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2023年05月01日

「日曜の夜ぐらいは...」第1話:他愛もないおしゃべり、コンビニの一番高いアイスみたいな日曜ドラマが誕生

「日曜の夜ぐらいは...」第1話:他愛もないおしゃべり、コンビニの一番高いアイスみたいな日曜ドラマが誕生

主演に清野菜名、共演に岸井ゆきのと生見愛瑠が名を連ねる連続ドラマ「日曜の夜ぐらいは...」(ABCテレビ/テレビ朝日系)が2023年4月30日よりスタート。脚本家の岡田惠和が、あるラジオ番組がきっかけで出会った女性3人のハートフルな友情物語を紡ぐ。

本記事では、第1話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「日曜の夜ぐらいは...」第1話レビュー

「女の子って、オチもない話をよく延々と続けられるよね(笑)」と、男性に言われたことがある。たしかに、私たちは「そういえばさ、こないだこんなことがあってね」「まじかあ、そういうの嫌だよね」「てか、こないだのあれ見た?」「見た見た!いいよねー!」なんて次々と展開していく何気ない会話を楽しめる生き物だ。

そこに、抱腹絶倒なオチや人生が劇的に変わる解決は必要ない。必要なのは、たくさん喋って疲れ切った後に得られる明日への活力なのである。

脚本家の岡田惠和さんはそのことを理解してくれているようだ。同じクールの他のドラマより少し遅めに始まった「日曜の夜ぐらいは...」第1話は、他愛もないおしゃべりができる相手の必要性に気づかせてくれた。

冒頭に映し出されるのは、違う場所で違う暮らしを送る3人の女性たち。とある団地で暮らすサチ(清野菜名)は、車イスの母・邦子(和久井映見)との生活を支えるため、研修の時に店長から受けたパワハラ・セクハラ被害を本社に告発しない代わりに好きなだけシフトを入れる権利を手に入れている。不満は口にしないけれど、邦子の口から何度も飛び出す「ごめんね」の言葉にはどう反応を返していいかわからない。

一方、北関東の田舎ではちくわぶの工場で働く若葉(生見愛瑠)が、暮らす家も勤務先も一緒の祖母・富士子(宮本信子)から「男と金には気をつけろ」と言われていた。多分、集合写真で顔にバッテンがつけられた母親が男と金で失敗したのだろう。富士子との関係性は悪くなさそうだけど、そこにいない母親の存在は2人を苦しめていそうだ。

タクシー運転手である翔子(岸井ゆきの)は楽しそうに仕事をしているが、つい喋りすぎてしまうのが玉に瑕。乗客に嫌な顔をされ、傷ついて帰っても家には誰もおらず、缶チューハイを片手に「つまんねえ人生」とつぶやく。

彼女たちに共通するのは、家と職場をただ往復する毎日を送っているということ。代わり映えがないから、楽しすぎることも悲しすぎることもない。だけど、胸の奥がキュッと痛む瞬間は確かにあって、痛いと打ち明ける相手もおらず一人で耐え忍んでいることだ。

そんな3人がある日、エレキコミックがMCを務めるラジオのリスナー限定のバスツアーで出会う。ドラマの第1話では必ずと言っていいほど用意されている、わかりやすい“変わるきっかけ”。だけど、それを人生を劇的に変えるものとして描かなかったところに本作の魅力が詰まっている。

3人のうち、1人だけ邦子の代理として参加したサチ。最初は1泊2日の旅をなんとなくやり過ごそうとしていた彼女は“おだいりさま”というあだ名をつけられ、容赦無く距離を詰めてくる翔子と、非日常への高揚感から早口で喋りまくる若葉に良い感じで調子を崩されていく。そのうち無意識に旅を楽しみ、笑っている自分の姿を写真で見たサチは目を真っ赤にしてこう言う。

「楽しいのダメなんだけどな。だって、楽しいと。楽しいことあると、キツいから。キツイの耐えられなくなるから」

冒頭で述べたように、友達との楽しい時間は本来活力になるもの。だけど、それは一方でお酒やタバコみたいに中毒性があるもので、耐性がない人からしてみたら、「それを摂取することで一瞬楽になれても、またすぐに摂取できなければ効果が切れてむしろ苦しみが増すのでは」という恐怖を抱いてしまうのかもしれない。

だったら、その甘美な魅力を知らないままでいたかったと考えるサチの気持ちはよく分かる。知ってしまった後でも依存することなく、良い思い出として手放せるのは彼女の強さでもあり、弱さでもあるだろう。キツイ時もキツイと思わないで済むように自分を無の状態で保つことが彼女にとっての生きる術なのだ。

結果、3人はそれぞれの日常に戻っていく。最初と最後で全くと言っていいほど変化がない。こんなドラマ初めてだ。だけど、唯一ちょっと変わったことといえば、サチの「煮詰まった時にはコンビニの一番高いアイスクリームを食べる」という自分なりの処世術を翔子と若葉も実践するようになったこと。

それは他愛もないおしゃべりに似ていて、日々の生活を劇的に変えてはくれないけれど、知らず知らずにうちに2人の活力になっている。多くの場合、月曜日から働く私たちにとって、この日曜ドラマもそういう存在となるだろう。

(文:苫とり子)

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