「虎に翼」お父さん(岡部たかし)は「悪者顔」と言い切る直道(上川周作)<第22回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第22回を紐解いていく。
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「家族裁判をはじめます」
予審で罪を自白した直言(岡部たかし)。でも穂高(小林薫)には気になることがあり、言われなき罪を背負っているのなら、それを聞き出してほしいと寅子(伊藤沙莉)に託します。
それができるのは家族なのです。
穂高は調書を書き写す仕事も寅子に頼みます。涼子(桜井ユキ)たちや花岡(岩田剛典)や轟(戸塚純貴)の友情による協力も得て写していくことで、事件のあらましが見えてきます。
こういうとき、さくっとみんなが協力するのではなく、花岡がどう声をかけていいものか躊躇しているところを涼子が助け舟を出すという流れ。言ってみれば、綾波が「こういう時どんな顔すればいいのかわからないの」と戸惑うとシンジくんが「笑えばいいと思うよ」と言うような場面です。第21回の花岡の不器用さが生きています。こういう手間をひとつ加えるだけでキャラが膨らみます。
写した調書をもとに内容の検証も行う寅子たち。たぶん穂高はこれも課外授業にしているのでしょう。
優三(仲野太賀)も当然協力します。はる(石田ゆり子)とうまくいってなかった花江(森田望智)すらも、雨降って地固まるではないですが、世間の目を考えて直道(上川周作)共々、猪爪家から籍を抜いたほうがいいと言われても、いまは一致協力して直言の無実を晴らそうと励ますのです。
事件は重いものですが、これで家族がひとつになりました。
すると、はるが毎日つけていた日記から直言の自白の矛盾が見えてきます。自白した内容と日記に書かれた直言の行動に相違があると寅子が指摘していく場面はわくわくしました。
「無能力者」のように言われていた妻が毎日、コツコツ30年、家のことを書き続けてきた日記がここで役に立つのはなんて輝かしいことでしょうか。その日記も、第4週で、夫婦の間の暗号のような役割もしていたことが描かれていて、盤石です。花岡のエピも合わせて、とても丁寧な脚本だなと感じます。
検察がいろんなものを押収していったとき、はるは日記を隠し、持っていかれなかったのが救いでした。女の手帳などとるに足らないと軽視したかもしれないことから綻びが生まれたということにも痛快さを感じます。
直道の「俺にはわかる。お父さんは悪者顔なだけで、悪いことができるたちじゃないだろう」のセリフも効いてます。お父さんがどうも銀行員エリートの顔じゃないという印象は自覚的だったのです。「悪者顔」だという設定だったとは。わりとだらしないくずっぽい役を多く演じている岡部たかしさんを起用した理由がつきました。
でも、直言の自白は理事に頼まれたもので、そこには相当の責任があるようで簡単には撤回できなそう。この重大事がわりとあっさり家庭内で明かされてしまうのが拍子抜けとはいえ、こういうちょっと調べればわかる事実がなぜかしれっと隠蔽されてしまうことがおそろしいということなのかもしれません。
穂高は寅子に被告人たちの弁護人たちと引合せます。錦田力太郎(磯部勉)や雲野六郎(塚地武雅)、七沼弁護士(若林幸樹)など一癖も二癖もありそうなメンツです。
新劇劇団の老舗・俳優座出身の磯部さんのセリフの明瞭さと声の良さに惚れ惚れ。ちょうどこの間、磯部さんの代表作「風神の門」を見直していたところだったので、個人的に盛り上がってしまいました。
(文:木俣冬)
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