「ブギウギ」スズ子があまりに初心過ぎないだろうか<第55回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第55回を紐解いていく。
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恋と戦争
弟のように思ってたが、いつの間にか……。スズ子(趣里)、はじめての本格的な恋。
松永(新納慎也)以来の、ときめき。しかも、今回は初めて相手からはっきり告白されたのですから、まっしぐらになりそうなところ、どうもエンジンがかかりません。いろいろハードルがあるのです。
昭和18年、10月、戦況は厳しくなる一方で、学徒出陣。ついに20歳以上の文化系学生まで動員することになりました。
チズ(ふせえり)は、スズ子のことを好きな愛助(水上恒司)のことを心配します。
当然、スズ子も心配です。
五木(村上新悟)は愛助の母であり、村山興業の社長・トミがこわいから、愛助と関わらないでほしいとスズ子に懸命に頼みます。それにしても五木はなぜ「〜〜よ」って女性ぽい語尾なのか。
スズ子はまた歌の調子が悪くなります。スズ子は感情に素直になれないと声が出なくなってしまうようですね。
悩んで、おでん屋で、小夜(富田望生)に相談しますが、「夢を語る男は信用できねえ」とばっさり。確かにスズ子の父・梅吉(柳葉敏郎)もそんな感じですし……。
小夜はこう見えて、苦労人。男に言い寄られた経験は何回もあって、たいていその場かぎり、いつもだまされてきたと言います。あっけらかんと話しますが、たぶん、いやな目にたくさん遭ってきたのでしょう。
小夜に反対されても、スズ子の心は止まりません。学徒出陣の新聞見て、愛助も戦地に行くと思ったら胸がきゅうっとなった、と気持ちは揺れています。そりゃあ、弟・六郎(黒崎煌代)が亡くなっているのですから、心配は大きいことでしょう。いや、もっと、戦争に対して過敏になってもいいくらいなのでは……。
そもそも、三十代で、それなりのスターで、だからといって箱入り娘のように守られている感じでもないのに、こんなに初心な感じでいられるものでしょうか。なんかもうちょっとちゃきちゃき陽気な大人でも良いような。前のほうがもっとちゃきちゃきしていたような気もします。
初心で良識あるお嬢様のようなスズ子が悩んでいると、伝蔵(坂田聡)は「浮ついた話するな」「へんな歌、歌ってるくせにつまらないこと気にしやがってよ」と叱ります。彼は戦争で、屋台が続けられなくなりそうで気に病んでいるのです。
とか言いながら、「大事なのはおめえの気持ちだろ」といいこと言ってスズ子の背中を押すのが伝蔵らしい。「なかなかいい目をしていた」と愛助を褒めますが、そのあとの「若いときの俺とそっくりだ」は、スズ子も小夜も完全スルーでした。
下宿の夜の窓辺にもたれたスズ子は、すっかり恋する顔になっています。
翌朝、決心して、愛助の部屋を訪問すると、坂口(黒田有)が来ていて、ついに周りから攻めるのを諦め、愛助に直接話をしていました。学徒出陣を例に出し、愛助の心を揺さぶります。
坂口は、スズ子が手練れで、愛助をたぶらかしている、ええかげんな人、愛助を利用している、などという偏見の数々を聞いて、我慢ならずに「ええ加減にし」と部屋に入りーー。
世間から見たら、スズ子はやっぱり、坂口のような印象を持つけれど、本当のスズ子は、こんなに純粋で少女のような人だったということなのでしょう。
水上さんは、公開中の映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」では、特攻隊員役で、凛々しさを振りまいています。この映画のヒロインは「舞いあがれ!」のヒロインだった福原遥さんです。
カラダが丈夫な役も丈夫でない役も、水上さんは常に、真っ正直な人物が似合う俳優です。
そして、黒田さんの低音からしっかり発される大阪弁は、ある種の大阪弁の理想形という感じで安心します。
(文:木俣冬)
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