アニメ「進撃の巨人」何度でも観たい“7つ”の名場面
「この世界は残酷だ… そして…とても美しい」
そう、何度も思わせてくれた「進撃の巨人」。エレンやアルミン、ミカサたちと共に私たちは幾多もの絶望を経験し、わずかな希望を胸に抱いて進み続けてきた。
2023年3月3日(金)にThe Final Season完結編(前編)が放送され、物語はいよいよクライマックスを迎える。振り返れば、本作は心に残る場面がいくつもあった。本記事では、何度でも観たいと思えるアニメの名場面を振り返っていきたい。
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名場面1:全ての始まりの1話
超大型巨人が壁上から顔を覗かせた場面、鎧の巨人がウォール・マリアを破壊した場面、そしてエレンの母親が巨人に食べられた場面。1話で起きる悲劇が、物語の始まりである。
侵入した巨人が人々をじっと見つめていたり、躊躇なく食べたりしている姿は、トラウマになるほど残酷な描写だった。運よく生き残れたとしても生者の瞳に光はなく、この世の終わりのような表情で目の前の惨劇を見つめている。人類はただこの状況を受け入れるしかないのかと絶望した1話である。
しかしここでの絶望が、人々をより強くしたのは確かだ。エレンは、家と母親を奪われた悲しみと憎悪が動機となり、巨人を駆逐するといった大きな目標を掲げることになった。ここから、エレンの物語は始まったのだ。歴史に残る第1話である。
名場面2:巨人と人類の戦い
人類はただ巨人の恐怖に支配されて終わるのではない。希望を与えてくれたのが、調査兵団の存在だ。
立体機動装置を駆使し、細いワイヤーで巨人の周囲を自由に飛び回る。頸に近づくと、腰に装着している鋭利な刃で削ぎ落とす。僅かな隙も敵に与えないスピード感が印象的だ。この瞬間、人類が本来持っているはずの、誰にも支配されない“自由”を感じる。
小さな体でも屈することなく立ち向かい、抗い続ける兵団はとてもかっこいい。彼らの戦いを後押しするように流れる澤野弘之の「Barricades」も臨場感を助長してくれる。
絶対に敵わないとされてきた超大型巨人や鎧の巨人に対しても、知恵や雷槍を駆使して窮地まで追い込んだ。相手を倒す術は、武力だけではないと分かる。
巨人と人類の戦いで印象的だったのは、リヴァイと獣の巨人・ジークとの戦いだ。54話のウォール・マリア最終奪還作戦でも、73話の巨大樹の森でも、リヴァイはジークを瀕死まで追い込んだ。目にも留まらぬ速さでジークの両腕や足、目を切り刻み無力化していく。調査兵団の命を軽んじてきたジークに対する相当な恨みが込められていた。
リヴァイは“人類最強”という冠が相応しい、どこまでも信頼できる上官である。
名場面3:九つの巨人同士の戦い
小さな人類は、九つの巨人に対して雷槍や対巨人砲などを駆使して攻撃する。だが巨人同士は特別な武器は使わず、肉弾戦で挑んでいたのが印象的だ。相手に体当たりをするだけでなく、殴ったり蹴ったり絞め技を仕掛けたりと人間と同じような動きを見せる。無垢の巨人と異なり、攻撃にはっきりと意志を感じられるのが印象的だ。
エレンたち104期生は訓練兵時代、対人格闘術の練習をするが、そこでの経験が巨人同士の争いでも活かされている。特にエレンは、自分よりも力が上回っていたアニやライナーの動きを真似し、自分の技として活かした。歩くだけで大地が揺れ、転倒すると多くの人や建物を犠牲にする巨人同士の戦いは、呻き声も相まって毎度ダイナミックに映る。
そして巨人同士の戦いは、人間同士とは異なり“力”が全てというわけではない。20話のアニや32話のライナーは“叫び”で他の巨人(ライナーの場合はベルトルト)を呼んだことにより窮地を逃れることができた。そして25話でアニに追い込まれ瀕死状態だったエレンは“巨人を1匹残らず殺す”という強い意志により力を得て、アニを瀕死状態まで追い込むことができた。
単純な戦闘能力の高さだけでは測りきれない、謎の力や意志によって結果が変わることが、巨人同士の戦いの興味深い点である。
名場面4:人類同士の戦い
Season1〜2で描かれていたのは、未知なる巨人との戦い。人間ではなく、人類を襲ってくる相手という点で調査兵団は躊躇いなく殺すことができた。
しかしSeason3になると、壁内の人類の記憶を改ざんした王族も自分たちの敵だと想定するようになる。
39話でリヴァイがケニーと街中で正面衝突したのを皮切りに、調査兵団と中央憲兵が争うようになった。巨人とは違い、自分より経験豊富で力が上回るケニーにリヴァイは苦戦していた。対人間は、巨人とは違い一挙一動が読めないので難しい。少しでも油断したら命を落とすような、緊張感のある戦いが観ていてヒヤヒヤする。
これまで人を殺したことがなかったアルミン、ジャン、コニー、サシャたちも、良心を痛めながら仲間を守るために相手を殺した。「何かを変えることのできる人間がいるとすれば、その人は大事なものを捨てることができる人だ」と言ったアルミンを思い出す。
そしてFinal Seasonに突入すると、ミカサやアルミンたちはマーレ軍やイェーガー派と戦うようになる。Season3とは異なり“殺される前に殺す”ことが定着し、人を殺すことに慣れてしまったようだった。顔からピュアさが消え、絶望した表情で任務をこなすように殺していく。本当にこれでよいのかという、不安が滲み出ているようにも見えた。
名場面5:調査兵団の勇姿
「進撃の巨人」を観ていると、何度も絶望を味わう。なぜ調査兵団は、それでも前に進めるのだろうか。
それは、どんなに絶望的な状況でも「知る」「自由に生きる」権利を人類が求め続けているからだろう。どちらも本来人間が持っているはずの権利だが、壁の王や巨人によって奪われてしまっていた。
海を見にいこうと目を輝かせるアルミン、巨人の謎について生き生きと話すハンジ、この世界の疑問を抱き続けているエルヴィン。全員が「知りたい」という欲求に駆られて、仲間とともに追求している。希望について話す彼らは、残酷な日常とのコントラストで、より一層キラキラと輝いて見えた。
53話で獣の巨人に突撃する直前、エルヴィン団長は「我々はここで死に次の生者に意味を託す!!それこそ唯一!!この残酷な世界に抗う術なのだ」と叫ぶ。この言葉にあるように、彼らの夢は、何人が犠牲になっても仲間に受け継がれていく。
グリシャ・イェーガーは、48話で調査兵団の存在を「魂が自由であることを示す」と表現した。「進撃の巨人」は、調査兵団たちが奪われた「知る」「自由に生きる」権利を命懸けで取り返す様子を描いた作品である。
名場面6:104期生の繋がり
エレンやアルミン、ミカサたちと共に訓練に励み、時に体を張ってお互いを支え合ったライナー、ベルトルト、アニ。実は彼らが壁を破った巨人の正体であり、壁内人類の敵だと知った時は衝撃を受けた。改めて彼らの正体を知ったうえでアニメを観ると、所々怪しい箇所があるので面白い。
36話ではエレンを連れ去ろうとするライナーとベルトルトの元に104期生が集結し、ジャンやサシャ、コニーが声をかける。「全部ウソだったのか?」と泣きそうな声で問いかけるコニーの声からは、彼らが惨劇をもたらした巨人であることを信じたくない様子が窺える。
そして55話では、瀕死状態だったアルミンがベルトルトを食べたことで一命を取り留めた。数年経つと、今度はエレンやアルミン、ミカサたち調査兵団がライナーたちの故郷マーレ国レベリオ収容区を襲い、再び戦争が始まる。
だが、絶望だけではない。大事な人を奪い、奪われ、相手に絶望を味わわせてきた両者だが、最後は地鳴らしを止めるために共に戦うのだ。この104期生の繋がりは、何度観てもグッとくるものがある。
名場面7:2つの視点で“正義”を描く
Season1〜3から一変して、Final Seasonはマーレ国に住むエルディア人たち(マーレの戦士候補生)の視点から描かれている。これまで散々パラディ島の人々を苦しめ追い込んできたマーレの戦士は、実は彼らは家族を守るという大義のために戦っていたのだ。
大事な人がいるのは、マーレの戦士もパラディ島の人も同じである。信念が違うだけで、殺し合いの戦争にまで発展してしまった。これは間違っている、ということが「進撃の巨人」を観ていると痛いほどわかる。86話でマガトが、国の都合の良いように子供を指導し、鍛えてきたことを懺悔していた姿が印象的だ。
「進撃の巨人」は、現実でも起きている問題とリンクしている描写が多々ある。だからこそ、傍観者ではなく当事者として作品を捉えることができるのかもしれない。
作り手の愛を感じる「進撃の巨人」
諫山 創が生み出した「進撃の巨人」はとんでもなく素晴らしい作品だ。その素晴らしい作品の世界観を崩すことなく見事にアニメ化したWIT STUDIOもMAPPAも、キャラクターたちに命を吹き込んだ声優陣も素晴らしい。
2023年2月23日にNHKにて放送された「100カメ」ではMAPPAを密着し、監督も制作もアニメーターも、全員が一丸となって「The Final Season完結編」を手掛けている様子を映していた。1秒あまりのカットも妥協しない姿から、作品への愛が伝わってきた。このようにして、作り手から作り手へと受け継がれてきた結果、今の「進撃の巨人」があるのだと思う。
何度観ても、言葉、動き、想いに胸が震える作品。完結してしまうのは寂しいが、新たな名場面に出会えることを期待して待ち望みたい。
(文:きどみ)
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