「虎に翼」優三、戦病死に言葉もない<第42回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第42回を紐解いていく。
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寅子、働きはじめるが……
家族がそれぞれ家族を思いやって、大事な何かを隠しています。
直道(上川周作)が亡くなり、あかりが消えたような猪爪家。そこへ直明(三山凌輝)が岡山から戻ってきます。
体調を壊して寝込むことの多くなった直言(岡部たかし)の代わりに家計を助けようとする直明。寅子(伊藤沙莉)も弟だけ働かせるわけにはいかない(「納得いかない」と表現されていました)とともに働きはじめます。
お仕事は直言がみつけてきたマッチのラベル貼り。直言の会社が火薬工場をやっていたつながりでしょうか。「らんまん」でも寿恵子(浜辺美波)が内職していました。
工場で働いていた古参・重田(緒方賢一)も一緒に働きます。高齢者は雇ってくれるところがないと喜んでいます。
はる(石田ゆり子)と花江(森田望智)もつくろいものをして働きます。
隠しているものその1:写真
直道が亡くなったときから寅子は、優三(仲野太賀)の写真を飾らなくなりました。第41回、直道が戦死したあと、花江の気持ちを思ってでしょう、赤い布の手提げバッグのなかに隠していたものです。それに花江は気づいていて、年が明けてから「すぐにこう言ってあげられなくてごめんね」と優三のことを話したり写真を飾ったりしていいのだと言います。
なかなか言いだせなかったのは、やはりしばらくは気持ちが整理できなかったことは想像に難くありません。こういう気遣い描写はいいなあ。
寅子は自室に優三との写真を飾りました。それぞれに個室がある分、恵まれていますね猪爪家。
そういえば、冒頭、優三を待ちながら優未と写真を見つめたとき、優未の目に涙。これってほんとうの涙なんでしょうか。赤ちゃんはよく泣きますから泣いた瞬間をみはからって撮ったとしたらすごい。
寅子は弁護士の仕事を復活させようと考え雲野(塚地武雅)を訪ねますが、戦争を経て案件が減っていて、とても頼める感じではありませんでした。雲野、それでもぷっくぷく。
それに比べて寅子は戦争中よりもやつれています。すっかり疲れが出ているのでしょう。
隠しているものその2:本
ラジオで伝わる戦後の社会状況。労働者たちが立ち上がっているとか帝大の受験が行われたとか。直明は受験を諦め、家のために働くも、やっぱり勉強が好きでこっそり台所で本を読んでいます。読んでいたのは、アドラーの「問題児の心理」。何度も読んで諳んじられるほどですが、本を売ってしまい残ったたった一冊を、何度も読むしかないのです。
家族みんなが大学に通わせられなかったことを気に病んでいるとわかっているので、余計な気遣いをさせないようにこっそり隠れて本を読んでいるという弟の気持ち。それを慮り、寅子は法律事務所を辞めたときにしまいこんだ法律書をとり出し、弟に少しでも学ぶ喜びを味わってもらえそうなものを選んで手渡します。
アドラーといえば、平成時代、アドラーの教えを解説した「嫌われない勇気」がベストセラーになりました。いまやフロイト、ユングと並ぶ心理学界の3大巨匠と言われていますが、知名度的にはフロイト、ユングが圧倒的で、それが21世紀になって日本でブームになった。その著作を早々と読んでいる直明って教養高いし先見性がある。猪爪家、すごい。
隠しているものその3:通知
昭和21年(1946年)秋のある日、直言が倒れます。その拍子に散乱した写真立てに触れた寅子に「見るんじゃない!」と叫んだそれは――。
優三に関する悲しい知らせでした。
つらい毎日、寅子のみならず、猪爪家にとって、優三が帰ってくることだけがただひとつの希望だったでしょうに。
(文:木俣冬)
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