「あなたがしてくれなくても」第8話:拒否されていた側が拒否する側に、もう止められない惹かれ合う心
ハルノ晴による同名コミック(双葉社刊)を原作とする本作は、セックスレスをテーマにした大人の恋愛ドラマ。奈緒と永山瑛太、岩田剛典と田中みな実が演じる2組の夫婦の関係が複雑にもつれていく様を描く。
本記事では、第8話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「あなたがしてくれなくても」第8話レビュー
ついに、妻VS妻。冒頭から、定点カメラを起点に繰り広げられるそれは静かな地獄絵図。
このタイミングで登場する砂時計、控えめに言って粋である。
そんな中、楓(田中みな実)がみち(奈緒)に突きつけた一言。
「あなたさえいなければ、うちはなんの問題もなくうまくいってたのに」
ーーいや、それは違う。これだけは断言できる。
楓が順風満帆と思っていたそのとき、誠(岩田剛典)はどれほど悩んでいたのか。
傍から見ても自分本位にしか生きていなかった楓から飛び出したこの一言には、少し呆れてしまった。
拒否していた側と拒否されていた側。
禁断の二人が交わることで、まるで自分のこれまでの行動すべてを否定されているかのような気分に襲われる楓。だが、これは図星だからこそであり、自身の身勝手さを認めざるを得ない。
案の定、”セックスレス”という言葉を聞いたその瞬間、楓の表情が曇る。
その後の編集長(MEGUMI)からの一言が凄まじかったので、ここに記しておきたい、
「女ってさ、なんで浮気されると相手の女に怒り向けるのかね?旦那とやり直したいんだったらさ、女じゃなくて旦那と向き合えばいいじゃない?」
……おっしゃる通りすぎる。
一方その頃、陽一(永山瑛太)の喫茶店でも地獄絵図が繰り広げられていた。
三島(さとうほなみ)と元不倫相手の奥さんの直接対決。それを見守る元浮気相手。こんなことを言っては何だが、少しばかり滑稽である。
人の痛みを初めて知った三島は、賠償金を支払う覚悟を決め、陽一のもとからも離れることを決意する。
いい女だったな、三島。これからどんどん、幸せになってほしい。
そんな中、自身が浮気していたことに負い目を感じ続けるみち。
「浮気した罰は、一生背負っていくこと。」
華(武田玲奈)よ、毎度名言をありがとうございます。
一つ嘘をつくと、どんどん嘘が増えていく。まさに負の連鎖。
でもここで打ち明けてしまえば、あのときの陽一と同罪だ。背負えないのであれば、浮気なんてしてはならない。
陽一と向き合わなければと思えば思うほどに、心の何処かで誠への想いが募っているみち。
それは誠も同様で、必死に理性を保とうとしていることが見て取れる。
そんな状態で、急遽仕事で夜のオフィスに二人きり。
「これからも、お互いがんばろう?」
交わされる、プラトニックな握手。
この二人は本当に終わってしまったのか。そう思うと、なんだか悲しくなるのは私だけだろうか。
そんな二人の関係性を示唆するように、想い出の砂時計は儚く割れてしまう。
不倫ーー人が踏み行うべき道からはずれること。特に、配偶者でない者との男女関係。
世間一般で見るとよくないことのはずなのに、この二人はそれを歓迎されているような気がしてならない。だってすでに、心が惹かれ合ってしまっているのだから。
それでもお互いに精一杯、精神的に突き放して、それぞれのパートナーのもとへと帰る。
奇しくも同タイミングで、夫婦の歩み寄りを魅せる二組。
それぞれが官能な雰囲気で包まれる中、みちと誠は一つの事実に気づいてしまう。
……できない。陽一と、楓と、できない。
これまで拒否されていた側のみちと誠。そのつらさを嫌ほど知っているはずなのに、身体ではなく心が相手を拒絶していた。
対して陽一と楓は、拒絶されたことにひどくショックを受ける。みちが、誠が、自身のことを拒むはずないーーそう思い込んでいたから尚更だ。
もうこれは、いよいよ後戻りできない。
ただの気の迷い、身体だけの関係であればこんなことにはならなかったはず。
みちと誠、お互いに心を求めている。静かな海が、荒れ狂う前兆が見えた気がした。
最終回間近にして濃くなってくる「昼顔」のようなザワザワ感。
張り詰めた糸がプツンと切れるとき、あの二人が堕ちてしまうのも時間の問題だ。
心なしか、楓と「昼顔」の乃里子(伊藤歩)の影が重なって見えてくる。じわじわと旦那と不倫相手を追い詰めるあの感じ。
いよいよ次週は楓と陽一がエンカウント。この復讐劇、一体どうなってしまうのか。
怖い。この4人の未来を覗き見ることが怖い。
なのにどこかで、みちと誠の関係性を応援している自分がいることがさらに怖い。
(文:桐本 絵梨花)
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