「ブギウギ」病気の自覚があるのに、キスしちゃう愛助の無自覚<第60回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第60回を紐解いていく。
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トミ、空襲、厠、キス
愛助(水上恒司)がこっそりやっていることなど、トミ(小雪)にはお見通しでした。大阪から東京にやって来て、愛助をたしなめます。
愛助が反発するので、トミはついに、スズ子(趣里)と直接会うことに。
が、トミは、二言三言、言葉を交わしたあと、「あとはようふたりで話しなはれ」と言って去っていきます。
愛助は、交際を認めてくれたと思いますが、スズ子にはわかりました。
きっぱり別れろ、という意味であることが。
ふるまいも見た目も少女のようなスズ子ですが、芸能生活が長いだけはあり、トミが暗に匂わせた厳しさに気づきます。ここで、ふたりで、勘違いしていたら完全にバカップルですからホッとしました。
それでも愛助はナットクできず、「僕は今この瞬間、福来さんが好きなんです。交際したいんです」と口角泡を飛ばし、「ぎょうさんつば飛びましたがな」とスズ子は笑います。
「つば」という生々しい描写のあとのふたりは、夕暮れの愛助の部屋の片隅で寄り添います。かいらしいカップルです。
結局、山下(近藤芳正)がマネージャーになる件は、トミによって白紙に。山下は何しに出てきたのか。近藤さんの無駄遣いではないのか。いや、でも近藤さんがキャスティングされているということは、きっとまた出て来てくれるに違いありません。
昭和19年の暮れになると、東京は敵機襲来に怯えるようになりました。
でも、どんなに大変なときでも、生理現象には勝てません。
トイレにこもったスズ子を急かす愛助はどさくさのなかで、思わず「スズ子」と呼び捨てにします。そして出てきたスズ子をお姫様抱っこして、避難に走る愛助。
浪漫もへったくれもありませんが、ストレートにロマンチックに描くのが恥ずかしいのかも。
幸い空襲警報はすぐに解除され、部屋に戻ったふたりは、厠話で大笑い。
スズ子は「スズ子と呼んで」とねだり、その流れで、キスに至ります。
厠、笑いで、完璧にリラックスしたなかで、ふたりは幸せの絶頂に浸ります。
天にも登る気持ちというはこのことでしょう。
ところが、愛助が咳をして、血を吐きました。
15分のなかで、上がったり下がったり、高低差が激しい。
アトラクションに乗っている気分です。でもそれは最新鋭のアトラクションではなく、浅草花やしき的な素朴な感じであることも、「ブギウギ」らしいところです。
予告によってそれが「結核」の兆しであることがわかってしまいました。心配!
愛助の健康状態が気になりますが、彼のつばを思い切り浴びたり、キスしたり、スズ子にも感染するのではないかと見てるほうは気が気ではありません。
愛助は、自分の体調が良くないにもかかわらず(前から咳していたし)、スズ子にうつすことは心配しないのだなあと。ジブリの「風立ちぬ」の場合、結核のヒロインはうつすことを心配して、主人公が気にしないという情熱を見せました。愛助は若さも手伝い、健康のことを忘れてしまうほどスズ子に夢中なのでしょう。
【朝ドラ辞典2.0 トイレ(といれ)】滅多にないが、ごくたまに登場する生活にはなくてならないもの。呼び方は、お便所、お手洗い、厠など、その都度違う。「梅ちゃん先生」(12年度前期)ではヒロイン梅子(堀北真希)はたびたび、トイレに行きたくなる描写があった。第7回では、梅子がたくさん食べすぎてお腹が痛くなって、お便所に立つ。第8回では、田舎に買い出しに行く列車のなかでトイレに行きたくなるという連続描写。第73回では、お父さん(高橋克実)がトイレにこもり、梅子が「お手洗いに入りたい」と困る。
「おひさま」(11年度前期)第8回では、ヒロイン陽子(井上真央)と育子(満島ひかり)、真知子(マイコ)が、英語教師オクトパス(近藤芳正)がなにかにつけて「女のくせに」と言うことへの抗議を込めて白紙の答案を出したことで、罰としてお便所掃除をさせられる。それを機に3人は永遠の友情を誓い、「お便所同盟」(白紙同盟)を結んだ。その時の記念として便所の取っ手が大切にされる。
「ブギウギ」ではスズ子が空襲警報中に便意を催し厠にこもり、愛助を心配させた。
類語:お便所、厠(かわや)、お手洗い
(文:木俣冬)
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