インタビュー

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2023年06月15日

Jホラーの新機軸『忌怪島/きかいじま』出演!川添野愛が語る清水崇監督と西畑大吾ら共演者、そして自身について

Jホラーの新機軸『忌怪島/きかいじま』出演!川添野愛が語る清水崇監督と西畑大吾ら共演者、そして自身について


デビューのきっかけになった青山真治監督との出会い

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──いえいえ、西畑大吾という表現者に対する見方が深まった気がします。で、ここからは川添さんご自身のことを語ってもらおうと思いまして。お芝居を始めたきっかけは、『EUREKA ユリイカ』(00年)や『共喰い』(13年)の青山真治監督との出会いだったそうですね。


川添:私が入った大学の教授に青山さんがいらっしゃって、1年生のときに授業を履修したのが出会いでした。映像演劇学科で学んでいたんですけど、その頃の私は演劇のことしか知らなくて。今にして思うと演劇のことすら分かっていなかったんですけど、映画の知識は皆無だったんです。でも、周りには映像作家志望の人たちが多かったので、映画のことを知っておいたほうがいいんだろうな……くらいの感じで選択したら、ブッ飛んだ人たちばっかりだったっていう(笑)。

企画から映画館で上映するまでを1年間かけて進めていくという特別授業だったんですけど、自分の企画を映画にしたい人ばかりで、殺伐とした空気で授業が進んでいくんですよ。しかも青山さんの映画を狂信的に好きな人が多かったので、ちょっとその輪に入りきれないまま、衣装部として先輩が撮る映画に関わって1年生が終わりました。そんな感じだったので、2年生になったときに青山さんから「チェーホフの『かもめ』を学内で中編の映画にするから、ニーナを演じてくれないか」と言われるとは夢にも思っていなくて。でも、私が気づかないところで、きっと見ていてくださったんでしょうね。

で、その流れで自分のデビュー作になった『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』(15年/WOWOW)のお話もいただいたんですけど、「ちょ、ちょっと待ってくださいッ。これは何か……大きな渦に巻き込まれるのでは!?」って、いったん冷静に考えることにしたんです。

──確かに、人生を左右する選択ですよね。

川添:『贖罪〜』のお話も、わりと軽い感じで「ドラマ撮るんだけど、2〜3日空いてないか?  手伝ってほしいんだ」みたいな言われ方だったんですよ。「は、はい、空けるのは大丈夫ですけど……」みたいな返事をしたんですけど、いざ決まってみたら予想をはるかに超えることになっていて。ドラマのファーストシーンでもあったんですけど、初めての撮影が三上博史さんと吉田鋼太郎さんと私しかいないっていう状況で。でも、あまりに異次元すぎて、逆に緊張することすら忘れちゃっていました。「わっ、お2人とも素敵〜!」なんて見とれたりして(笑)。まあ、まだ19歳でしたし……青かったですね〜。

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──三上さんと鋼太郎さんとご一緒するシーンが人生の初現場というのも、よく考えるとスゴイことですよね。

川添:私、結構「初の○○」という状況でスゴい方々とご一緒になることが多いんです。初舞台の『セールスマンの死』(18年)という作品では風間杜夫さんが主演で、奥様役が片平なぎささんで、周りをかためる俳優の皆様もそうそうたる顔ぶれでいらっしゃって──。稽古場の段階でレベルの違いに打ちのめされたんですけど、身のほどを知るっていう意味では良い経験をさせてもらっているな、と感じてもいます。

──いずれにしても、青山監督との出会いで人生が変わったと言えそうですね。なお、川添さんが知っている青山さんは、どんな人ですか?

川添:恩師でもあるんですけど、みんなで飲みに行って酔ったりすると、どうしようもない子どもみたいになっちゃったりもして。そうなると教え子である私たちが面倒を見なくちゃならなくて……そのうち親子みたいな感覚に変わっていきました。奥様のとよた真帆さんにもすごくかわいがっていただいているので、本当に娘みたいな気持ちが強くて。だから、青山さんのことは“お父ちゃん”って呼ぶのが一番しっくりくるんですよね(笑)。青山さんご自身も「確かに、野愛にそう呼ばれるぶんには違和感がないな」と、おっしゃってくださったので、“監督!”という意識は薄いかもしれません。

舞台と映像、それぞれの違い

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──願わくは、青山監督の次作に出ている川添野愛を観たかったという思いもありますが(※青山監督は22年3月に逝去)……俳優としての川添さんの土台となる作品を挙げるとすると、何になるんでしょうか?


川添:何でしょうね、難しいな……。でも毎回、相当鍛えられているなと体感するのは舞台の作品ですね。映像の作品がそうじゃない、というわけではないんですけど、舞台はノンストップでお芝居をやり切らなくちゃならないし、お客さんの前で上演するから緊張感とスリルがすさまじいんです。しかも、ご覧になる方1人ひとりの視点が違うから、ずっと気を抜けないですし。

本番の2日前ぐらいが一番ナーバスになるんですけど、全公演が終わってしまうと、ものすごく寂しい気持ちになるんですよ。だから、どの作品もどの役も今でも大好きですし、スタッフの方々や役者のみなさんのこともずっと忘れられない──という残り方をするところでも、舞台が自分の土台になっているんじゃないかなと思います。

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──ちなみに、映像作品の現場ではどんな感覚を得られるんでしょう?

川添:新しい作品とのご縁をいただくたびに、役として生きられる(=出演する)時間が長くなっているので、そこは役者として本当にありがたいなと感じています。少しでも長く役として生きられるほど、演じる人物のことを理解できるようになりますし、深掘りもしていけるので。だから、シリーズものの1話にのみ客演する役や、シーンが限定されているほうが難しいかもしれないですね、お芝居って。でも、年々1つの役を生きる時間が延びているので、もっともっと長くしていけたらと思っています。

──ちなみに、『忌怪島/きかいじま』で川添さんが役目を終えた……すなわりクランクアップしたのは、どのシーンだったんですか?

川添:水中のシーンをプールでまとめて撮ったので、西畑くんと(イマジョ役の祷)キララちゃんと私の3人、同じ日にクランクアップしました。で、しっかりやりきってプールから上がったんですけど、何とな〜くイヤな予感がしたんですよ。案の定、花束を渡しにきた清水監督にプールに落とされるっていう。何でなのか分からないんですけど、『忌怪島/きかいじま』の現場では完全にバラエティー班的ポジションでした。しかもメイキングのカメラが、その瞬間をバッチリ撮っていて! 絶対、ソフト化された時に特典映像に入るヤツじゃんって(笑)。まあ、現場のみなさんが楽しんでくださったのであれば、全然いいんですけどね!

ありのままの自分を知って、素敵な人でありたい

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──知られざるご自身と出会えたという解釈もできそうですが……(笑)、俳優として今後、どう歩んでいきたいですか?


川添:そうですね……役者は自分自身が資本なので、結果的に役を通して川添野愛そのものが浮き彫りになるもの、と私は捉えていて。そう考えると、「役者として」というよりも、人として素敵でありたいですし、尊敬する人たちのように生きていきたいという思いがあります。と同時に、できないことがあったり、ダメなところも好きでありたいと言いますか……そういう部分もふくめて自分というものが形成されていることを受け入れていきたいですね。

ありのままの自分を知ることで、舞台の上やカメラの前に立ったとき、あるいはどなたかとお会いしたときに、自分の意識を超えたところで人間性がちゃんとにじみ出るんじゃないかなって。今後、自分がどういう選択をしていくのかはまだ想像がつかないんですけど、その瞬間ごとに自分に対して正直でありたいし、それが面白いことにつながっていくような道を歩んでいけたら、きっと幸せに感じられるんじゃないかな、と──。

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──余談になるかもしれませんが、他者の人生を多々生きることによって自分自身は何者か明確になるのか、あるいは反対なのか……川添さんの場合は、いかがですか?

川添:そこに対してはあんまり意識していないというか、「自分自身に戻ろう」みたいなことを考えることがないんですよね。そこを素で考え始めても、永遠に答えの出ない問いと向き合っているような感覚になってしまいそうなので──。

ただ、マネージャーさんからは「あなた結構、役を引きずる人よ」と言われたことがあります。まったく自覚がなかったので、「そうなのか……」って思ったりもしたんですけど、確かに作品のトーンや役の感じに引っ張られているような感覚もあって。葵を演じていたときで言うと、ふだんの自分以上に話し方が遅かったですね。と言っても、そこは葵のキャラクターに寄せてはいたんですけど、クランクアップしてから友達と久しぶりに会ったら、「地面から3センチぐらい浮いた?」って言われてしまいました(笑)。

でも、どんなに抗っても役には自分が出ますし、思いもよらないような表情をしていたりもする。「そうか、これも自分なんだ」って気づかされることが、意外と多かったりもするんですよね。逆に言うと、自分を包み隠さず見せられるような芝居ができて初めて、現場で信頼を得られるんじゃないかなって。それができなければ、役者としてスタートラインにも立てないわけで……ありのままをさらけ出せる人間であり続けたいです。

(ヘアメイク=光倉カオル<dynamic>/スタイリスト=土田寛也/撮影=渡会春加/取材・文=平田真人)

 

Profile

川添野愛(かわぞえ・のあ)
俳優

1995年2月5日生まれ、東京都出身。幼少期より杉並児童合唱団に12年間在籍。
2015年多摩美術大学在学中に、WOWOW「贖罪の奏鳴曲」(青山真治監督)で女優デビュー。
主な出演作に、「パパはわるものチャンピオン」(藤村亨平監督)、「パーフェクトワールド 君といる奇跡」(柴山健次監督)、「ミュジコフィリア」(監督:谷口正晃)、ドラマ「恋愛時代」(YTV)、「パフェちっく!」(FOD)、「限界団地」(THK)、「his~恋するつもりなんてなかった~」(NBN)、舞台「セールスマンの死」(演出:長塚圭史)、「春のめざめ」(演出:白井晃)、「タイトル、拒絶」(演出:山田佳奈)など。
現在、丸源ラーメン「感動肉そば!」篇のCMに出演中。
6月23日(金)より、池袋シネマ・ロサにて1週間限定上映「アトのセカイ」(天野裕充監督)と今秋公開予定「緑のざわめき -Saga Saga-」(夏都愛未監督)に出演。

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