「虎に翼」ついに再会、涼子さま(桜井ユキ)こんなところで<第80回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第80回を紐解いていく。
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高瀬(望月歩)の暴行事件を杉田太郎(高橋克実)が穏便に済まそうとしましたが、寅子(伊藤沙莉)は本庁に報告して注意処分にすることにしました。周囲はわざわざそんなことしなくても、と言いますが、高瀬は寅子がそうした考えをきちんと言葉で聞きたいと言い、寅子は話しはじめます。
この仕事をしている以上、どんなに相手がひどくても手を出してはいけない。仕返しをすることはひどい相手と同じ次元に落ちることだ、という考えは、過去に寅子が暴力や暴言に出て反省したことから学んだものでしょう。
また、穏便に済ませて、心にできたかさぶたを悪気なくはがしていく人たちに、借りをつくってほしくない。「自分の意思で物事を受け流すのと受け流さざるを得ないのとは違うから」というのは、寅子の一貫した信条です。他者によってものごとを受け流すことを徹底して拒みます。穂高(小林薫)との確執もそれでした。
怒りたいときに怒ることができるように、やりたいことがやれるように、処分したと寅子は語ったあと、さ、この話はもうおしまい、と明るく終えます。
でもそのあと、どーっと疲れています。がんばって、強く出ていたんですね。高瀬が納得してくれてよかった。
その晩、高瀬が令状をもらいに来て、キャラメルを優未(竹澤咲子)にと手渡します。キャラメルは亡くなった兄との思い出のお菓子でした。
兄に譲られた進学の道によってなれた書記官を、兄のことでキレてあやうく失いかけた。人っていけないと思いながらついついそういうことをしてしまうもので。それを寅子によって助けられたのです。
起きてしまった優未は、「おいしいものひとりで食べてもつまらない」からとキャラメルをいま食べたいとねだります。優三(仲野太賀)とおいしいものをふたりでこっそり食べた記憶が蘇り、寅子は、優三の思い出をやっと優未に話すことができました。
優三はすぐ人に謝るが、時間が経ってから、本音をこぼす、不器用で優しい人で、優未はそこが似たのかもしれないという寅子。なるほど。それで寅子もすぐに謝るようになり(自分の意思で物事を受け流している?)、「虎に翼」の登場人物は時間が経ってから、本音をこぼすのでしょう。ドラマのなかに優三イズムが流れているようです。
寅子は、お腹をくだしたとき寅子の変顔を思い出すように、と伝授します。いきなり変顔をされても優未はすんなり受け入れられないようですが、少し距離は縮まったようです。
ふたりは並んで歯を磨きます。夜中に甘いものを食べたから歯は磨き直さないといけません。
寅子は1ヶ月分の献立を考え、買い物計画を立て、合理的に家事を行うようにして、近隣に借りを作らないようにします。これで杉田兄弟も手出しできません。
そして、寅子は、本部に時々手伝いに行くことになり、航一(岡田将生)が紹介してくれた喫茶店に昼食を食べに行きます。
そこにいたのは、涼子さま(桜井ユキ)で――。
あまりの偶然にびっくりしますが、それよりも、航一がまわりくどい言い方で、喫茶店を紹介し、寅子は「誘ってくださるの」と積極的であったことが気になります。
優三さんのことを思い出すと胸が痛み、娘になかなか話せないのは、航一の言う、まだ死を受け入れられないのではなく、むしろ、だんだん優三さんのことを忘れて、ほかに心ときめく人が現れたからなのでは? という気さえしてきます。
これは決して薄情なのではなく、人間の心は理性では抑制できないものだということでしょうか。仕事――法律では理性を優先していても、私生活ではなかなか難しい。さてどうなる?
(文:木俣冬)
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