「鎌倉殿の13人」悲しき壇ノ浦で義経が得たもの失ったもの
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2022年のNHK大河ドラマは「鎌倉殿の13人」。三谷幸喜 脚本×小栗旬 主演で描く北条義時の物語。三谷幸喜曰く「吾妻鏡」を原作としており、そこに記されきれていない部分を想像と創作で補い、唯一無二のエンターテイメント大作に仕上げているという。
本記事では、第18話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
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「鎌倉殿の13人」第18話レビュー
義高(市川染五郎)の死は御所に暗い影を落としていた。特に、大姫(落井実結子)はかつての笑顔を見せなくなっていた。政子(小池栄子)らはどうにか元気づけようとするがままならない。あまりの様子に胸が痛い。しかし、物語はさらに胸痛む展開が待っている。
いざ、壇ノ浦へ
源平合戦が終わりのときを迎えようとしていた。負けなしの義経(菅田将暉)。鎌倉にいる頼朝(大泉洋)はそれが気になる。活躍を続ければ、義経を鎌倉殿に推す声も大きくなるのでは? という疑念を胸に宿す。今まで描かれてきた義経ならわからないかもしれない。でも、「鎌倉殿の13人」の義経はそんなことを思うはずがない。が、頼朝にはわからない。わからない頼朝は、義経ではなく景時(中村獅童)を総大将にするように指令を出す。
もちろん、義経が受け入れるはずがない。軍議では譲らぬ景時と義経で揉めに揉める。その場にいた畠山重忠(中川大志)や三浦義澄(佐藤B作)らの支持もあり、義経が総大将のまま戦に挑むことになるが、これは景時と義経の作戦だった。意外や意外、景時が義経とタッグを組むのか、そんなにも強力な組み合わせができるものなのか? と思うが……。
そして、戦いはいよいよ壇ノ浦へ。平家も弱いわけではない。義経はひとつの策を持っていた。平家の船をギリギリまで引きつけ、漕ぎ手を射殺すというもの。船が動かなければ戦いようがない。
しかし、義経の命に重忠は顔色を変える。漕ぎ手は兵ではない。「末代まで嗤い者になります」と言う重忠に「嗤わせておけ」と答え、漕ぎ手を弓で射貫く。射なければ殺す、という脅しで兵を動かし、漕ぎ手たちを射させる。形勢は逆転。
船から船を舞う義経。鬼神ごとき強さ。
「もはやこれまで」
追い詰められた平家。そのあとに展開するのは、あまりにも有名なシーンだ。
三種の神器を持った二位の尼と女官たちが海に沈む。そして、安徳天皇を抱いた女官も。
女官が船に立った瞬間、「やめろ!」と叫ぶ義経。沈みゆく姿に「嘘だろ……」。三種の神器と、安徳天皇を手に入れられなかったからか。直後、アップになった義経の瞳に涙がにじんでいたように思うが……。
その瞬間に映ったそれぞれの表情にも性格がよく表れている。特に、重忠と和田義盛(横田栄司)が合掌したのが印象的だ。考え方や価値観に違いはあれど、真っすぐな性格なのだろうということがわかる。
義経の本当の姿は?
平家を討った義経は大金星を得たはずだ。
しかし、三種の神器は手に入れられず、安徳天皇を死なせた。勝利とは言えない。何より頼朝からの信頼が日に日になくなっていっている。
景時から頼朝への報告も重要だ。頼朝の意向に背いていること、勝手なふるまいが多いこと。弟に会いたい気持ちはあれど、不信感のほうが大きくなる。
一方、義経は頼朝に会いたい。しかし、検非違使の任があるため鎌倉に帰れない。取った策は罪人である平宗盛・清宗を鎌倉に連れていく役目を担うこと。頼朝に会って誤解を解きたい。義経は純粋な気持ちだけだったが、頼朝からすると解せない。そもそも、義経が検非違使であること、処罰は京で行うためまた京に戻らないとならないこと。後白河法皇(西田敏行)に気に入られていることも、頼朝にとって引っ掛かるポイントだ。
義時(小栗旬)は義経にそんな野心はないと言うが、景時は義経を鎌倉に入れてはならないと言う。
「あのお方は天に選ばれたお方。鎌倉殿と同じだ。そのような2人が並び立つはずがない」
結局は、景時は頼朝側の人間で、義経がどのような人物か、その有能さを見極めていただけ、なのかもしれない。
義経のやること全てが裏目に出る。
本当に戦が好きで、人の心を持たない義経ならばよかった。
罪人である平宗盛と清宗を引き合わせ、語る時間を与える。もらった恩をきちんと返す。
壇ノ浦の戦いでは討たれた漕ぎ手たちを手厚く葬るよう命じる。
そしてただただ、頼朝が大好きな“弟”だ。
恐ろしい人間ではあるけれど、本当は戦に必要のない死や犠牲は求めていないのではないか。
漕ぎ手は戦に勝つために必要な死だから選んだ。
安徳天皇は戦で死ななくてよいはずだった。
これまでの描写を見ていると、自分より年下の者に対する当たり前の優しさは持っているように見えた。
兄と弟が語る機会は奪われた。2人の関係はますますこじれてゆく。
(文:ふくだりょうこ)
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