「虎に翼」杉田太郎(高橋克実)の舌打ちが気になる<第77回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第77回を紐解いていく。
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寅子、川に落ちる
新潟に赴任した寅子(伊藤沙莉)は航一(岡田将生)と再会します。そこへ杉田兄弟(高橋克実、田口浩正)が現れ、媚を売りますが、航一はそっけなく帰ってしまう。見送った太郎(高橋)はまたちっと舌打ち。ふだんはものすごくにっこにこなのに、この表裏の顔がこわい。先が思いやられます。この土地の人が「親切……」とへんな反応をした航一の心情がわかるときが、いずれくるかもしれません。
帰宅すると、花江(森田望智)から手紙が。家事も仕事も完璧にこなすと考える寅子に「あなたなにもわかってない」と書いてあり、読むのをやめようとすると、イマジナリー花江が出てきて「トラちゃんにしかできないことがあるはず。それを見つけてちょうだい」と語ります(手紙にそう書いてあったのでしょう)。
寅子にしかできないこととはなんでしょうか。
お仕事のほうは、土地の境界に関する民事訴訟。
担当する書記官・高瀬(望月歩)は若いが覇気がなく、寅子は心配して声をかけますが、避けられてしまいます。おにぎりを食べながら本を読んでいるときに声をかけるタイミングは適切なのか、気になりました。
寅子が家に戻ると、美味しそうなメバルの煮付けとたけのこの酢味噌和えが。翌日、太郎が、魚屋と八百屋が好意でやってくれたことだと言います。その日はお刺身が届きました。ツケだとのことですが、支払いが莫大になるのでは。ただもこわいが、支払いもこわい。
「頼れるものには頼ったほうがいい」と太郎は意味深に言います。
次第に、見知らぬ土地、独特の空気が、ただの純朴で親切なものだけではないことがわかっていきます。
一向に解決しない境界の問題で、寅子は現地調査をすることを提案し、問題の山の中に入ります。
そこで太郎が、申立人・森口(俵木藤汰)はこの土地の名士なのでよきにはからって欲しいと頼みます。そのほうが赴任中、楽になると、「持ちつ持たれついきましょう」とあくまで下手に出た言い方ですが、寅子が「法に則った判断をします」と生真面目に答えると、ちょっと表情が固くなって、「その土地の風土、人間に寄り添う気持ちも忘れないで」と噛んで含めるように言うのです。このときの、太郎の表情は、にこにこにやにやしていなくて真顔で、ぞくりとなりました。高橋克実の名演技。
太郎はなにか腹にいちもつありそうですが、子どもの前で親がピリピリしないほうがいいという助言は間違っていない気がします。
そのとき、川べりで森口と高瀬がなぜか揉めはじめ、寅子が仲裁に入りますが、ふとした拍子に川に落ちてしまいました。
朝ドラあるある、 水に落ちる (朝ドラ辞典ご参照ください)。ヒロインが川や水に落ちる場面は朝ドラでよくあるのですが、今回、水中からの寅子視点などもあって、なぜかリアルでした。そして、呆然となる寅子。水に落ちた寅子は、ミレーのオフィーリアの絵のようだとSNSで話題になりました。
山から戻ると、森口が高瀬を訴えると言っていると告げる太郎。いったい高瀬は何に激昂し森口に掴みかかっていたのでしょうか。
「私は法に則った判断をするまでだ」と決め顔をしたあと、寅子によろしく頼む的なことをささやきます。こわい。
寅子はあくまで法を大事にするのか、それとも郷に入っては郷に従え、この場の空気に流されるのか、さてどうなる?
高瀬は、山に登ったときも体力がなく、戦争にも行っていないことを男たちから咎められていました。勉強好きで、心身が繊細な、戦中戦後に求められた男らしさから外れたタイプなのでしょう。彼のこれからも気になります。
(文:木俣冬)
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