海外ドラマ

REGULAR

2023年09月01日

【絶賛レビュー】実写ドラマ『ONE PIECE』は「もう知っている話」ではない、「原作を再構築した新たな物語」だった

【絶賛レビュー】実写ドラマ『ONE PIECE』は「もう知っている話」ではない、「原作を再構築した新たな物語」だった



2023年8月31日(木)より、Netflixで実写ドラマ版『ONE PIECE(ワンピース)』が配信された。全8話を一気観した筆者が、まずは結論を告げておこう。

間違いなく「漫画の実写化」の歴史を変える出来栄えだった。本当に……本当に素晴らしい作品だった!

吹き替えと字幕、どちらも超絶おすすめできる理由

内容の前に、本作を字幕(英語音声)と吹き替えのどちらで観るかを迷っている方もいるだろうから、その答えもはっきりと言っておこう。結論から言えば両方とも超絶おすすめ。どちらで観てもほぼストレスなく楽しめるだろうし、原作漫画およびアニメ版のファンであればさらなる感動があることも間違いない。

Netflixシリーズ「ONE PIECE」8月31日(木)世界独占配信 / (C)尾田栄一郎/集英社

字幕版では、俳優たち本人の(しかも聞き取りやすい)英語での会話が、元々は日本で作られた『ONE PIECE』の世界に違和感なくマッチしているのが嬉しいし、何より「生」の演技が楽しめる。

特にルフィ役のイニャキ・ゴドイによる朗らかさが伝わる声質と、ルフィらしいややクレイジーですらある猪突猛進ぶりがわかる、時には抑えられない怒りを打ち出した演技に引き込まれる。新田真剣佑の流暢かつカッコいい発音や言い回しにも聞き入ってほしい。



吹き替え版では、アニメ版のオリジナルキャストが再登板していることが目玉。

正直に申し上げると、ルフィ役の田中真弓はイニャキ・ゴドイの元々の声よりもかなり高いため初めは少し違和感を覚えたのだが、その後はアニメ版とはやや異なる、実写ならではの落ち着いたトーンの演技をされていることに感動した。ゾロ役の中井和哉やナミ役も岡村明美もまた、良い意味でアニメそのままではない、そちらよりもややテンションが低めで冷静な実写のキャラに合わせた抑えた声の演技になっていて、その「チューニング」にも感心したのだ。



「実写で信じられる世界」の構築や「実写で再現しすぎない」線引きも見事

なぜ実写ドラマ版『ONE PIECE』にここまでの感動があるのか。もちろん、Netflix史上どころかドラマ全般でもトップクラスの莫大な制作費がかけられたこと、そしてスタッフとキャストの妥協のない仕事の数々も大きな理由だ。

美術やセットは「本当にこの世界がある」と「信じられる」クオリティで、特に街や帆船のスケール感に圧倒される。俳優たちおよび吹き替え版の声優陣は原作漫画のキャラクターの魅力を生かしつつ、前述した通り実写でも違和感のないようにチューニングしながら、作品への大きな愛情と熱量を持って演じている印象だからこそ、実写でも彼らのことが大好きになれた。

Netflixシリーズ「ONE PIECE」8月31日(木)世界独占配信 / (C)尾田栄一郎/集英社

キャラクターの髪色や衣装は実写ではやや極端に思える部分もあるものの、「ウソップの鼻を高くしない」「サンジの眉毛をぐるぐるさせない」などの「実写で再現しすぎない」線引きも良かったと思う。ガープやミホークなどの渋い魅力を放つキャラや、“電伝虫”はヌメっとした質感も含めて完璧な再現度だ。

Netflixシリーズ「ONE PIECE」8月31日(木)世界独占配信 / (C)尾田栄一郎/集英社

そして、予告では一部から不安の声もあがっていたアクションも、工夫に工夫が凝らされていて見応え抜群。アクロバティックな演者の動きに合わせてカメラも派手に動いており、かつ過剰さはなく観やすい。

原作とは異なる、キャラクターそれぞれの「共闘」のアイデアは原作ファンこそが喜べるだろう。特にゾロ役の新田真剣佑は鍛え上げられた肉体とから繰り出されるしなやかな動きに惚れ惚れできる。演出も凝っていて、特にスプリットスクリーン(分割した画面)を利用した編集はテンポもよく、良い意味で漫画的なケレン味もあって楽しかった。

Netflixシリーズ「ONE PIECE」8月31日(木)世界独占配信 / (C)尾田栄一郎/集英社

ちなみに、予告編でわかる通り悪役のバギーやアーロンの見た目がかなり怖かったり、なかなかにホラー的な演出もあったりする。原作では悪人であっても「殺す」ことを意図的に避けている場面もあったが、今回は殺人が目にみえる形ではっきり描かれていたりもする

これは海賊たちが跋扈する世界の残酷さ、その生々しさを実写でこそ示すことに成功しているとも言えるので欠点ではないのだが、あまりに小さな子の鑑賞には注意したほうがいいかもしれない。

Netflixシリーズ「ONE PIECE」8月31日(木)世界独占配信 / (C)尾田栄一郎/集英社

再構築された物語の感動

これらの時点で、実写化そのものに懐疑的な原作ファンにこそおすすめできるのだが、真の感動の理由は、予告編ではまったく想像し得なかったことにあった。

それは「再構築された物語」である。今回の実写ドラマのオリジナル、または原作から「拡張」された場面が多く、良い意味で原作をそのまま再現することを完全に避けていたのだ。

Netflixシリーズ「ONE PIECE」8月31日(木)世界独占配信 / (C)尾田栄一郎/集英社

人気作の映像化で「原作そのまま」はファンが特に求めることだろうし、もちろんそのアプローチで絶賛されている作品も数多くある。映画であれば2時間弱の時間に収めるためにどうしたって取捨選択が必要になるが、今回はそれよりも時間に融通の効く連続ドラマなので、ただひたすらに原作の物語をトレースする、それでこそファンの期待に応えようとする方向性にもできたはずなのだ。

Netflixシリーズ「ONE PIECE」8月31日(木)世界独占配信 / (C)尾田栄一郎/集英社

だが、このドラマ版『ONE PIECE』の脚本はそうしなかった。オープニングシーンから「今だったらこう語り直せる」という気概に溢れる原作からのプラスアルファがあるし、それ以降も原作とは異なる展開が次々に連続する。

原作を読んだ人にとって、まるで「IF」ストーリーを観たような驚きと感動があり、それでいて原作で重要なポイントはしっかり踏まえており、かつキャラクターの心理がより深く伝わるような場面もあったのだ。

Netflixシリーズ「ONE PIECE」8月31日(木)世界独占配信 / (C)尾田栄一郎/集英社

後述もするが、原作から投げかけられていた「疑問」や「矛盾」に答えようとする場面があったり、何よりドラマとして先が気になる新たな物語の「軸」を作り出したことにも感動した。戦いのシチュエーションが原作から変わっている場面もあるも、それもまた新鮮なハラハラドキドキのアクションやサスペンスに繋がっていたりもした。

Netflixシリーズ「ONE PIECE」8月31日(木)世界独占配信 / (C)尾田栄一郎/集英社

そのおかげで、実写ドラマ版『ONE PIECE』は「もう漫画で読んだ話」ではなかった。「原作を再構築した新たな物語の続きが気になってしょうがなくなる」とは思いもしなかったのだ。特に、2話の中盤の演出と、3話のラストのセリフにはシビれるものがあった。

もちろん、誰が観ても文句が出ないとは言わないし、個人的にも重箱の隅をつつく程度の不満がないわけではない。だが、思わず拍手をしてしまうほどの感動と興奮がいくつもあった。

物語はイチから語り直されているので『ONE PIECE』を全く知らない人でも楽しめるし、ファンこそが感動できる要素がたっぷりあるのだ。これ以上の予備知識は、もうなくてもいいだろう。
Netflixシリーズ「ONE PIECE」8月31日(木)世界独占配信 / (C)尾田栄一郎/集英社

さて、ここからは軽微なネタバレに触れつつ、だが決定的なサプライズは伏せる形で、筆者個人が感心&感動した原作からの改変ポイントについて触れておこう。それらをまったく知らないまま観たい方は、先に本編をご覧になってほしい。

▶︎Netflixで「ONE PIECE」を観る

※以降は、実写ドラマ版『ONE PIECE』の核心的なサプライズへの言及は避けつつ、軽微なネタバレと言える改変ポイントに触れています。未鑑賞の方はご注意ください。

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!