「あなたがしてくれなくても」第3話:「一回目のキスが分岐点」堕ちていく二組の男女の行く末
ハルノ晴による同名コミック(双葉社刊)を原作とする本作は、セックスレスをテーマにした大人の恋愛ドラマ。奈緒と永山瑛太、岩田剛典と田中みな実が演じる2組の夫婦の関係が複雑にもつれていく様を描く。
本記事では、第3話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「あなたがしてくれなくても」第3話レビュー
純粋な愛と欲望以外の要素が入り混じったセックスは、さらなる罪悪感を生む。結局、最後まで達することができなかったのだから尚更だ。
他の女性としてしまった後ろめたさと、意図せず高まってしまった性欲をみち(奈緒)にぶつけた陽一(永山瑛太)の、その後のみちへの態度はあまりにも解せない。
セックスレス解消に向けて一歩前進できたとご満悦なみちに対して、なるべく一緒にいる時間を少なくしようとする陽一。この態度の変化に、さすがのみちも気が付く。
まったく男というものはあまりにも単純でどうしようもなく、ため息しかでない。
一方で、いよいよ破綻の道への扉を開いてしまった誠(岩田剛典)と楓(田中みな実)。
希望に満ち溢れるみちに対して打ち明けられるわけもなく、誠はより一層の行き場のないもどかしさを抱え込む。
この状況で、冷蔵庫に残るタッパーを見ることほどつらいことはない。せめてこの夜くらいは旦那が作ってくれた晩ごはん、食べようよ楓。
糸がぷつんと切れてしまった誠は、仕事をもほっぽり出して海辺で黄昏れる。仕事に対しても家庭に対してもどこまでも献身的な彼なのだから、一日くらいズル休みをしたって許されるはずだ。
そんな誠に寄り添うのは、楓ではなくみちだった。
ずっと抑えていた感情が、堰を切ったように流れ出す。これはもうただ寂しさを埋めているだけなのではなく、しっかりとみちに惹かれていることが見て取れる。
水族館で子供のように無邪気にはしゃぐみちと、そんな彼女に素直に気持ちを伝える誠。どんどん心の距離が近付く水族館で、そっと、確実に、一線を越えた。
その後の車中でのキスは、静かながらも情熱的で、二人のこれからが示されたように思えた。
同刻、陽一と三島(さとうほなみ)はさらなる深い関係に転じていた。この二人もあとは時間とタイミングの問題だと思っていたが、職場、しかも喫茶店での交わりはさすがに刺激が強い。
「一回目のキスが分岐点」ーー三島の言葉が深く深く胸に刺さる。
陽一と三島にとっても、そしておそらくみちと誠にとっても、”そちら側”になってしまったのだろう。
ここまできてしまうと、誠と楓の間にある溝は深くなるばかりだ。
誠の変化を察知して歩み寄る楓だが、時既に遅し。カーナビの履歴で疑惑が確信に変わる。
熱で苦しむみちは、陽一が仕事を休んで自宅に戻ってきていることにも、誠がお見舞いにかけつけようとしていることにも気付くすべがない。
このままじゃ二人が鉢合わせてしまう……!一体どうなっちゃうの……!という絶妙なところで、次回予告。
いやぁ、非常に感情に振り回された第3話であった。
セックスがなくても充分に幸せだと本気で思っている陽一と、仕事のことを考えるとセックスなんてしている場合ではないと思っている楓。
セックスレスという状況は非常に理解し難いが、楓の気持ちはまだわかる。実際、誠以外で性欲を発散しているわけでもないし、仕事に対して愚直に向き合いすぎていてそんな余裕は1ミリもないのだから。
ただ陽一の場合は、みちのことを愛していてセックスがなくてもいいと思っているにもかかわらず、他の女で性欲を発散する。結局、男は男なのだ。
と言いつつも、職場に三島みたいな魅力的な女性がいたら男もそりゃ燃えたぎってしまうのも致し方ないと、一応陽一の肩も持っておこう。
にしても、抱かれた翌日に奥さんの話を人づてで聞くことほどしんどいことはない。きっと三島は「あー、わたし別に奥さんとかいても気にしないので大丈夫です、ちゃんと割り切ってるので。」などと思っているタイプだと想像しているが、それにしてもこの現実を突きつけられるのはしんどい。
と同時に、陽一の感情の起伏が謎でしかないのだが、世の男性諸君、いかがでしょうか……。
第4話、いよいよみちと誠が禁断の関係に突入しそうな香り。ここまできてしまえばあとはもうジェットコースターのように堕ちていくことでしょう。
田中みな実演じる楓が、いつか「M 愛すべき人がいて」の礼香のように豹変するかもしれないーーそんな悪い楽しみ方も、本ドラマの醍醐味なのであります。
(文:桐本 絵梨花)
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