【映画&2023春ドラマ】大きな存在感を放つ、乃木坂46卒業生

©平尾アウリ・徳間書店/「劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ」製作委員会

今年の8月で結成から12年を迎えようとしている乃木坂46。昨年12月には1期生の齋藤飛鳥、今年2月には2019年から約3年半キャプテンを務めた秋元真夏、3月には2期生の鈴木絢音が卒業。乃木坂46の基盤を築いてきたメンバーが全員卒業し、3期生や4期生が中心の新たなグループに生まれ変わった。

乃木坂46というブランドを語る上で外せないのが、卒業生の活躍である。アイドル時代の活躍に重きが置かれがちではあるが、乃木坂46の卒業生はアイドル時代からすでに卒業を念頭に置いた活動を続けており、その才能を卒業後、開花させていくことも多い。

たとえばモデルや俳優、YouTubeなど様々な分野で活躍し、確固たる地位を築いている白石麻衣や「第45回日本アカデミー賞」で大きくスポットが当たった西野七瀬などが代表的だ。ほかにも、生田絵梨花や伊藤万理華、深川麻衣など多くの卒業生が置かれたポジションで活躍している。彼女たちに共通しているのは、乃木坂46というある意味で多様性が開かれた場所で、自分の強みを見つけ卒業後の活動に活かしているという点だ。

そして、4月から放送されるドラマでも再び多くの卒業生の出演が決定している。もはやこのライナップを見ても驚かなくなったというのが正直な感想ではあるが、改めて本稿では、春ドラマに出演が決まっている4人の卒業生をピックアップするほか、出演映画についても触れたい。

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白石麻衣「風間公親-教場0-」



まずは「風間公親-教場0-」(フジテレビ系)に出演する白石麻衣。乃木坂46時代から「やれたかも委員会」(MBS・TBS系)や「俺のスカート、どこ行った?」(日本テレビ系)など、個性的な役から真面目で凛々しい役まで幅広く演じてきた白石は、2020年にグループを卒業後も俳優として多くのドラマや映画に出演。

卒業後初のドラマ出演となった「漂着者」(テレビ朝日系)では女児連続殺人事件に関係しているとされるヘミングウェイ(斎藤工)を追いかける新聞記者役、「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ系)では病弱で感情の起伏の激しい謎めいた犬堂愛珠、「テッパチ!」(フジテレビ系)ではエリート自衛官の桜間冬美など、年齢を重ねていくにつれて幅広い役柄を引き受け、今では何でもこなせる役者というイメージも強い。

(C)迫稔雄/集英社 (C)2022映画「嘘喰い」製作委員会

中でも特に印象的だったのが、鞍馬組の組長にして闇カジノを仕切る鞍馬蘭子を演じた映画『嘘喰い』だ。言葉遣いの粗さや強烈な風貌が印象的な蘭子だが、白石は内に秘めたしなやかな強さをもって魅力的に演じ、「ここまでできるのか!」と思わず声がこぼれてしまうほどだった。それはこれまで白石がジャンルを拒まずに地道に経験を積み上げた賜物だろう。

「風間公親-教場0-」では新人刑事の教育に“刑事指導官”として当たっていた風間(木村拓哉)とバディを組む新人刑事役の鐘羅路子を演じる。仕事とプライベートとのギャップに溢れた人物のようで、白石は公式サイトのコメントで“親しみを持っていただきやすいキャラクター”と語っており、冷静沈着な風間とどのような掛け合いを見せてくれるのか非常に楽しみだ。



2023年にはNetflixにて公開される映画『ゾン100 〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』でヒロインの三日月閑を演じることも発表されており、俳優として今後も注目されていくだろう。

松村沙友理「何かおかしい 2」



そんな白石とともに乃木坂46時代には御三家と呼ばれ、年長メンバーとしてグループを支えてきた松村沙友理は、4月から放送される「何かおかしい 2」(テレビ東京系)に出演が決定した。厳密には4月スタートのドラマではないものの、「心霊内科医 稲生知性」(フジテレビ系)やFODオリジナルドラマ「ショジョ恋。」にも出演しており、この春の松村の活躍には驚かされる。

乃木坂46時代にもドラマや映画には出演していたものの、このように俳優として目覚ましいキャリアを遂げるとは誰も予想していなかっただろう。2021年に乃木坂46を卒業した後は、以下のように俳優としての階段を着実に駆け上っている印象だ。

  • 「プロミス・シンデレラ」(TBS系)
  • 「農家のミカタ」(テレビ東京系)
  • 「愛しい嘘〜優しい闇〜」(テレビ朝日系)
  • 「花嫁未満エスケープ」(テレビ東京系)

そもそも松村といえば、演技の上手さが様々な場面で注目されることが多かった。たとえば、冠番組「乃木坂工事中」(テレビ東京系)の3月10日放送回「トラペジウム大ヒット記念 勝手に演技力研修!後半戦!」でフラれる女を演じた松村が見事なまでの怪演を披露し、大きな話題となった。

このような経緯もあって、ドラマや映画で見せる演技力の高さには驚きはしないが、映画『賭ケグルイ』のような二面性のある役から映画『東京ワイン会ピープル』での大人びた姿まで演じられるのは松村が役としっかり向き合ってきたからだろう。



今年5月には人気シリーズの『劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ』(以下、『推し武道』)で主演も決定している。『推し武道』は松村が初めて地上波ドラマで主演を果たした記念すべき作品であり、元アイドルが地下アイドルの熱烈なファンを演じるという構図が面白い作品だが、松村の天真爛漫な笑顔と猟奇的な愛情を向ける姿はまさにえりぴよを体現していたといっても過言ではない。

そして松村のパーソナリティを知っているからファンにとっては、えりぴよの愛嬌たっぷりのキャラクターとの相性の良さも感じられるだろう。松村の代表作として『推し武道』を携えて、これからも一人の俳優として活躍していくはずだ。

西野七瀬「Dr.チョコレート」



今やトップ女優の仲間入りを果たしている西野七瀬も忘れてはいけない。4月から放送の「Dr.チョコレート」(日本テレビ系)では、Dr.チョコレートの正体を追う大手新聞社のエース奥泉渚を演じる西野は、公式サイトのコメントで「敏腕新聞記者、しかも仕事人間の女性という役柄はこれまでに演じたことのない役柄で、自分でもどんな風になるのか想像もつかない分、純粋に楽しみです」と意気込みを語っており、これまでに見たことのない西野の表情が見られそうだ。

これまで着実に俳優としての経験を重ねてきた西野の代表作としてあるのが「あなたの番です」(日本テレビ系)への出演だろう。同作で西野はおとなしい性格だが、後に黒幕であることが発覚する黒島沙和役を演じ、視聴者を大いに裏切った。この活躍を機に西野の演技は広く知られていき、昨年には映画『ホリック xxxHOLiC』や映画『恋は光』「恋なんて、本気でやってどうするの?」(関西テレビ系)といった人気作品に次々と出演している。



2023年もその勢いは衰えず、1月公開の映画『イチケイのカラス』に続き、話題の映画『シン・仮面ライダー』にもSHOCKER上級構成員のハチオーグ役として出演しており、初の本格的なアクションにも挑戦。剣を振り回しながら華麗に戦うその動きは、西野が乃木坂46としてダンスを経験していたがゆえの完成度だったのではないかと思う。

映画『孤狼の血 LEVEL2』では「第45回日本アカデミー賞」優秀助演女優賞・新人俳優賞を受賞するなど、俳優としても西野はすでに風格を感じさせている。2023年の動向にも注目だろう。

樋口日奈「月読くんの禁断お夜食」



2022年に卒業した樋口日奈は、「月読くんの禁断お夜食」(テレビ朝日系)に萩原利久やトリンドル玲奈らとともにトレーナーの卵である今どき女子の沢村有沙役で出演する。樋口といえば「ラヴズ・レイバーズ・ロスト-恋の骨折り損-」や「フラガール -dance for smile-」などミュージカルや舞台で活躍していた印象も強いが、乃木坂46を卒業後には「かりあげクン」(BS松竹東急)や「往生際の意味を知れ!」(MBS/TBS系)など多くのドラマで爪痕を残している。

コメディー要素の強い「かりあげクン」ではかりあげクンに翻弄されていく新入社員の清水彩花、「往生際の意味を知れ!」では市松海路(青木柚)の恋を健気に応援するが、実は裏がある八幡典子を演じている樋口。まだバイプレイヤーとしての出演が多いものの、舞台で積み上げてきた経験を活かして、たしかな存在感を発揮している。いつかは主演として彼女の多彩な表情を見せる演技を見てみたいものだ。

「月読くんの禁断お夜食」での役柄は裏表がなくしっかりと自分の意見を言える芯の強い女性。樋口もグループでは全体を優しく包み込むような包容力と別け隔てなくしっかり言葉を伝える姿が印象的だったが、そんな樋口と沢村はどこか重なって見える。

今年はまだ1作品しか今のところは発表されていないが、バイプレイヤーとして存在感を高めていけば、樋口の演技が日の目を見るタイミングがくるだろう。





厳密には4月放送のドラマ枠ではないものの、昨年の卒業以降に俳優として出演作が増え続けている北野日奈子は「とりあえずカンパイしませんか?」(テレビ東京系)に出演、また生駒里奈も4月から放送の「勝利の法廷式」(読売テレビ・日本テレビ系)の第2話への出演が発表されるなど、乃木坂46卒業生の活躍の場が広がっているのは素直に喜ばしい。

現在の乃木坂46のブランドが担保されているのは、このように卒業生たちの貢献があってこそであり、山下美月や久保史緒里が俳優としての地位を確立しつつあるのは先輩たちが基盤を作ってきたからである。2023年も乃木坂46そして乃木坂46を羽ばたいていった卒業生の活躍ぶりに期待したい。

(文:川崎龍也)

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