「舞いあがれ!」第34回:回想シーンも不自然さがまったくない高畑淳子のレンジの広さ
本作は、主人公が東大阪と自然豊かな長崎・五島列島でさまざまな人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。ものづくりの町・東大阪で生まれ育ち、 空への憧れをふくらませていくヒロイン・岩倉舞を福原遥が演じる。
本記事では、第34回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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父母も五島へーー
貴司(赤楚衛二)を探して五島に来た舞。木戸(哀川翔)が鯛をもって来ます。婚約者を連れてきたと聞いてお祝いのつもりだったのです。まだ学生なのに……と舞は戸惑いますが、めぐみ(永作博美)は学生のときに浩太(高橋克典)を連れて来たと聞いて、それがきっかけでめぐみと祥子(高畑淳子)は長いこと喧嘩別れすることになったことを思うのです。
食事をしながら、過去の母子の確執について祥子から聞く舞。
回想シーンの祥子は、今よりもっと性格がきつそうで、大学を途中で辞めて結婚して相手の工場の手伝いをすることを許しません。
「いっときの気持ちでこれまで頑張ってきたことば放り出すちゅうとや間違っちょるっち思ってな」
と舞に当時の心境を語ります。
これって、今の舞も同じ状況です。本人は目の前のことに夢中ですがめぐみは心配しています。
祥子の言葉に舞はどう感じたでしょうか。すこし胸がうずいたでしょうか。
祥子は第33回で貴司の生き方に寛容でした。めぐみにきつく言っていた昔の祥子とは別人のようです。
自身の許容範囲が狭かったがためにひとり娘を手放してしまった祥子の、長い長い孤独な時間は途方もないもので。めぐみとのことを大いに反省して、いろいろな生き方を受け入れようと考えるようになったに違いありません。
ジャム作りは、めぐみが戻ってきたときにできる仕事をと思ってはじめたと木戸が舞に教えます。祥子は娘思いなのです。
おりしも祥子に東大阪から電話がかかってきて、舞を迎えにめぐみと浩太がやって来ます。
めぐみは舞に、なぜ大学を中退してまで、難しいパイロットを目指すのか訊ね、舞は
しっかり自分の意見を言い、説得します。
めぐみはめぐみで舞を心配しているから反対するのです。それはかつての祥子の気持ちです。
舞の説得に来ためぐみですが、過去の祥子と対立したときの、祥子の気持ちをようやく実感できました。
祥子は祥子で、過去、頭ごなしに叱らず、めぐみの話を聞けばよかったと反省するのです。
台所で並んで鯛(たぶん)の調理をしている祥子とめぐみは仲の良かった頃のふたりに戻ったようでした。
【朝ドラ辞典 回想シーン(かいそうしーん)】朝ドラには回想シーンもつきもの。実際の役を演じている俳優が過去を演じることもあれば、子役やもう少し若い俳優を起用することもある。「舞いあがれ!」では祥子とめぐみを高畑淳子と永作博美が共に過去も演じた。たいてい回想は少し無理が出るものだが、高畑淳子の場合、若い頃のほうが本人に合っているようにも見えた。つまり、老いた姿こそ少し負荷をかけて演じているということである。でもその老いた姿も不自然な、無理に老婆を演じているようでもなく、リアリティーがある。これぞ名演技。
(文:木俣冬)
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