙良

「ドラゴン桜2」で演じた今ドキ女子高生・早瀬菜緒の「てへっ」が記憶に新しい。「カップヌードル」のCMもかわいすぎて永遠に見れる。

本作でもイメージ通りの清楚な美少女キャラとして登場する彼女が、まさか中盤以降であんな姿を見せるなんて、誰も予想していなかっただろう。



南沙良演じる真帆は解離性同一性障害という精神疾患を抱えており、真帆の他にカオリ、そしてキャサリンという人格が存在している。真帆→カオリ→キャサリンの順に狂気が増していくのだ。

必要以上のストレスやショックを受けるとカオリが覚醒し、とあるトリガーによりキャサリンが覚醒するのだが、覚醒する瞬間の南沙良の目力は後ずさりしてしまいたくなるほどの威力を持つ。



よくある“かわいい子が無理して怖い役をやってる”感は皆無で、「今目に映るこの人は本当にあの南沙良なのか?」と思ってしまうほどに役柄が憑依している。

かわいいだけじゃない南沙良、ギャップがあるからこその恐怖を体感してほしい。

河合優実:ベストアクトを更新し続ける、怪物級の演技力



2020年以降、『佐々木、イン、マイマイン』『サマーフィルムにのって』『由宇子の天秤』『偽りのないhappy end』『ちょっと思い出しただけ』『愛なのに』など、話題作で類まれなる存在感を魅せつけてきた河合優実

どの作品にも異なる河合優実が存在する上、それぞれが最高峰。その天性の演技力、見るたびに驚きを隠せない。

河合優実演じるあおいは、真帆(南沙良)の親友で、真帆の解離性同一性障害に唯一気付いている存在。地震や身の回りに起こる不幸などを察知する不思議な能力を有しており、非常に繊細で敏感な心を持つ。



春人との直接的な攻防はあまり描かれていないものの、序盤より春人の異常さを察知し“守るべきものを守るために”行動していたあおいは、最も春人と戦っていたと言える。

あおいの役柄は、陽寄りな『サマーフィルムにのって』『ちょっと思い出しただけ』『愛なのに』と比較すると、陰寄りな『佐々木、イン、マイマイン』『由宇子の天秤』『偽りのないhappy end』に近しいが、これまでの役柄ともまた一変した雰囲気を醸し出している。

河合優実のベストアクトが、またもやアップデートされた1本となった。

莉子:モデルから女優へのステップを駆け上がる、SNS時代の新ヒロイン



2014年にモデルデビューし、TIkTokで大ブレイクしたことをキッカケに「Popteen」の専属モデルに抜擢。恋愛リアリティーショー「月とオオカミちゃんには騙されない」への出演で大きな反響を呼び、現在はドラマ「ブラックシンデレラ」「ファイトソング」、映画『君が落とした青空』『牛首村』など、女優としての活躍も著しい莉子

モデルとしてのイメージが強い彼女だからこそ、安心して見ていられる確かな演技力に毎度驚かされる。

莉子演じる京子は、いつでも輪の中心にいるような天真爛漫な女の子。演劇部に所属し脚本家志望でもある京子は、春人の“自分”殺害計画において重要なキーパーソンとなる。



春人との距離が縮まるほどにニヤニヤが止まらない京子のかわいさに、視聴者のニヤニヤも止まらない。

傍から見ると「京子、まんまと騙されてますやん」と心配になりつつも、まぁイケメン高校教師にあんな風に接されたら誰でも落ちるよな、とも思う。

親近感のある愛され女優・莉子が演じるからこそハマる京子なのである。

茅島みずき:その芯のあるフレッシュさ、引けを取らない存在感



母親からの勧めで受けた「アミューズ 全県全員面接オーディション2017 〜九州・沖縄編〜」でグランプリを獲得し芸能界入り。2年後、ネクストブレイク女優の登竜門として注目されるポカリスエットのCMに起用され注目を集め、同年には女優デビューも果たした茅島みずき

映画・ドラマのみならず、舞台「ロミオとジュリエット」でヒロイン・ジュリエット役を務めるなど、堅実に演技派女優への道を歩みつつある。

また、12歳までプロゴルファーを目指していたという経歴があり、ドラマ「ゴシップ#彼女が知りたい本当の○○」第5話にプロゴルファー・沢宮結奈役としてゲスト出演していた。あのスイングのキレにも納得だ。



茅島みずき演じる愛佳は、日々柔道の稽古に打ち込むひたむきな姿が印象的である。
柔道命だからこそ、余計なことで心身に負荷を与えたくないという思いから常に人と距離を置いているような独特な空気感。それでも嫌味なく、優しく境界線に踏み込んでくる春人に、つい心を開く姿にヒヤヒヤしてしまう。

彼女の芯のあるフレッシュさは、どことなく清原果耶を連想させる。2022年、間違いなくブレイク必至な女優となることだろう。

もし私が女子高生だったら、むしろ田中圭に殺されたい



東山春人
に踊らされ、惑わされ、狂わされる女子高生たち。
予想もしなかった春人の末路には、1分ほど口がぽかーんと空いてしまった。決して大げさな表現ではない。本当に、1分ほど口がぽかーんと空いてしまったのだ。

本人たちの目には“魅力的で仕方がない東山春人”としか映っていないだろうが、客観的に見ると“かわいそうなくらいありえないほど狂ってる”ーー誰もがそう感じるほどにはサイコパスな田中圭なのに、計り知れない底なしの色気に、むしろ殺されてもいいと思ってしまう。

『東山春人に殺されたい』
というスピンオフが誕生してもおかしくない。……これじゃ一体どっちがサイコパスなのかわかんないじゃん。

南沙良河合優実莉子茅島みずきらは間違いなく、令和時代を代表する若手女優に昇り詰めることだろう。今後のさらなる活躍に期待だ。

(文:桐本絵梨花)

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