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おしゃれ“だけじゃない”魅力がぎっしり!「パリが舞台の映画」5選


ファッションの先端をゆく情報発信地・パリ。凱旋門やエッフェル塔などの有名な観光スポットに限らずちょっとした街角の風景すら「絵」になるため、これまで世界各国の映画の舞台として幾度となく描かれてきた。

10月25日にはパリ市内を1台のタクシーが巡るヒューマンドラマ『パリタクシー』のDVD発売&デジタル配信がスタート。今年4月に公開されたばかりの作品で、91分と比較的短い上映時間ながら意外なほど濃密でパリの街と密接につながったドラマチックな展開が待ち受けている。

今回はそんな『パリタクシー』を含め、「パリを舞台にした映画」5作品をご紹介していこう。

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1:『パリタクシー』

■パリの日常風景とは裏腹に“実は壮絶”な映画

© 2022 - UNE HIRONDELLE PRODUCTIONS, PATHE FILMS, ARTÉMIS PRODUCTIONS, TF1 FILMS PRODUCTION

パリの街中を流すタクシードライバー・シャルルと、彼の車に乗りこみ各所を回ってほしいという年老いた女性・マドレーヌ。予告編に映るパリの街並みは美しく、ふたりのやり取りが微笑ましさを感じさせてくれる。

予告編を見た筆者は「さぞハートウォーミングな物語が展開するのだろう」と鑑賞を決め、実際に公開直後の劇場に足を運んだのだが──。



これほど鑑賞前と後で感情がごちゃごちゃになった映画は久しぶりかもしれない。ハートウォーミングどころか、むしろ人生ベリーハードモードのマドレーヌがたどる人生の旅路。タクシーの中から、或いは外から見つめる情景は走馬灯のようにも思える。誰しも風景や特定の建物とセットになった「忘れられない記憶」はないだろうか。

少し道が違えば経験することはなかったかもしれない人生の苦難。理不尽な暴力を振るわれながらも必死に耐え抜いた生活を思い返すマドレーヌと、彼女の話を聞きながら少しずつ心に変化が起きていくシャルルとの会話にどこか安堵する。

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シャルルを好演したのはコメディアンのダニー・ブーン。そしてマドレーヌは歌手・俳優にしてエイズ撲滅運動や尊厳死法制化活動などに参画するリーヌ・ルノー。タクシーがたどるパリの街並みとマドレーヌの旅の終わりを、その目で見届けてほしい。

▶︎『パリタクシー』を観る

2:『アメリ』

■フランスで社会現象を巻き起こし日本でも大ヒット!

© 2001 UGC IMAGES-TAPIOCA FILM-FRANCE 3 CINEMA-MMC INDEPENDENT-Tous droits reserves

オドレイ・トトゥ演じる主人公・アメリをピックアップしたポスタービジュアルの段階で、物語を知らずとも不思議と目を引き寄せられる本作。本国フランスでアメリの格好を真似る女性が相次ぎ、日本でもミニシアター公開作ながら興収16億円ものヒットを記録することになった。

当初日本では限定公開だったため劇場に多くの観客が詰めかけ、メディアで紹介される様子が記憶に残っている映画ファンは多いかもしれない。

アメリは厳格な両親のもとに生まれ、同世代の子供たちと関わることなく育てられたためコミュニケーションに疎いキャラクター。ひょんなことから「誰かを幸せにする喜び」を知った彼女は、やがて自身の恋心と向き合うようになる。

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時には暴走して突拍子もない行動に出ることもあるが、どんな姿も彼女の存在がキュートに見えるのは常に純粋な瞳を輝かせるトトゥの魅力によるところが大きい。

パリ・モンマルトルを舞台にした本作にはサクレ・クール寺院やパリ東駅などが撮影地に選ばれており、それらのスポットが日常の一部として画面を満たす。



ジャン=ピエール・ジュネ監督らしい構図やライティング、編集のリズムも心地よく、『アメリ』とは観るだけで幸せな気分を味わえる稀有な作品なのだ。11月17日(金)からはデジタルリマスター版の全国公開がスタートするので、未見の方は要チェック。

ところで話は変わってしまうが、『エイリアン』を監督した人物はのちに大ヒット作を生むというジンクスをご存知だろうか。

1作目のリドリー・スコットは『ブレードランナー』、2作目のジェームズ・キャメロンは『ターミネーター2』、3作目のデヴィッド・フィンチャーは『セブン』が大成功。

そして『エイリアン4』を監督したジュネも『アメリ』のヒットでジンクスを守ったことになる。

▶︎『アメリ』を観る

3:『ビフォア・サンセット』

■“その後”のふたりを描いた大人のラブストーリー



まず先に紹介したいのが、旅の途中で出会った男女(ジェシーとセリーヌ)の物語を描いた1995年の映画『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』。リチャード・リンクレイターが監督を務めイーサン・ホークとジュリー・デルピーが共演したこの作品は、ふたりが一夜を共にしながらも半年後の再会を約束するかたちで幕を下ろした。

(C)2004 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

それから9年ぶりの続編として公開された『ビフォア・サンセット』でもリンクレイター×ホーク×デルピーが顔を揃えており、現実と同じように劇中でも“あれから”9年の歳月が流れていた。

本作の序盤で語られるが、結論から言えばふたりの半年後の約束は叶わなかった。しかし今回ふたりはパリで再会を果たし、堰を切ったようにこれまでの状況を語り合う。



そんなふたりをカメラはひたすら追い続け、物語もふたりのウィットに富んだやり取りにほぼ終始しているのが特徴だ。パリの名所ではなく街角の書店から路地へ、遊覧船へ、そして住宅街へと移動しつつ、「劇的な何か」が起こるわけでもない。

セリーヌはこれまでの恋愛に傷心しており、ジェシーも既に妻子持ち。徐々にさらけ出されていくふたりの本心を知れば、誰もが「もし“あの時”の約束が叶っていたら」と考えてしまうはず。

それでもパリの日常的な光景はふたりを静かに見守り、観る者の手を優しく引きながら終幕へと導いていく

▶︎『ビフォア・サンセット』を観る

4:『タイピスト!』

■恋×スポ根×タイピング!

(C)2012–copyright: Les Productions du Tresor–France 3 Cinema-France 2 CinEma-Mars Films-Wild Bunch-Panache Productions-La Cie Cinematographique-RTBF(Television belge) (C)Photos-Jair Sfez.

普段からパソコンを使っている人にはお馴染みのタイピング。そのスピードが仕事の効率化につながることもあり、早打ちやブラインドタッチを身につけている人は多いだろう。

そんなタイピングを「競技」として描いた本作は、前述の『アメリ』にも負けないくらいキュートでお洒落な作品でもある。物語は1950年代のフランスを舞台にしており、現代のキーボードとは異なるタイプライターの打鍵音が心地良い。

主人公ローズ(デボラ・フランソワ)は父が決めた縁談から逃げるように田舎を離れ、保険代理店を営むルイ(ロマン・デュリス)の秘書として雇われることに。ところがローズはどうにも天然気質で、わずか1週間で三下半をつきつけられてしまう。



クビを回避する条件としてルイが出したのはタイピング大会での優勝。無茶苦茶とも思えるがルイはローズの早打ち能力を買っており、やがて二人三脚での特訓が始まる。

体力作りも含めたトレーニングや世界大会に向けた展開は、意外なほどスポ根ムービーの様相(実際クライマックスの高揚感が素晴らしい)。同時にローズとルイの関係にも変化が現れるため、恋愛映画としてもふたりを見守りたくなるはず。

フランスの地方からパリへ、そしてアメリカへと舞台が移るためパリが映りっぱなしというわけではないが、オードリー・ヘプバーンを彷彿とさせるローズのファッションや色鮮やかな美術も必見だ。

▶︎『タイピスト!』を観る

5:『ルー、パリで生まれた猫』

■ただの「ねこちゅわんかわいいね」映画にあらず

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▶︎『ルー、パリで生まれた猫』画像を全て見る

9月29日に上映が始まり、その後も全国順次公開が続いている本作。ポスタービジュアルやキービジュアルに必ずといっていいほどソー・キュートな猫「ルー」の姿があり、予告編でもその愛らしい立ち居振る舞いが映し出されている。

かくいう筆者も愛猫家のひとりで、冒頭から猫が喉をゴロゴロ鳴らす音が耳に飛び込んできて「最&高」と身悶えしたものだった。



とはいうものの、この映画はかわいいルーの姿をただ堪能して終わる作品ではない。むしろ愛猫家にとっては肝が冷える展開の数々が待ち受けており、猫を飼っている人なら鑑賞後は普段の生活に少なからず「疑問」を覚えるはず。自由気ままな猫を家に閉じこめていていいのか。もし外へ出歩けるようにしたとして、帰ってきてくれるのか。

「動物を飼う」ことは、常に自分自身のエゴと向き合うということなのかもしれない。少しだけ核心に触れると、衰弱した「ペット」を前に無理に生きながらえさせるのか、それとも楽にしてやるべきか選択を迫られるシーンがある。


ルーの飼い主であり、両親の離婚問題もあってルーを心の拠り所にしていた少女・クレムにとっては酷な選択かもしれない。その先にどのような結末が待ち構えていようとも、動物映画にありがちな「いい話」で終わらないテーマが大きな余韻を残す。

まとめ

パリを舞台にした作品は、他にもウディ・アレン監督作の『ミッドナイト・イン・パリ』やユアン・マクレガー&ニコール・キッドマンが共演した『ムーラン・ルージュ』など挙げ出したらキリがない。日本映画でも『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が記憶に新しいところだ。

「パリに行ってみたい」「また行きたい」という人は、まずは劇場や配信で“パリ旅行の気分”を味わってみてはいかがだろう。

(文:葦見川和哉)

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