<徹底考察>BiSHはなぜ、僕たちを惹きつけるのか?



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6月10日にメンバー6人それぞれが主演を務めるオムニバス映画『BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK’N’ROLL』を公開するBiSH。ご存じの通り、彼女たちは2023年の活動をもって解散するが、当然この決定を惜しむ声は多い。

僕らがBiSHにこんなにも魅了されるのは一体なぜなのか。本記事では、その理由を考察していく。

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BiSHだけに感じる“何か”の正体



「BiSHの魅力ってなんだろう?」
と考えたとき、もちろんその答えは様々だろうし、本当にたくさんの魅力がBiSHにはある。

楽曲に宿る魅力は言わずもがな、ライブパフォーマンスの凄まじさ、メンバーそれぞれからあふれまくる個性、にもかかわらず6人が揃った写真で感じる一つの塊としての強烈な存在感、MVなどで見せる喜怒哀楽のすべてが爆発する表情。

それらが渾然一体となって聴く者、観る者が突きつけられる、BiSHだけに感じる“何か”。その“何か”の正体を言葉にするならば、それはきっと“生き様”だ。彼女たちの“生き様”は、人間の弱さを強さや美しさへと転化する。そうした彼女たちの“生き様”こそが、多くの人たちを惹きつけてきたのだと思う。

BiSHの6人は、自分の弱さや脆さを隠さない。それらを隠して、かっこつけたりなんかしない。BiSHは、人間の情けなさもやるせなさも、どうしようもなさもみじめさも、かっこ悪さも悲しさも切なさも、そのすべてを丸ごと抱きしめてむき出しの歌で表現する。そして、それでも人間は、人生は美しくて素晴らしいと、僕たちに強く思わせてくれるのだ。

そうして人間の弱さを受け入れる強さを持ち、美しさや希望に変換していく魅力は、日本のロックを語る上で絶対に欠かすことのできない稀代のパンクバンドであり、〈ドブネズミみたいに 美しくなりたい〉と歌ったTHE BLUE HEARTSとも共通する。BiSHは「楽器を持たないパンクバンド」と呼ばれるが、それはやはり言い得て妙なのだ。

メンバーの歌詞ににじむ“生き様”

メンバーたちが書いた歌詞にも、そんな生き様は色濃くにじむ。



アユニ・Dは、〈みんなが僕をバカにすんだ ナメんな〉〈精神がおかしくなっちゃっても ゴミじゃない 知ってた? ここで寝てちゃだめでしょ to die or 生〉〈あの子がさほざいてた 人はいつか死ぬと 本当に本気を見せないと〉(『本当本気』)と、セントチヒロ・チッチは、〈あまりに脆いね 人間らしさって 傷つきやすいのね〉〈足りない足りない なんでもいいから 言葉が欲しい〉(『I’m waiting for my dawn』)と言葉を紡いだ。



ハシヤスメ・アツコは、〈こんな時代だから困るんだけど だからこそ時代に飛び乗ろうか〉〈つまらない人間にはなりたくはない いつだってそれは変わらない!!!〉(『社会のルール』)と、アイナ・ジ・エンドは、〈辛いんだ、気が狂いそう! このままじゃ、気が狂いそう!〉(『Throw away』)、〈泣きたい。会いたい。苦しい。甘えたい。食べたい。かなしい。寂しい。怖いなぁ。いつもあさましい感じ〉(『Is this call??』)と、モモコグミカンパニーは、〈「愛」とか「恋」だとかさ そんなものよりも ホンモンの傷跡を 抱え走りだせよ〉(『WiTH YOU』)、〈意味なく死にたくなるんだぜべいべー そうそう上手くいかないぜ〉(『CHOP』)、〈生きる意味の旅に 一人で出かけても どうせ見つからないしほらもう何度も 分かっていることなんだ〉と、赤裸々に綴った。

そしてリンリンは、〈消えたい 死にたい朝に お前 近寄んなと 頭の中でそう 幾度となく殺してたんだ〉と歌い出す『beautifulさ』で、〈どんなとげとげな日でも 息してれば 明日は来るんだし 泣いた後に 咲くその花は so beautiful beautifulさ〉と絶望に希望を灯した。

こうして思いつくまま数曲の歌詞をクローズアップしてみても、BiSHの歌にはその生き様が生々しく刻まれていることがよくわかるだろう。そんな歌たちを核にして伝わってくる彼女たちの生き様に、僕らは心を揺さぶられ、胸の奥を貫かれ、魂を突き動かされてきた。

オムニバス映画から、未来へ



そして今度は、歌とは異なるBiSHの6人の新しい表現を僕らは体験することになる。

6人6様の物語でそれぞれが初主演するオムニバス映画『BiSH presents PCR is PAiPAi CHiNCHiN ROCK’N’ROLL』が、6月10日に公開されるのだ。


アユニ・D『オルガン』

BiSHのドキュメンタリー映画『ALL YOU NEED is PUNK and LOVE』を手掛けたエリザベス宮地が監督を務め、アユニ・Dが主演した『オルガン』、行定勲監督でセントチヒロ・チッチが主演した『どこから来て、どこに帰るの』など、6本の短編映画は人間の業を、おかしみを、訳のわからなさを描きながら、やはり美しく、映像の中に彼女たちの生き様が宿る。

しかし、BISHの生き様を目の当たりにできるのも、2023年までだ。すでに発表されている通り、2023年の活動をもってBiSHは解散する。それまでの間に、彼女たちはどんな生き様を見せてくれるのか。

そして、どんな“死に様”で生き様にピリオドを打つのか。きっとBiSHなら、そこでもまたどうしようもなく人間くさくて、でも美しくて強い、そんな姿を見せてくれるはずだ。

(文:大久保 和則)

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