映画『島守の塔』吉岡里帆インタビュー|戦火を生き抜いた女性、比嘉凛を演じて「私が今、想うこと」
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太平洋戦争末期の沖縄を舞台にした映画『島守の塔』(五十嵐匠監督)が、7月22日(金)にシネスイッチ銀座ほか全国で公開される。
本土から派遣された戦中最後の沖縄県知事・島田叡(萩原聖人)と、沖縄県警察部長・荒井退造(村上淳)が沖縄県民の命を守るため厳しい「沖縄戦」を必死に生きた姿を描いている。沖縄本土復帰50年にあたる今年、命や平和の尊さ、戦に巻き込まれた沖縄県民の悲劇を描いた本作は、後世に残すべき作品と言える。
今回cinemas PLUSでは、戦火に翻弄されながらも必死に生きた比嘉凜役を演じた吉岡里帆にインタビュー。コロナ禍により撮影が中断したものの、無事に公開されることになった今の気持ちなどを伺った。
沖縄本土復帰50年の年に上映される意義とは?
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——公開を控えた今、作品への想いをお聞かせください。
吉岡里帆(以下、吉岡):今回の作品のお話をいただいた時に、沖縄戦は戦争映画を描く中でも特に難しいと伺っていました。五十嵐監督からも「挑戦的な作品になると思いますが、一緒に頑張っていただけないでしょうか」と言っていただき、監督の想いを受ける形で島田叡知事付の女性、比嘉凜役に取り組むことができました。今はこのような意義のある作品が無事に公開されることを嬉しく思います。
——今回の作品の意義はどんなところでしょうか?
吉岡:新聞で情報を伝達していた人の目線も描かれているところが他の戦争映画とは違うなと感じています。当時、本当の情報を伝えたかった人の「伝えられない」という想い、勉学に励みたかったのに「お国のためにがんばるんだ」という少年の想いなど、元来「こうしたかった」という人たちの戦いも作品に込められています。
作品をご覧になっていただければ、今の時代は自由に選択し、自由に発信できる世の中だということを実感していただけるかもしれません。正しい情報をきちんと受け止めることの重要性も、作品から伝わればいいなと思っています。
——たしかに昔の状況を知ることにより、今の時代を振り返ることができますね。
吉岡:そうですね。あとは何より歴史をきちんと知ることが大切だと感じています。毎年、戦争映画が作られていますが、多くの人が戦争を知るきっかけになるという意味でも非常に意義のあることだと思います。
多くの方たちの想いが作品を完成に導いた
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——コロナによって1年8か月もの間、撮影中断を余儀なくされたと伺いました。その時の想いはいかがでしたか?
吉岡:撮影がコロナの第1波の時期だったので早く東京に戻らないと沖縄県民の方にもご迷惑をおかけすることになってしまうということで、残念ではありましたが途中で中断という形になりました。
しかし、その決断の後も監督から「僕はこの映画を何年かかったとしても完成させたいと思っているので、再集合できた時は同じメンバーで作品を完成させます」とメッセージをいただいていたので、その時期を待っていました。
——今回は「映画島守の塔サポーター」を創設し、多くの方に映画製作、公開へのご支援を募ったと伺いました。
吉岡:沖縄県民の方から「映画を完成させてほしい」というたくさんのお声をいただき、また、多くの方からの支援もあって、撮影を再開することができました。いくつかのシーンの撮影は取り止めるなど変更点はありましたが、それでも作品のテーマを伝えるということはできたかなと感無量です。
撮影後は安堵と祈るような気持ちに……。
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——比嘉凛を演じるにあたり、どんなことを準備されましたか?
吉岡:沖縄戦について書かれている書籍や文献を読んだり、当時の方の想いが綴られた資料を読んだりしました。また、実際に多くの方が逃げ込んだ「ガマ」と呼ばれる自然壕を見学させていただきました。そこには今もお茶碗などが残っており、人が「そこにいた」という形跡が感じられ、苦しくて悲しい情念が残っているような感覚も覚えました。実際の場所で恐怖と悲惨さに触れたことで、戦争から目を背けてはいけないなと強く感じ、撮影に臨みました。
——クランクアップの瞬間はどうでしたか?
吉岡:中断している間も監督の想いをお手紙で受け取っていたので、無事に撮り終えた時は安堵の気持ちでいっぱいでした。また、多くの方からの寄付も完成に導いてくださったので、県民の方に納得していただける作品になりますようにと、深く深く祈るような気持ちでした。
——今回の役を演じ終え、気持ちの切り替えはすんなりいきましたか?
吉岡:いつもならば一つの作品が終わるとスパッと気持ちが切り替わるのですが、今回は撮影が一度止まり、いつ再開されるかわからないという状況だったので、ずっと作品のことが頭の片隅にありました。撮影までにたくさんの情報が頭に入っていたので、終わってからもなかなか切り替えられない状況でした。
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——今後はどんな役を演じてみたいですか?
吉岡:そうですね……。お母さんの役が演じられる年齢になってきたので、愛情深い家族をテーマにした作品に関われたらなと思います。
——最後にこれから映画『島守の塔』をご覧になる方にメッセージをお願いします。
吉岡:今回の作品は「戦争を知る」という意味でとても勉強になる作品になっています。また戦争中、新聞を作っていた方たちが登場するのですが、物を届けることの難しさも知ることができるかと思います。
沖縄で過ごされていた方の本土に対する想いや、戦火の中でどんな風にして生きてきたかということも感じることができると思うので、ぜひ劇場でご覧ください。
(撮影=渡会春加/取材・文=駒子)
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