続・朝ドライフ

SPECIAL

2023年05月18日

「らんまん」寿恵子の気持ちわかる。「草むらになりたい」「いっそ八犬士になりたい」<第34回>

「らんまん」寿恵子の気持ちわかる。「草むらになりたい」「いっそ八犬士になりたい」<第34回>

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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。

「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。

ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第34回を紐解いていく。

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絵物語のように

東大の植物学研究室に出入りを許され、クサ長屋に帰って来た万太郎(神木隆之介)
丈之助(山脇辰哉)はてっきり泣いて帰ってくると思っていたので、予想に反してショックを受けます。

丈之助自身は、地元・尾張、名古屋の神童として東大に入ったものの、そこで実力の差を見せつけられて、悶々とする日々を送っている。それに比べて、万太郎は……とどうにも気持ちが収まらない。でも結果的には「頑張れ!」と万太郎を応援します。

丈之助が思いを吐露しているとき、万太郎の顔はとても真剣。丈之助の悲しみ、辛さをちゃんと受け止めているのでしょう。それだけ難関な狭き門の大学に通えるようになったのだからちゃんとやらなくてはいけないと思っているのでしょう。

丈之助は、割った卵が双子の黄身で喜んだり、賭けに負けて「10銭」と福治(池田鉄洋)に催促されたり。アップダウンの激しさが面白いです。でも、こういうキャラが、決して、悔しさや悲しみをネガティブな方向に向かせないのが『らんまん』のいいところ。誰だって哀しいことや悔しいことがあるけれど、それをむき出しで誰かにぶつけて傷つけたりしない。ちゃんと自分でコントロールする。それが人間の知性の良い使い方だと思います。丈之助も文学で世界をよくしたいと思っている人間だからこそ、そうなのです。
『らんまん』は”知”が世界を救うという物語なのだと思います。知性は心を落ち着かせます。

さて、竹雄(志尊淳)も就職が決まりました。佑一郎(中村蒼)の連れていってくれた洋食店です。「今朝、若が洋装がええ、ええ騒いじょったき」と、万太郎に対抗して自分も洋服を着る仕事を選んだところが微笑ましい。
ふたりで「おかえり」「ただいま」と言葉を交わすのも良い感じです。仲良し。

その頃、寿恵子(浜辺美波)は亡父の形見「八犬伝」を読み進め(音読)、現八と信乃の
戦いのシーンで
「私草むらになりたい。草むらになったふたりを見ていたい」
(寿恵子)

と盛り上がり、さらに「草むらじゃ置いてかれる。いっそ八犬士になりたい」とまで思いつめ、八犬士の印、牡丹の痣を頬に描こうとします。

「草むらになりたい」は、いわゆる腐女子が推しキャラを「壁」になって見守りたいという気持ちと同じ。ただ、寿恵子はそこからさらに発展して「八犬士になりたい」と主体性を持っています。信乃は女装の男性で、八犬士は全員男性。女性だって、見てるだけでなくヒーローになりたいという気持ちの現れは、現代的ですし、朝ドラヒロイン的でもあります。

そこへ万太郎が菓子を買いに来ます。思い出のかる焼きを、両手がふさがっている万太郎に寿恵子が、あーんと食べさせてあげるところで、ふたりはドキドキするという、素朴さが逆に萌えます。

寿恵子が現八、信乃の関係性に萌えているのを見て、万太郎と竹雄の関係に萌えるのかと想像しましたが、八犬士になりたいと考えるひとだと思うと、これは万太郎をはさんで竹雄、寿恵子の三角関係の勃発になりそうで、気が気ではありません。

お母さん・まつ(牧瀬里穂)
「世間っていうのはね 絵物語とは違う、日々つつましく堅実に生きていくものです」
(まつ)
と寿恵子をたしなめます。でも、寿恵子の、絵物語のような冒険の旅への憧れは止めることはできなそうです。

(文:木俣冬)

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