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「日曜の夜ぐらいは...」第3話:不幸合戦よりも幸せ合戦を。サチたちが映し出す現代観


主演に清野菜名、共演に岸井ゆきのと生見愛瑠が名を連ねる連続ドラマ「日曜の夜ぐらいは...」(ABCテレビ/テレビ朝日系)が2023年4月30日よりスタート。脚本家の岡田惠和が、あるラジオ番組がきっかけで出会った女性3人のハートフルな友情物語を紡ぐ。

本記事では、第3話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「日曜の夜ぐらいは...」第3話レビュー


「宝くじがもし当たったら何に使おう」

きっと、誰もが一度は考えたことがあるはず。とりあえず海外に旅行して、家を買うかリフォームするかしたら、ある程度好きなものを買って、あとは貯金?そんな風にどんどん夢が広がって考えるだけで幸せな気分になれる。

一方で、いざ当たったら怖いだろうなとも思う。世間では、「宝くじの高額当選者は不幸になる」という噂がまことしやかに囁かれているからだ。それはまるで、幸せになることが悪いことかのように。


1等の3000万が当たったサチ(清野菜名)も最初はそうだった。バスツアーで出会った翔子(岸井ゆきの)や若葉(生見愛瑠)ともせっかく仲良くなれたのに、後が辛くなるからと連絡さえ交換できなかったサチ。

そういう何か良いことが起きた時、真っ先に「自分の人生にそんな良いこと起きるはずない」と思ってしまう彼女は多くの人が喉から手が出るほど欲している一枚の紙切れを不幸の予告状みたいに思ってしまう。

それぞれ事情は異なれど、今の若い人たちが同じ状況下に置かれたとしたら案外みんなサチのような反応を示すのかもしれない。生まれた時から日本は不景気で、生活が苦しいのは当たり前。SNSで給料への不満を漏らそうものなら、コメント欄で不幸合戦が始まる。

そんな状況では、「みんな同じ」「まだ自分はましな方」と自分自身を納得させて生きていくしかない。それなのに突然幸運が降りかかってきたら、怖くなるのは当然だ。


だけど、サチの場合は「もし宝くじが当たったらみんなで山分け」という翔子や若葉との約束があった。自分の懐に入る金額は3分の1になるけれど、その分、恐怖も減る。

手放した家を買い戻すこともできなければ、嫌な仕事をすぐさま辞めれるわけでも、ホストクラブで豪遊できるわけでもない。それでも手が震えるほどの大金を手に、幸せを掴み取る勇気をサチは2人に分けてもらった。だから、「ありがとう」はなしで。

通帳にお金が振り込まれるまでの間、彼女たちがLINEで「あと何日」とやりとりするシーンが印象深かった。きっと3人に必要だったのはお金ではなく、こうして気持ちを分け合える友人だったのではないか。

自分でもうんざりするほど後ろ向きな性格を、「(現実に)背を向けてないのでちゃんと前向きです。ちゃんとしっかり前を見てるから慎重になったり拒絶したりしてしまうわけで。むしろ、それこそが前向きです。前向きだから、進まないという選択肢もあると思うのです」と変換してくれる友人が。


その証拠に、「絶対に幸せになろう」と誓って解散した3人だったが、以前と変わらぬ現実に打ちのめされそうになる。

邦子(和久井映見)に最新の車椅子を買ってあげるサチ。いつもなら手が出せないちょっと高いお土産を富士子(宮本信子)に買って帰る若葉。それほど欲しくないものを買って罪悪感に襲われる翔子。自分を喜ばせるよりも、誰かを喜ばせる方が得意な3人の性格がよく表れている。その優しさは美徳だが、悲しいかなそこに漬け込もうとする人はいるわけで。

だけど、楽しそうな3人の顔を見るだけで幸せになれるみね(岡山天音)や初めて入ったカフェで思い出し笑いをするサチにつられて笑顔になる賢太(川村壱馬)のような人もいて、世の中捨てたものじゃないなとも思わせてくれる。

自分が幸せになることが誰かの幸せに繋がる。不幸合戦でお互いを支え合うよりもそっちの方がよっぽどいい。

(文:苫とり子)

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