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ドラマ好きにおすすめしたい「NHKドラマ」7選
ドラマ好きにおすすめしたい「NHKドラマ」7選
【イチオシ!】「空白を満たしなさい」
平野啓一郎の長編小説をドラマ化。「あなたは亡くなったんです、3年前に」ある日突然、身に覚えのない己の死から復活した徹生(柄本佑)。会社の屋上から転落したというが、何も思い出せない……。警察では自殺で処理されたらしいが、愛する妻・千佳(鈴木杏)と息子がいた自分が自殺などするはずがない。自分の死の真相を探るうち、生前佐伯(阿部サダヲ)という男に付きまとわれていたことを思い出す……。
死んでしまった人が生き返ったら……と、願う人は少なくないと思うが、実際に生き返ると喜びだけでは済まないことを目の当たりにする。帰宅した瞬間、妻・千佳(鈴木杏)の顔に浮かんだ表情は喜びではなく、困惑や恐れに見えた。徹生は自殺とされていたため、千佳をはじめとした周りの人たちは彼の死後、苦悩してきたのだった。さらに生き返ったことで保険金を返還しろと言われたり、彼ら”復生者”たちを排除しようとする人々も現れる。元の職場に戻れるわけでもなく、面接で復生者だとわかると相手の顔色が変わり、まともな職にもつけない。自分の死の真相について調べる徹生が辿り着く真実とは……!?
非常に考えさせられるテーマだ。徹生が「自分が自殺なんかするはずがない」と苦悩する一方で、人助けをして死んだ人が「自分は英雄扱いされているが、本当はそんなに善人だったわけではない」と苦悩する人もいる。それぞれに苦悩しつつ支え合おうとする柄本佑と鈴木杏が素晴らしく、他のキャスティングが想像つかない。苦しみをともないそうな感情の揺れを演じきった2人に、心から拍手を贈りたい気持ちだ。
そしてこの作品の大きなキーとなっているのが、阿部サダヲ演じる佐伯だ。もう、本当に怖い。映画『死刑に至る病』では連続殺人鬼役で私たちを恐怖に陥れた彼だが、この作品では不潔で自分が目を背けたい、耳をふさぎたくなるような言葉ばかりぶつけてくる異常な男を演じている。『死刑に至る~』でも思ったが、彼の声は聞いちゃいけないとわかっていても聞いてしまうような、恐ろしい魅力がある。
この物語が印象的なのは、前半は徹生が”なぜ自分は死んだのか”を探るのに対し、自分の死の真相を知ってからは"自分が人に何を伝えられるか"、"何を遺せるか"……ということにフォーカスしていく点だ。また、原作の平野啓一郎作品にたびたび出てくる「分人」という考え方も印象的だ。「たった一人の自分」が存在するのではなく、相手や環境によって複数の自分が存在するという考え方。最終回でとある人物が言うセリフが心に残った。「つきあう人の数だけ、いくつも自分を持っている」 「まずは好きな自分を見つけることです」 「その相手と一緒にいるときの自分を大事にしていくんです」
死を扱う物語だが、観た後に「生きたい」「自分の人生やまわりの人、彼らとの関係を大切にしたい」そんな気持ちにさせてくれるドラマだった。筆者もまず、好きな自分を見つけたい。
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他にもおすすめしたい、過去放送のNHKドラマ
■「恋せぬふたり」
人を好きになったことがなく、恋愛やセックスがわからない主人公・咲子(岸井ゆきの)が恋愛もセックスもしたくない男・高橋(高橋一生)と出会い、同居生活を送ることから始まる物語。自分は普通ではないと悩みつつ家族や周りの人に無理して合わせていた咲子が、高橋と出会うことで自分について認識し、自分にとっての幸せな生き方を模索していく。
難しいテーマではあるが、主人公だけでなく凝り固まった価値観をもっていた家族や元恋人、友人
たちの“変化”も自然に描いているため、考えさせられることが多い。
何より主人公が自分にとっての幸せを定義していく姿は、性自認に限らず周囲と異なる部分をコンプレックスに感じたことがある人は励まされる内容だろう。
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■「ここは今から倫理です。」
原作同名漫画の実写化作品。独特な教師・高柳を演じた山田裕貴の再現度がすごく高かったし、毎回それぞれの生徒が持つ問題について、観る側の価値観も問われた。自分も高柳の生徒になったような気持ちで見入ってしまう作品だった。
熱血なわけでもないし爽やかなわけでもないが、ある意味ものすごくかっこいい先生像だ。
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■「今ここにある危機とぼくの好感度について」
トラブルを避けたいあまりに当たり障りのないことを言い続け、人気低迷したアナウンサー・真(松坂桃李)の薄っぺらいく開き直った役が秀逸だった。恩師に誘われ大学の広報となった彼は、相変わらずペラッペラだったが、どこかで変わるのか、変わらないのか……。
真やその周りの人物たちはかなり極端に描かれていてツッコミどころ満載なのだが、そんな自分だって我が身かわいさに指摘できなかったことや、穏便に済むほうを選んでしまったこと、あるよな……と自分を映す鏡のようでもある作品だった。
>>>「今ここにある危機とぼくの好感度について」
■「カナカナ」
「星新一の不思議な不思議な短編ドラマ」の前の15分枠ドラマ。元ヤン青年・マサ(眞栄田郷敦)が人の心が読める5歳の女の子・佳奈花(加藤柚凪)を助けたことから始まるハートフルコメディーである。
見た目は怖いがどこまでも純粋なマサと、年齢にしては大人っぽい佳奈花のやり取り笑わせられたりジーンときたり。佳奈花の能力に気づいていて悪用しようと近づく叔父(武田真治)・2人をあたたかく見守るおばちゃん(宮崎美子)・お調子者だがいい奴な親友(前田旺志郎)・マサに逆恨みする警察署長(桐山漣)など、2人を取り巻く俳優陣も素晴らしい。悪役も結局憎めないあたりも魅力だった。
>>>「カナカナ」を観る
あらためて振り返る、NHKドラマの魅力
失礼ながら、昔は夜のドラマ=民放というイメージがあったが、今はNHKも楽しみなドラマが数多くある。直近のものを中心に作品を振り返ってみて、NHKドラマの魅力は企画の良さと絶妙なキャスティングにあると感じた。挑戦的なテーマにも取り組んでいるし、それぞれの作品をしっかりとした作り込みか感じられる。
また、確かな演技力を持った俳優をキャスティングしているのはもちろん「この人にこんな役を演じさせるのか」と新たな発見となるような役だったり、「脇にこの人を持ってくるのか~!」という当たりくじを引いたようなうれしさを感じることも多く、新しさがある。
今後NHKがどんなドラマを生み出すのか、今後にも期待したい。
(文:ぐみ)
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