©️2023「僕が宇宙に行った理由」製作委員会

【年末年始】映画館でこれを観ろ“8選”!前澤友作が宇宙に行くドキュメンタリー映画が傑作だった!


2023年もそろそろ終わり。年末は話題作が大渋滞となっており、映画ファンにとっては、どの映画を観るのかはもちろん、年間ベストにどの映画を選ぶのかも迷ってしまう、嬉しい悲鳴があがっている時期だ。

ここでは、筆者が独断と偏見で選ぶ、2023年12月より劇場公開されている映画から、本気でおすすめしたい8作品を厳選して紹介しよう。

特に、1つ目の「まさかこんなにも良い映画だったとは…!」という衝撃や、7つ目と8つ目は「優先的に観てほしい」理由があることを、ぜひ知ってほしい。

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1:『僕が宇宙に行った理由』(12月29日公開)

 ©️2023「僕が宇宙に行った理由」製作委員会

実業家の前澤友作の宇宙渡航プロジェクトに、7年にわたって密着したドキュメンタリー映画だ。

正直に言って、筆者は観る前は前澤友作という人に興味がなかったし、宇宙に行く一連のニュースもほんの少しだけ「金持ちの道楽だな」と思ってしまってもいたのだが……この映画を観て、その印象が大きく変わった。何も知らないまま偏見を持ってしまったことが、申し訳なく思ったのだ。

端的に言って「一般人が宇宙に行く」過程がものすごく面白い。もちろん宇宙に行くこと自体に命の危険があるため、「旅行者」といえどプロの宇宙飛行士と同じレベルを求められるし、バックアップのための人間も用意して過酷な訓練の様子、真面目に勉強に挑む様が描かれたりもする。

(C)2023「僕が宇宙に行った理由」製作委員会
 ©️2023「僕が宇宙に行った理由」製作委員会

また、前澤友作というその人がとてもキュートだ。プロの宇宙飛行士ではないことに自覚的なセリフをいくつか口にしており、自惚れているような嫌らしさはほとんどなく、関わる人たちやこの場にいること感謝の気持ちを伝える場面もあり、その姿勢は謙虚であるとすら思えた。

それでも、まるで子どものように宇宙に行く過程にワクワクしている様子はなんだか微笑ましい。かわいいおじさんが無邪気でありつつも、時には真剣に、宇宙に向かう(または宇宙にいる)映像に、とことん癒されることができたのだ。

(C)2023「僕が宇宙に行った理由」製作委員会
 ©️2023「僕が宇宙に行った理由」製作委員会

さらには、この映画は「世界平和」というとても大きなものを訴えている。「一般人が宇宙に行くことと、世界平和は何も関係がないだろう」と思う人もいるかもしれないし、それは正しいかもしれない。

しかし、「この人は本当に世界平和を願っているんだ」と、混じり気無しの善意を放っているとしか思えない前澤友作の姿を見れば、それを否定することなんてできないし、本当にその意志が世界を少しでも変えることができるかもしれない、とさえ思えたのだ。

本質的には、この記事の8つ目に紹介する映画と同様の尊い精神性を持っていると言っていい。

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 ©️2023「僕が宇宙に行った理由」製作委員会

編集や音楽も含めて映像作品としてのクオリティーがすこぶる高く、劇場で観れば忘れられない体験になるだろう。

この映画だけで前澤友作という人を判断するのは危険ではあるだろうが、前澤友作のファンはもちろん、彼に興味がないという方でもとても面白く観られる本作は、年末に年間ベストを塗り替える可能性すらあるダークホースだ。

2:『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(12月8日公開)

©️2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

子どもから大人まで文句なしに楽しめる一本を期待するなら、この『ウォンカ』を選べば間違いない。

そう思えるほどに画や音楽すべてに多幸感が満ち満ちているミュージカル劇であり、お人好しにもほどがある主人公が愛おしく、女の子とバディになる関係も楽しく、万人向けのエンターテインメント要素が勢揃いしている。

©️2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

重要なのは同じくポール・キング監督作『パディントン』もそうだっように、主人公が「移民」であり、その移民への偏見や差別、はたまた排斥という問題が描かれていること。極端ではあるが現実の社会にも確実にある搾取構造へ立ち向かうからこそ、主人公チームに共感&応援できるし、その後に訪れる伏線を見事に回収した展開は痛快無比だった。

人それぞれの可能性を示した尊い物語は、多くの人に勇気と希望を与えるだろう。また、シンプルに「契約書の中身はちゃんと読もう」という教訓も得られるかもしれない。

3:『市子』(12月8日公開)

©2023 映画「市子」製作委員会

観た後もずっと考えてしまうような、ガツンと来る日本映画が観たいのであればこちら。

突然失踪した女性の過去をたどるミステリーであり、時系列が激しくシャッフルする複雑な作劇に戸惑うかもしれないが、それはひとりの人間のことを「こう」だと決めつけず、「断片的に知っていく」過程の表現として秀逸で、「迷宮に迷い込んだまま出られなくなる」ような貴重な映画体験へとつながっていた。

©2023 映画「市子」製作委員会

とある社会問題に対しての苛烈とも言える展開には、賛否も分かれるだろう。それでも、長く間を取って撮られた俳優陣の演技の凄さは、誰もが認めるはず。

単にかわいそうなだけでない、重層的な内面を伺わせる杉咲花にとにかく圧倒されるし、若葉竜也や森永悠希もキャリア史上最高と思える名演だった。スクリーンで集中して観てこそ、仕組まれた「秘密」を熟考できる面白みは格段にアップするだろう。

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4:『ティル』(12月15日公開)

(C) 2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved. 

1950年代アメリカで実際に起きた、「アフリカ系アメリカ人の14歳の少年が白人女性に口笛を吹いたことで殺された」という「エメット・ティル殺害事件」を映画化。

「こんなことだけで子どもが殺されてしまうのか」と思うばかりの過程だけでなく、それが「当たり前」だった当時の風潮にも戦慄した

(C) 2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved. 

見る側にとてつもない怒りを抱かせる内容であること、ラストに表示される衝撃的なテロップも重要だ。何よりアフリカ系アメリカ人による公民権運動を大きく前進させるきっかけとなったこの事件は、全ての人が「知っておくべき物語」だろう。

母親を演じたダニエル・デッドワイラーの熱演のひとつひとつが胸に迫る、映画だからこその「物語」の力も感じさせる一本だ。

5:『PERFECT DAYS』(12月22日公開)

ⓒ 2023 MASTER MIND Ltd.

『ベルリン・天使の詩』や『パリ、テキサス』で知られるドイツの映画監督ヴィム・ヴェンダースが、東京・渋谷で働くトイレの清掃員の日常を描いたドラマ。

仕事を始めるまでのルーティンのひとつひとつを観ているだけで面白く、時に人生の深淵がふっと浮かびあがることもある。作品のトーンがぜんぜん異なることを前提として、おじさんの日常に溢れる幸福を切り取るところから、漫画「1日外出録ハンチョウ」 を思い出すところもあった。言葉の説明に頼らないからこそ、主人公の背景や過去を想像できる楽しさもあるだろう。

ⓒ 2023 MASTER MIND Ltd.

日々の仕事や出来事を楽しんでいるようで、「それだけではない」ことを表情で示す役所広司の演技がとにかく素晴らしい。柄本時生演じる軽薄そうな青年も、ダメだけど憎めないキュートさがある。

ブルーカラーの仕事を美化しすぎている、東京都のプロパガンダ映画にも思える危うさがあるなどの指摘もあるが、筆者個人としては「美談に落とし込まない」誠実なバランスに仕上がっていたと思う。

6:『サンクスギビング』(12月29日公開)


景気の良い(?)ホラー映画が観たいのであればこちら。タイトルの意味は、アメリカやカナダにある祝日「感謝祭」。2007年公開の古き良きB級映画を復活させた『グラインドハウス』内の「フェイク予告編」を長編映画化した映画となっている。

その最大の特徴はR18+指定大納得の残酷描写で、ほぼブラックコメディーと化した悪趣味な死に様をたっぷり詰め込んでおり、特にトランポリンで二度と遊びたくなくなるのが最悪だった。(超褒めている)


オープニングの「掴み」からバッチリで、若者たちが次々に殺される展開には伏線も大いに仕込まれており、盛り上がりどころもしっかり抑えているなど、エンターテインメント性がすこぶる高い内容で、現代を舞台にしたからこそのSNSの活用の仕方にも感心させられた。

『ホステル』や『グリーン・インフェルノ』など、やはり18禁の悪趣味上等なホラーを手がけてきたイーライ・ロス監督の最高傑作と呼んで差し支えないだろう。

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7:『屋根裏のラジャー』(12月15日公開)

© 2023 Ponoc

イギリスの小説を原作とした、少女の想像によって生まれた「イマジナリーフレンド」の冒険を描くアニメ映画。

王道のジュブナイル作品としてのハラハラドキドキとワクワクが詰まっており、中盤から突如として孤独に追いやられ、それでもかけがえのない仲間を得て、恐るべき敵に立ち向かうという展開がアツい

スタジオポノックの長編の前作『メアリと魔女の花』でよくも悪くもあった「ジブリっぽさ」から脱却し、オリジナリティーに溢れる革新的なアニメ映画になったことも称賛すべきだろう。

© 2023 Ponoc

観た人からの評価もおおむね高いのだが、残念ながら動員は大苦戦どころではない状態で、この年末年始でも上映回数は少なく、早めに上映が終了することも予想される。

届けられているメッセージは「かつて子どもだった大人」に響くとても誠実なものであるし、すべてが「眼福」と言うに相応しいアニメの豊かさは、スクリーンで堪能してこそのものだ。ひとりでも多くの人に観てほしいと、心から願う。

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8:『窓ぎわのトットちゃん』(12月8日公開)

© 黒柳徹子/2023映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会  

絶対に観てくださいお願いします!理由は以下の記事にこれでもかと書きましたから!こちらの1ページ目だけでも読んでいただけるとわかっていただけますから!

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他にも、孤独を抱えた男女の関係の静かな変化を描くドラマ『枯れ葉』(12月15日公開)、若者が調子に乗りすぎた後に恐ろしい事態が待ち受けるホラー『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(12月22日公開)などもおすすめの映画だ。

ぜひ、可能な限り観て、年間ベストをさらに熟考するという、嬉しい悩みを抱えてみてほしい。

(文:ヒナタカ)

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