これを読めば“朝ドラあるある”がわかる!「朝ドラ辞典」
朝ドラ辞典・さ行
【最終回 (さいしゅうかい)】はじまりがあれば終わりがある。半年の長いドラマの完結に、視聴者が固唾を呑んで見守る日。主人公の晩年をしんみりのこともあれば、主人公が亡くなることもあれば、主人公がまだまだこれからがんばると走っていくなど、様々なエンディングがある。
※関連語:はじまり
【最終回かと思った (さいしゅうかいかとおもった)】
話がいい感じにまとまって、最終回のような回
※類語:大団円
【再登場 (さいとうじょう)】
朝ドラはいくつかのパートに分かれていて、そのパート限りの登場人物もいるが、たまに再登場することがあり、歓迎される。とりわけ最終回近くに前半の登場人物が出てくると盛り上がる。
【佐賀(さが)】
はなわやさや香にネタにされる佐賀。九州地方にあり、戦国時代には秀吉が「名護屋城」を作って唐入り(文禄・慶長の役)の拠点にしていた。
「虎に翼」では花岡の故郷が佐賀。朝ドラで最初に佐賀が登場したのは1969年の「信子とおばあちゃん」。ヒロイン信子の生まれ故郷が佐賀だった。朝ドラで佐賀を印象付けたのは1983年の「おしん」。ヒロインおしんの嫁ぎ先が佐賀で、そこでの嫁いびりが壮絶で、良くも悪くも忘れられない地名となった。2015年、「ひよっこ」ではヒロインみね子の初恋の相手の故郷が佐賀で、彼はみね子との交際を親に反対され、家業を継ぐため佐賀に帰ってしまう。朝ドラでは何かといい印象がない県で、花岡が一瞬いやなキャラに見えたので、またかと思ったが、いやなキャラは偽悪的なものだったことがわかり、佐賀の印象が悪くならずに済んだ。
【挫折 (ざせつ)】
人生につきもの。朝ドラ主人公には意外とそれがなく、周囲の人たちが体験することが多い。主人公に挫折がなさすぎることを指摘されることもときにある。
※類語:壁、ピンチ、向かい風
【サプライズ (さぷらいず)】
ドラマの展開に重要な要素。
【三角関係 (さんかくかんけい)】
朝ドラに限ったことではないが、恋愛エピソードに、ヒロインがふたりの男性の間で心を揺らす三角関係は王道中の王道。
【3代 (さんだい)】
「あまちゃん」「カムカムエヴリバディ」など、祖母、母、娘と3代が登場することが多く、それぞれの世代の代表として人生が描かれる。とりわけ「カムカム〜」は3部構成で3代がそれぞれヒロインとなる画期的構成だった。3人が集まって家の秘伝のあんこを煮る場面は名場面だった。「舞いあがれ!」116回でも家族3代が集まって祖母祥子のジャムを煮た。
【3人(さんにん)】
朝ドラでは主人公と対比するもうひとりの人物、ライバル、親友、きょうだいなどが登場する。ただ、ふたりは二項対立になってしまうので、「3人」でバランスをとる場合もある。幼馴染や親友など。同性3人は「おひさま」、男女3人は「ひよっこ」「半分、青い。」「スカーレット」などがある。この3人組が人気になることも少なくない。
【3人組(さんにんぐみ)】
主人公の友人は、唯一無二のひとりの親友がいるパターンと、3人組のパターンがある。友人3人組は「おひさま」「スカーレット」「エール」などがある。ふたりだと対立はしないものの、どうしても対称的な関係になりやすいが3人だとバランスが良い。
※関連語:3人きょうだい
【死 (し)】
たいてい途中で誰かが死に、それが主人公のターニングポイントになる。主人公の死で終わることもある。
【ジェンダー (じぇんだー)】
朝ドラでは女性主人公が多いため、男性社会のなかで、女性も社会進出していこうと考えて張り切る物語が多く書かれる。例えば「カーネーション」は祭りのだんじりを
女性が引けないことを悔しく思ったヒロインはミシンをだんじりに見立てて洋裁の仕事に励むようになる。「あさが来た」では夫がふらふらと遊んでいて、ヒロインのほうが事業に興味を持っているという逆転が描かれた。女性は結婚して夫を支え子供を生み育てることが当たり前と考えられていたなか、そうではない価値観を模索してきたのだ。「舞いあがれ!」では一步進んで、「女とか男とか関係ない」(刈谷)というセリフが登場した。
【時間経過 (じかんけいか)】
主人公の人生、半生を描く長いドラマなので途中、時間が一気に飛ぶときもある。
【仕事 (しごと)】
お仕事ドラマの側面もあり、主人公の仕事が何であるかが売りのひとつにもなっている。
【師匠 (ししょう)】
家族以外でヒロインを導く人物。ひとつの道を極めた人物でヒロインの人生に大きな影響を与えることになる。「半分、青い。」の秋風羽織(豊川悦司)、「スカーレット」のフカ先生(イッセー尾形)など。
【実際の出来事 (じっさいのできごと)】
朝ドラでは実際にあった出来事が描かれることも少なくない。戦争、震災、コロナ禍など。それらが視聴者とドラマを結ぶ共通体験となる。
【失恋 (しつれん)】
朝ドラのヒロインの初恋はたいてい実らない。
【自転車 (じてんしゃ)】
人物の躍動感を出すために有効な小道具であり、朝ドラでは女性の自立を表現する小道具でもある。「純情きらり」「あさが来た」「カムカムエヴリバディ」などでヒロインが自転車に乗っている。とりわけ「あさが来た」ではヒロインがまだ女性が自転車を乗りこなすことが珍しいとされていた時代に颯爽と乗りこなしていく。
「カムカム」では初代ヒロイン安子が初恋の相手と自転車を練習するシーンが印象的に描かれた。
「舞いあがれ!」ではロードバイクに進化。女性の自立を超えて、人類の進化の象徴のように見える。
【地元 (じもと)】
朝ドラの舞台は全国47都道府県から選ばれる。すでに全国は制覇していて、「舞いあがれ!」の舞台となった大阪を舞台とした朝ドラは多数。長崎は「てるてる家族」以来の2回め。五島列島は初。舞台になる地域は主人公の地元であることがほとんど。そこで育まれて旅立つか、地元に残るかのたいてい2択。いずれにしても、主人公の人格形成に大きな影響をもつ重要な場所となる。「舞いあがれ!」の場合は五島列島は母の地元で、主人公の舞は東大阪生まれ。母の地元に主人公が行って影響を受ける作品はほかに「あまちゃん」がある。
※関連語:方言、名産
【地元枠 (じもとわく)】
地域活性ドラマの役割もある朝ドラ。舞台となる地域出身の俳優が必ず出演し、地元をさらに盛り上げる。
【姑 (しゅうとめ)】
ヒロインに立ちはだかる強烈な人物。昭和の朝ドラは「いびり」が定番だったが、平成後半から令和にかけてコンプライアンスが厳しくなって「いびり」は天然記念物的存在になってきている。
【祝宴 (しゅくえん)】
これまでの出演者が一同に介してお祝いするエピソードが一回はある。たいていは結婚式。ひたすらに幸せな回。
【夙川アトム (しゅくがわ あとむ)】
元芸人で俳優。「べっぴんさん」で演じた小山は、メガネで神経質そうに「大急ですから」といちいちいやみな百貨店の社員。人気が出て、スピンオフ「恋する百貨店」にもなった。「スカーレット」では、ヒロインの陶芸の兄弟弟子役。「ブギウギ」では、笑い少なめ、ビジネスライクな梅丸社員・佐原を演じている。メガネのあるなしで、雰囲気が随分変わる。
【主題歌(しゅだいか)】
ドラマがはじまる前に、スタッフ、キャストのクレジットと共に流れるもの。当初はインストゥルメンタルだったが、はじめて歌詞入りのものになったのが「ロマンス」(84年)。以後、人気アーティストが歌うことで話題のひとつになっている。その年の紅白歌合戦で主題歌を引っさげて出場することも、少なくない。歌詞がドラマの内容を暗示しているように感じるものもあり、ドラマと切り離せない。
「オープニング」参照。
【出産 (しゅっさん)】
ヒロインが結婚して出産するエピソードは定番。出産に苦しむ場面、出産直後の倦怠感を果敢に演じる場合もあるが「舞いあがれ!」ではなかった。
※関連語:妊娠、子育て
【消息不明(しょうそくふめい)】
朝ドラでは、途中で出てこなくなる登場人物がいる。それまで濃密に主人公に関わっていたにもかかわらず、その後、まったく話題にのぼらなくなるので、視聴者があの人はどうしたのか、手紙のやりとりくらいしないものだろうかと、毎度やきもきする。しばらくすると、ふいに再登場し、実は手紙のやりとりはあったということが説明されたり、されなかったり。推測にすぎないが、あの人どうしているんだろう、と思い出してもらうために、あるいは、サプライズ的に再登場したときの喜びを大きくするため、あえて消息に触れないようにしているのではないか。
※関連語:後出し、再登場
【将来(しょうらい)】
朝ドラはたいてい主人公の幼少時からはじまり、ある段階で、将来、なにをするか進路を考える局面がある。進学か就職か、結婚か仕事か、仕事だったら何の仕事か、家を継ぐのか、継がないのか等々、様々な選択肢のなかから何かを選び取ることが、ドラマの題材になる。ドラマの冒頭は、主人公が夢を達成した将来の場面からはじまることもしばしば。
※関連語:仕事、進学 、やりたいこと、夢、未来
【常連 (じょうれん)】
朝ドラにちょいちょい脇役で出演するおなじみの俳優たちがいる。
「舞いあがれ!」の風間役いちえは、大阪出身の俳優。朝ドラでは「舞いあがれ!」「おちょやん」「まんぷく」「べっぴんさん」に出演している、BK朝ドラ常連俳優のひとり。
「舞いあがれ!」堂島役の鈴木康平は「あさが来た」「べっぴんさん」「わろてんか」「カムカムエヴリバディ」「舞いあがれ!」に出演している。
BK 常連、最大の人気者は海原はるか・かなた
【食事 (しょくじ)】
朝ドラには食事シーンがよく出てくる。基本、ホームドラマなので食卓が主な舞台になる。また、食が題材になり、ヒロインが料理を作る物語もちょくちょくある。家族や仲間たちが食事をしながら語り合う場面では美味しそうな食事が出てくる。舞台になった地域ならではの食も見どころのひとつ。
朝ドラに出てくる食べ物は美味しいという評判だと聞く。だが俳優たちは食べながらセリフを話すのがなかなか至難の業。聞いた話だと食器を移動させるときなど音をさせないように気を使っているそうだ(少なくとも「おしん」の頃はそうだった)。これらができると芸達者。しかもワンテイクでOKではなく何度か同じ場面を演じるので何度も食べないといけない。ほのぼの見えて演じてるほうは気が抜けないのである。
【女性パイロット (じょせいぱいろっと)】
女性パイロットを主人公した朝ドラは1976年、朝ドラ第17作「雲のじゅうたん」がある。時代は大正、ヒロイン真琴(浅茅陽子)は利根飛行学校で学び、日本人初の女性飛行士になる。大正時代の複葉飛行機を復元し撮影したことが注目された。
ヒロイン真琴はオリジナルキャラクターで、実際、日本で活躍した特定の女性飛行士をモデルにしてはいないと言われている。
【進学 (しんがく)】
主人公が成長して大学に進学するか就職する。朝ドラでは高校を出て進学することが多い。戦中戦後が舞台になることが多く、当時は進学したいけれど家庭の事情で就職せざるを得ないことが描かれる。現代を描いた「半分、青い。」「おかえりモネ」「カムカムエヴリバディ」(ひなた編)のヒロイン、も高校を出て就職していた。「舞いあがれ!」は大学に進学する珍しいヒロイン。
【新キャラ (しんきゃら)】
朝ドラに限ったことではないが、話の途中で新キャラが出てくると、
新展開がはじまる予感がして、空気が変わる。大きな転換の場合、有名俳優がキャスティングされ、貫禄の登場となる。
【新婚生活 (しんこんせいかつ)】
ヒロインが波乱万丈のすえ、結婚するとしばらくは夫婦のほのぼのした生活が描かれる。このまま出産してホームドラマ化して終わってしまうと良作にはならず、なにかしら一波乱、必要。
※類語:平和な日常
【駿河太郎 (するがたろう)】
「カーネーション」で糸子(尾野真千子)の夫、「舞いあがれ!」では舞(福原遥)の所属する大学サークル・なにわバードマンの伝説のOB役を演じた。
【聖子ちゃんカット (せいこちゃんかっと)】
「舞いあがれ!」の回想シーンで永作博美がしている髪型。80年代特有の髪型である。松田聖子のトレードマークで、くるくるドライヤーで前髪とサイドを気合入れて巻いて固めたもの。セットがなかなか大変で、女子の気合の表れである。ほかに「あまちゃん」ではヤング春子役の有村架純がこの髪型にして登場した。あまりないが80年代を描く場合、登場人物がこの髪型にしがち。そして80年代が青春だった視聴者がSNS で話題にしがち。
【倉庫(そうこ)】
一部で使用されているネット用語で、登場人物が役割を終えて出てこなくなることを「倉庫に入った」という。
しばらくしてまた必要になると「倉庫から出す」という。都合よく出入りすることを
揶揄した用語。再び登板する人物はいいが、倉庫に入ったきりの人物も少なくない。
【創作 (そうさく)】
朝ドラの主人公は作家であることも多く、創作の苦しみを味わう。エピソード「エール」は作曲家、「なつぞら」はアニメーター、「スカーレット」は陶芸家、「おちょやん」は俳優となり、ときに苦しんだ。「半分、青い。」では漫画家を志したが挫折した。主人公の相手役が創作にいそしむこともある。「舞いあがれ!」の貴司は歌人としてスランプを味わった。
【喪失感 (そうしつかん)】
朝ドラは喪失感を乗り越える物語が多い。代表的な題材は戦争。そこに震災が加わってきた。
朝ドラの初期に、戦争中の物語が多かったからか、喪失感が物語には必要と思ったからか、順番はわからない。普遍的なテーマであることは確かである。
【祖父 (そふ)】
ホームドラマ、大家族ドラマが基本の朝ドラには、おばあちゃんと並んでおじいちゃんも必須。お父さんがだらしない存在であることが多いなか、よくできた人物が多く、
主人公にとって最初の導師的存在になることも少なくない。
※関連語:祖母
【祖母 (そぼ)】
基本はホームドラマである朝ドラには欠かせない存在。核家族以前の大家族で暮らす時代を踏襲し、朝ドラでは主人公が三世帯で暮らしていることが多い。主として祖母は主人公にやさしくあたたかく接する存在。名優がキャスティングされ、作品を引き締める。人気キャラになることもある(例:「あまちゃん」の夏ばっぱ(宮本信子)。「ちゅらさん」のおばぁ(平良とみ))。ときには途中で亡くなってナレーションとして見つめ続けることもある。(例:「ごちそうさん」「おかえりモネ」)「あまちゃん」の「ばっぱ」、「舞いあがれ!」の「ばんば」など独特の呼び方もある)
※関連語:祖父
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