「ブギウギ」賃金削減、人員削減に抗う、”桃色争議”のはじまり<第14回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。小さい頃から歌って踊るのが大好き、後に戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第14回を紐解いていく。
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一時金で懐柔されそうに
ラインダンスでみんなの気持ちが楽しく、ひとつになりかけたとき、不況で、突然の賃金や人員の削減が行われました。稽古が厳しく辞めるーと言って引き止められていた新人ちゃんたちも解雇になってしまいます。自主的に辞めるのと解雇と比べたら、自分から辞めたほうがまだ自尊心が傷つかなくてよかった気がします。解雇はきつい。
何度も辞める辞める言っていた桜庭和希(片山友希)はもともと経済的に苦しかったので、賃金削減されてはやっていけないため、辞めようと決意します。
この状況に立ち上がったのは大和礼子(蒼井優)。「会社側の一方的な通告を必ず撤回させて辞めていった人を戻します」と、これをきっかけに待遇改善の嘆願書を提出すると決意しました。
礼子が語るとき、「強く逞しく泥臭く艶やかに」のスローガンが大きく映りました。礼子は「強く逞しい」。
団員たちが立ち上がったことが「桃色争議」として新聞に載ります。
桃色争議って恥ずかしいと思うスズ子(趣里)。
「桃」だけど実質「アカ」ではないのかと心配する梅吉(柳葉敏郎)。アカとは共産主義のことです。この頃、人民に平等に行き渡らせるという考え方は遠ざけられていて、熱心な活動をする人は警察に取り締まられていました。
第11回のレビューで、昭和8年に起こった出来事として、”「蟹工船」で有名な労働者について書くプロレタリア作家・小林多喜二が特高に検挙され、拷問を受け亡くなった”ことを例にあげましたが、そういう時代なのです。やりすぎると、小林多喜二先生のようになってしまう……。市民がおそれを成すのも無理はありません。
ある日、社員がスズ子の家に、あやしい男が現れます。まさか、警察? と思ったら、梅丸の社員で。一時金を出すと言うのですが、それによって争議活動をやめるようにという条件つきだったため、スズ子はきっぱり断ります。
なかには股野(森永悠希)のように一時金に目がくらんだ人もいて……。こうやって経営者たちは労働者の団結を崩し、思い通りにしようとするのです。
一時金を出す余裕があるなら、みんなに分配すればいいという憤りには、ぶんぶん、首を縦に振りたい気持ちでした。
昭和初期、100年近い前の話ですが、なんだか今の時分にも似ている気がしませんか。庶民の訴えはちっとも届かず、たまに一部に一時金が出され、根本的な制度はなにも変わらない。
礼子はついにストライキを決意。対して、橘アオイ(翼和希)は公演を楽しみにしているお客様のためにストはしたくないと主張します。
自分たちや、これから舞台をやりたい人たちのためと、お客様のため。どちらの考えも間違いではありません。だからこそ悩ましい。
(文:木俣冬)
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