「ブギウギ」東京に大空襲、下宿夫婦の安否が心配<第63回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第63回を紐解いていく。
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「フーフーしたろ」
スズ子(趣里)と愛助(水上恒司)の物語と、羽鳥(草彅剛)の上海の物語、大きな話をひとつのドラマで並行して描くというチャレンジが行われています。山下(近藤芳正)が正式にマネージャーになり、慰問公演がはじまりました。スズ子は
地方に慰問に行きながら、愛助を看病。自分のことをやってる時間はなさそう。
スズ子がこんなに懸命なのは、母ツヤ(水川あさみ)の看病ができなかったこと、六郎(黒崎煌代)をひとりで死なせてしまったことが心残りだったから。愛助は、スズ子ができなかった家族孝行の対象になっているようです。
おかげで、愛助は快方に向かいます。いや、でも、こんなに簡単に?
京都に慰問に行ったとき、東京に空襲が。公演を中止にするか迷ったすえ、スズ子は楽しみに来てくれているお客様のために歌うことを決めます。
このとき、楽団の人たちの気持ちはどうだったのでしょう。リーダーはスズ子なので、最終的には彼女のお気持ち優先でしょうけれど、楽団の人たちには家族もいるでしょうし。彼らの心のざわつきや、スズ子が彼らを気にかける描写がほしかった。
公演を終えて、急いで帰って来たスズ子と小夜(富田望生)は焼け野原になった東京に呆然とします。
この回の冒頭、銀座で空襲があったと新聞を読む愛助に、スズ子は朝からそんな話はご飯がつかえると、避けようとしていました。銀座と聞いたら、劇場はどうなったかとか、そばにあった下宿は……とか気にかけないのだろうかと視聴者は思います。
いくらしんどいことを避けたい視聴者とはいえ、スルーしないでほしいこともあるのです。が、この回の場合、坂口(黒田有)と愛助の楽しい場面(「フーフーしたろか」)、スズ子と愛助が愛情をかわす場面などが優先されたのでしょう。そして、愛助が一番大事だけど、皆様のスズ子でいないといけない葛藤が重要視されたことは想像に難くありません。
軽演劇仕立ての音楽劇として楽しい「ブギウギ」ですが、ちょっと最近、朝ドラの悪いパターンにハマって来ている気がします。筆者は朝ドラを15年から毎日レビューしているので、調子のいいときとそうでないときのパターンはなんとなくわかります。
脚本を練る余裕がなくなって、プロットにある要素を取り急ぎ羅列しておくしかないのは、朝ドラがはじめての作家、かつオリジナルをあまり書いていない作家にありがちです(ほとんど誰でもまずはじめてなんですが)。
今回の作家陣は、朝ドラははじめてながら、それぞれ名作を手掛けている経験豊富な方々。ただ、やっぱり、戦時中に、スズ子と羽鳥、ふたりの物語を同時進行させないとならなくて苦戦しているのではないでしょうか。それを大いなるチャレンジとして見守っていきたいと思います。
その頃、上海で羽鳥は、軍の要請でコンサートを行うことに。軍の思惑には賛同したくないけれど、自分なりのコンサートを企てようと考える羽鳥。このエピソード、
モデルの服部良一さんの史実としてもすごく魅力的なのです。作家としてはこっちを手厚く書きたくなるだろうなあ。
朝ドラ辞典2.0 要冷蔵(かなめ・れいぞう)クレジットに「要冷蔵」とあると目を引く。「ようれいぞう」ではなく「かなめれいぞう」。大阪出身で、「カーネーション」「ごちそうさん」「あさが来た」「べっぴんさん」「わろてんか」「まんぷく」と主に大阪局制作の朝ドラに出演している。「ブギウギ」では愛助を診察する医者役で出演した。
(文:木俣冬)
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