「舞いあがれ!」第33回:東大阪と五島、ヒロインの幼馴染みが鉢合わせ
2022年10月3日より放映スタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
本作は、主人公が東大阪と自然豊かな長崎・五島列島でさまざまな人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。ものづくりの町・東大阪で生まれ育ち、 空への憧れをふくらませていくヒロイン・岩倉舞を福原遥が演じる。
本記事では、第33回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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一太、成長
貴司(赤楚衛二)は大瀬崎灯台に3日いたというセリフがありました。3日! スーツで? 野宿? すでに放浪詩人の域であります。
観光地に、しかも断崖絶壁に、3日もの間、スーツ姿の男がふらついていたらあやしまれそうですけれど……。小綺麗な赤楚さんだから許容される行為でしょう。
ひとりになりたいとき、知らない人ばかりのところへ行く。貴司の気持ちを慮る舞(福原遥)。でも心配で会いに行く舞と久留美(山下美月)。
ひとりになりたいときでも、自分の境界線に入ってもいい人たちがわずかにいて、その人達が来てくれたら嬉しいものです。お母さんには入ってきてほしくないけれど、舞と久留美なら良いのだと思います。お母さんかわいそうですけど仕方ないですね。
前半、7分間ほど、貴司の自分語り。赤楚衛二の声のトーンがやわらかく、海の波の音や風の音や鳥の声と混ざって、聞き心地が良かったです。デラシネの八木(又吉直樹)のしゃべりかたにちょっと似ているような……。
そして貴司は舞の祖母・祥子(高畑淳子)の家へーー。
祥子が迎えに来るところは書かず、さらりと祥子の船に乗って港に着きます。こういう省略はありです。すでに祥子が船の仕事をしてることを視聴者は知っているから。
「おばあちゃん かっこええな」と久留美が祥子のことを言うだけでいい。
桟橋を降りるとき、貴司が久留美の手をとりますが、舞は手を貸してもらう必要がありません。島でしばらく暮らしているし人力飛行機の訓練で足腰を鍛えているから頼もしいのです。
以前、とある女性の俳優が小舟から降りるとき手を貸してもらう必要はないと言っていたことを思い出しました。そういう行為になんか笑ってしまうとか。なかにはそういう人もいるのです。むしろ、貴司のほうが手が必要そうに見えます。
祥子の家でお風呂に入って、すっきりした貴司。ご飯を食べながら、「変わり者は変わり者で堂々と生きたらよか」と祥子の飾らないシンプルな話で、逆に楽になります。変わりたいと思っていた貴司が変わらなくていいと覚悟を決めるのです。
お風呂上がりの爽やかな貴司を偶然見た一太(若林元太)は、舞がフィアンセを連れてきたと勘違い。
成長した一太は、少年時代の面影のある素朴な青年でした。
【朝ドラ辞典 海(うみ)】朝ドラに限らず、気持ちを整える場面では海が格好のロケ地。朝ドラでも、ここぞというとき、海が出てくる。遠くまで広がる海(貴司いわく「無限の青やで」)、高い空、風に吹かれる俳優たち。それだけで名場面の完成です。海が舞台の朝ドラも多数。沢口靖子主演で銚子が舞台の「澪つくし」、気仙沼が舞台の「おかえりモネ」、北三陸でロケした「あまちゃん」など。
☆浜辺あるある。腰を下ろすのにちょうどいい流木がさりげなく配置されている。「舞いあがれ!」第33回ではそれがなく、砂の上に直座りしていて、新鮮だった。
(文:木俣冬)
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