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【2024夏ドラマ】まだ間に合う!ドラマ通オススメの“7作品”


本格的な夏が到来した。年を追うごとに気温が上昇し、もはや外を出歩けないくらいの猛烈な暑さに早くもバテそうだ。

こんな時は家にこもって、溜まっていたドラマを観るに限る。すでに多くの夏ドラマがスタートしているが、今からでもまだ間に合うオススメの作品を7本紹介したい。

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1:「海のはじまり」

©フジテレビ

坂元裕二や野木亜紀子などを輩出したシナリオコンクール「フジテレビヤングシナリオ大賞」にて2021年に大賞を受賞。「14才の母」(日本テレビ系)や「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(フジテレビ系)などを手がけた村瀬健プロデューサーにその才能を見出され、2022年に「silent」で鮮烈な脚本家デビューを飾った生方美久。

2023年にも「いちばんすきな花」をヒットさせた彼女が再び村瀬プロデューサーや演出の風間太樹監督とタッグを組み、“親子の愛”をテーマに贈るのが月9「海のはじまり」だ。

本作は、大学時代の元カノ・南雲水季(古川琴音)の葬儀で、自分と血の繋がった娘・海(泉谷星奈)の存在を知る28歳の月岡夏(目黒蓮)が主人公。生まれてから一度も会っていないのになぜか自分に懐く海に戸惑いながらも、真剣に向き合おうとする夏の姿が描かれている。

初回の放送で海が純粋な眼差しとともに夏に向けた「夏くんのパパ、いつ始まるの?」というセリフが印象的だった。SNSでは一部の視聴者から「怖い」「ホラーだ」という感想も上がっていたが、このセリフは本作のタイトルとも繋がる重要なものだ。

人はいつ父となり、母となるのか。それはきっと“海のはじまり”のように、明確な起点はなくグラデーションのように色濃くなっていくものなのだろう。このドラマでも突如自分に娘がいることを知った夏が、海と徐々に自分たちだけの親子関係を築いていくのではないかと思う。

そんな本作の中で、視聴者の共感が一挙に集まるのが有村架純演じる夏の現在の恋人・百瀬弥生。海の祖母・朱音(大竹しのぶ)のセリフにもあるように、恋人の彼女にとっては巻き込まれ事故でしかない。それでも夏を責めたりせず、海の存在を受け入れて母親になろうとする。それなのに水季を大切に思う人たちから、大切に思うが故に心無い言葉をかけられたり、血の繋がっている夏と海の関係性に一歩入り込めず、疎外感で苦しんだりする弥生の状況が辛すぎるのだ。

特に胸が痛んだのは第4話における回想シーン。実は彼女には元彼との子供を妊娠するも、中絶した過去がある。カフェで元彼に妊娠を伝えるも、「いつするの?手術とか」と中絶前提で話を進められた弥生。

彼氏が去った後、コーヒーのお代わりを頼んだ彼女は店員に「ノンカフェインコーヒーでよろしいですか?」と問いかけられ、「普通ので」と答えた。つまり彼女は出産の可能性も考えて、ノンカフェインコーヒーを飲んでいたのではないか。

生方脚本は何気ないシーンにも意味がちゃんとある。ながら見や倍速視聴を許さない緻密な脚本は流石の一言。月曜の夜だけど、頭をフル回転させて視聴に臨みたいと思わせる作品だ。

▶︎「海のはじまり」を観る

■毎週月曜よる9時放送中

2:「南くんが恋人!?」

©テレビ朝日

武田真治&高橋由美子、二宮和也&深田恭子など、人気俳優陣によって過去4度ドラマ化され、時代を超えて愛されてきた不朽の名作「南くんの恋人」(著・ 内田春菊)。同作はある日突然手のひらサイズになってしまった女子高生のちよみと、幼馴染の彼氏・南くんの恋を描いたラブストーリーだが、その男女逆転版として2013年に刊行された漫画を初映像化したのが「南くんが恋人!?」(テレビ朝日系)だ。

本作では湘南を舞台に明るく元気な女子高生のちよみ(飯沼愛)と、身長15cmになってしまった少し年上の彼氏・南くん(八木勇征)の恋愛模様が繰り広げられる。これまでと大きく異なるのは、南くんのキャラクターだろう。

過去のドラマでは平凡な男子高校生だったのに対し、本作の南くんは将来有望なバスケットボール選手で地元のスター。そんな南くんと付き合っているちよみはつい気後れしてしまう。だけど、南くんは一途でちよみのことが大好きなのだ。

ちよみも自分に少し自信はないけれど、ひたむきで応援したくなるキャラクターとなっている。飯沼愛と八木勇征が湘南に似合う爽やかカップルを見事に体現していて、初回の放送ではあまりの眩しさに目を細めてしまいそうになった……。

これは仕事で疲れきった大人にこそ観てほしいドラマだ。遠い昔においてきた甘酸っぱい感情をもう一度取り戻してくれる

また本作は1994年に同じくテレビ朝日で放送された「南くんは恋人」を手がけた岡田惠和が脚本を担当している。岡田脚本らしさが最も現れているのが、ちよみの家族構成だ。

家族構成は母の楓(木村佳乃)と父の信太郎(武田真治)、弟の拓真(番家天嵩)、祖母の百合子(加賀まりこ)。彼らはいわゆるステップファミリーで、ちよみは信太郎と拓真とは血が繋がっていない。実の父・たけし(富澤たけし)は生粋のダメ男だったようで、その母である百合子は彼と縁を切り、嫁である楓と暮らしていくことを選んだ。複雑ではあるけれど、堀切家はみんな明るく仲が良い。

こういう色んな思いを抱えながらたくましく生きる市井の人々に焦点を当てた温かみのあるストーリーは岡田の真骨頂。このドラマを観れば、火曜の夜は良い気分で眠りにつけそうだ。

▶︎「南くんが恋人!?」を観る

■毎週火曜よる9時放送中

3:「西園寺さんは家事をしない」

©TBS

仕事が忙しいとつい部屋が散らかってしまう。ご飯を作る元気がない。育児に疲れてしまった。そんな自分に罪悪感を抱いてしまう人は、ぜひTBS系火曜ドラマ「西園寺さんは家事をしない」を観てほしい。

本作の主人公は、アプリ制作会社でバリバリ働く38歳の独身女性・西園寺さん(松本若菜)。マイホームを購入した彼女は便利な家電や家事代行サービスなどをフル活用し、徹底した家事ゼロ生活を送っている……という設定だ。会社でも家事全般をサポートするアプリの開発に携わっている。

そんな西園寺さんの前に現れるのが、SixTONESの松村北斗演じる年下のイケメンエンジニア・楠見くん。天才だけど無愛想で、西園寺さんの第一印象は最悪だった。はいはい、よくある「なにこいつー!」から始まる恋愛ドラマね……と思ったら大間違い。

後ですぐに失礼な態度を素直に謝罪したり、飲み会に誘ったら意外に来てくれたり、楠見くんは不器用なだけで本当はとっても魅力的な男性なのだ。

そして彼にはルカちゃんという4歳の娘がいて、亡くなった奥さんの代わりに自分がちゃんと育てなきゃと懸命に育児も家事も頑張っている。だけど、仕事も忙しい楠見くんは日々限界寸前。そんな楠見くんがルカちゃんのある一言がきっかけで、奥さんが楽しんで家事をやっていたことを思い出し、「パパ、ダメだね」と号泣するシーンでもらい泣きしてしまった。

誰だって本当は仕事も家事も楽しみたい。だけど人間はロボットじゃないから疲れるし、第一、私たちは毎日やることが多くて大忙しなのだ。全部一人で抱え込んで、かつ楽しむなんて無理な話。そう分かっていても、つい自分を責めてしまう人は「ダメでもいいんだよ!ダメでも、ダメじゃないんだよ!」と強く言い切ってくれる西園寺さんに救われるはずだ。

そして、そんな西園寺さんと楠見親子は“偽家族”として一緒に暮らすことになる。本作のジャンルはラブコメディなので、西園寺さんと楠見くんの恋の行方にも注目したい。

▶︎「西園寺さんは家事をしない」を観る

■毎週火曜よる10時放送中

4:「新宿野戦病院」

©フジテレビ

何かと話題に事欠かない日本最大規模の繁華街、新宿歌舞伎町。すっかりコロナ前の賑わいが戻り、夜になると国籍年齢性別問わずたくさんの人が集まる歌舞伎町はカオスな状態になる。そんな歌舞伎町の今を切り取るのが、水曜よる10時放送のドラマ「新宿野戦病院」(フジテレビ系)。

本作は歌舞伎町に佇む「聖まごころ病院」を舞台にした、“クドカン”こと宮藤官九郎のオリジナル脚本によるドタバタコメディだ。

常に経営難で古びた聖まごころ病院で働くのは、港区女子とのギャラ飲みざんまいで金に目がない美容皮膚科医の高峰享(仲野太賀)、アルコール依存症の院長・高峰啓介(柄本明)、性別不明の看護師長・堀井しのぶ(塚地武雅)、病院の金庫番を担う経理担当の白木愛(高畑淳子)など、個性豊かな面々。

そこにアメリカ国籍の元軍医で、よく言えば豪快、悪く言えば雑なヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)がやってきて、病院はさらに賑やかに。ひと癖もふた癖もあるキャラクターが繰り広げる会話劇はもはや収集がつかない状態。医療ドラマといえどもシリアスなムードは一切なく、クドカンワールド全開だ。

そのため一見ふざけているように思えるのだけど、実は真剣に命と向き合っている作品なのではないかと思う。社会問題をコメディに織り交ぜるのが得意なクドカン。

今回彼が舞台に選んだ歌舞伎町はホストやキャバ嬢・トー横キッズ・路上生活者・不法滞在の外国人など、誤解を恐れずに言うのであれば、人に迷惑がられる属性を持った人たちが集う。だけど、もしも彼らが命の危機に立たされた時、自己責任だと切り捨てることは本当に正しいのか?というのが本作の根っこにあるテーマなんじゃないだろうか。

困った人を救うNPO法人「Not Alone」の新宿エリア代表・南舞(橋本愛)が初回の放送で放った「この社会は平等ですか?」というセリフが印象深い。かたや戦場で黙々と命を救ってきたヨウコは 「うちの命、おまえの命、貧乏の命、金持ちの命、平等に助ける」という信念を持つ。

社会は平等じゃないけれど、命は平等。本作はそんな当たり前のようでないがしろにされていることを、雑に歌舞伎町の人々を助けるヨウコの姿を通して伝える意外に真面目なドラマだと筆者は感じている。

▶︎「新宿野戦病院」を観る

■毎週水曜よる10時放送中

5:「クラスメイトの女子、全員好きでした」

©読売テレビ

国民的アニメ「ドラえもん」のジャイアンの声で知られる人気声優・木村昴が、作家志望の主人公・脛男(スネオ)を演じるドラマ「クラスメイトの女子、全員好きでした」(読売テレビ・日本テレビ系)。

物語は脛男がタイムカプセルに入っていた中学校のクラスメイトが書いた小説を盗作し、一躍人気作家になってしまうところから展開される。罪悪感に耐えきれず、担当編集の片山美晴(新川優愛)に真実を打ち明けるが……。ヒット作を出せない崖っぷちの美晴は盗作を隠し、脛男の新連載をともに成功させることを決断するのだった。

木村昴といえば、ポジティブオーラが満載で、声優も俳優もMCもマルチにこなす器用な人というイメージがある。だが、今回演じる脛男は真逆の冴えないキャラクター。特別な才能もなければ、小説に生かせそうな経験もない。けれど、そんな彼には唯一の特技があった。それは女性の顔と名前と特徴を覚えること。そして、どんな人にも良いところを見つけ、好きになることができる

それを生かし、脛男は中学時代に好きだった女子との思い出を自叙伝的に綴る小説「クラスメイトの女子、全員好きでした」を連載することに。憧れの女子とキスをするためにベルマークを1000枚集めたり、プロレスラーを目指す女子のためにジャイアントスイングの練習台になったりと、そこには涙ぐましい過去がある。

木村もさることながら、脛男の中学時代を演じる及川桃利の演技がとてつもなく上手い。コメディに振り切ってはいるけれど、どことなく哀愁が漂っていて、思わず涙腺が緩む場面も。

それに、女子限定ではあるけれど、どんな子にも良いところを見つけて好きになれるって素敵!人の欠点ばかり目についてしまうときは脛男の姿勢を見習いたい。

また脛男と美晴には盗作が世間にバレる前に、真の作者を見つけ出すという使命がある。クラスメイトの女子のうち、脛男の盗んだ小説を書いたのは誰か。そんなミステリー要素も見どころの一つだ。

▶︎「クラスメイトの女子、全員好きでした」を観る


■毎週木曜よる11時59分放送中

6:「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」



いつ、誰が、どこで、何をきっかけに炎上するかわからない時代。ドラマ8「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」(テレビ東京系)はそんな今を切り取ったリーガルドラマである。

中島健人演じる主人公の保田理は、ネットやSNSトラブルが得意な若手弁護士。彼の事務所は保田と、パラリーガル・加賀見灯(白石聖)の職員2人だけで回っている。

初回の放送では、そんな保田事務所に、ブログが突然炎上した主婦の桐原こずえ(志田未来)が相談にやってくる。SNSや掲示板で彼女に関する誹謗中傷や嘘の情報を書き込んだのは同じマンションに住むママ友だった——。自分の身にも起こるかもしれないトラブルに思わず身震いした。タイトルに反し、誰であっても他人事ではいられないストーリーだ。

©「しょせん他人事ですから」製作委員会

もしも自分がそんなトラブルに巻き込まれたら、どうすればいいか。本作は問題解決までの道のりを分かりやすく、かつポップに説明してくれる。このネット時代に生きる人全員必見のドラマと言えるだろう。

そして、何よりも保田のキャラクターがいい。彼は「しょせん他人事」が口癖で、相談者に感情移入したり、共感を示したりしない。だから、怒って帰ってしまう人もいるけれど、実は誰よりも誠実な人ではないかと思う。

印象的だったのは相談中に泣き出したこずえに保田が「泣いてないでちゃんと説明してください」と言い放つ場面。一見冷たく感じられるけれど、時間が短い無料相談の中でしっかりと相手から話を聞き出そうという彼なりの配慮なのだ。余計なこともお世辞も言わず、真実だけを伝え、どうしたいかは相談者の判断に委ねる。もし自分がネットのトラブルに巻き込まれたら、こういう人に相談したいと思った。

ちゃんと相談者と一線を引き、余計なストレスを負わないようにしているところも好感が持てる。少し仕事を頑張ったら、自分へのご褒美としてスイーツを食べるところも。自分の機嫌は自分で取る。誰かを不用意に傷つけてしまわないためにも。ネット時代に大切なのは、保田のような態度ではないだろうか。

▶︎「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」を観る

■毎週金曜よる8時放送中 ※2日(金)放送は休止、次回放送は9日(金)

7:「GO HOME〜警視庁身元不明相談室〜」

©日本テレビ

人間が避けられない死。多くの人は身近な人に看取られて生涯を終えるが、驚くことに身元がわからないまま発見されたご遺体は全国に約2万体も存在し、年々その数は増加しているという。

新土ドラ9「GO HOME〜警視庁身元不明相談室〜」はそんな身元不明のご遺体をわずかな手がかりから特定し、家族のもとに関係者のもとへ帰す実在の機関が舞台。

とても意義のある仕事だと思うが、本作では地味で誰も行きたがらない警視庁の“掃き溜め”扱いされている。上司たちもまるでやる気がない。そんな中で熱い思いで、名もなきご遺体の身元特定に奔走するのが同期バディの桜(小芝風花)と真(大島優子)だ。本作は日本では珍しい女性同士のバディものでもある。

2人は同期とはいえ、桜よりも真の方が10歳年上。性格も趣味も正反対で顔を合わせるたびにいがみ合っている。だけど、ご遺体を家族のもとに帰してあげたいという気持ちは一緒で、捜査中は猪突猛進タイプの桜を冷静な真が抑えたり、逆に桜の熱意に真が引っ張られたりと意外にも相性の良さを見せるのだ。

小芝風花も大島優子も演技派だけあって、コミカルな部分とシリアスな部分の使い分けがうまく、見ごたえ十分。周りを固めるキャストも吉田鋼太郎や高島礼子、戸次重幸とベテラン勢ばかりなので、良い意味での軽やかさもあり、重厚感もあるミステリーヒューマンドラマに仕上がっている

ご遺体に隠されたメッセージも見どころの一つ。亡くなった人は何を伝えようとしていたのか。それが分かった時の感動はひとしおだ。そして桜と真にもどうやら大切な人を失った過去があるようで……。

そんな2人のエピソードにも今後は注目していきたい。

▶︎「GO HOME〜警視庁身元不明相談室〜」を観る

■毎週土曜よる9時放送中



今からでも間に合う、おすすめの夏ドラマを7本紹介した。

「アンメット ある脳外科医の日記」(カンテレ・フジテレビ系)や「燕は戻ってこない」(NHK総合)などの良作が目立った春ドラマ。

それに比べると突き抜けた派手さはないかもしれないが、夏ドラマは粒ぞろいで脚本、キャストの演技、演出など、どれをとっても実力に申し分のない作品ばかりな印象がある。一方でカラーにはバリエーションがあるので、必ずお気に入りの作品が一本は見つかるはずだ。

(文:苫とり子)

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