「おむすび」神戸出身の新納慎也さん(若林役)、阪神・淡路大震災を振り返る【第23回】
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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。
平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第23回を紐解いていく。
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おじいちゃんが迎えに
歩(仲里依紗)が部屋で懐かしい曲を聞いていると、階下がにぎやかに。おじいちゃん(松平健)がフェスの打ち上げをやるとハギャレンたちや陽太(菅生新樹)を呼んでいました。そこへ、結(橋本環奈)や四ツ木(佐野勇斗)もおじいちゃんに連れられてきます。「戦いすんだらノーサイド」とおじいちゃんは明るい。でも少女の優勝にもの申していたのもおじいちゃんです。
ひみこ(池畑慎之介)も巻き込まれたひとりですが、アフロのかつらが気に入ってつけたまま打ち上げの支度を手伝っています。
あとで、四ツ木が栃木出身と聞いて、栃木弁で栃木に10年いたと言い、そのあと、京都や高知や韓国にまでいたと謎の経歴を語るひみこ。こういう謎の人、いいですね。池畑さんが短い時間ながら鮮やかにツボを抑えて演じています。
おじいちゃん永吉のあっけらかんとした性格のおかげで、愛子(麻生久美子)たちははいま糸島にいるのだと、今度は愛子の視点の回想がはじまります。愛子というか大人の視点ですね。
震災後、地元の人たちは率先してできることをやっています。とそこへ、永吉が心配して糸島からやって来て、実家に戻ることを提案したのです。
最初は、そんなつもりのなかった聖人(北村有起哉)ですが、商店街の人たちに促され、自分だけ残って復興の手伝いをし、愛子と歩と結だけ糸島に引っ越すことになりました。
「おいしいもん食べたら悲しいことちょっとは忘れられる」と、このときもおばあちゃん(宮崎美子)が言っていて、これがのちに結の口癖になったようです。
写真提供:NHK
ではここで、商店街の人たちのひとり、若林建夫役の新納慎也さんのコメントをご紹介します。
新納さんは神戸出身です。若林は、神戸市役所の職員で、米田家が営む理髪店の常連。さくら通り商店街にアーケードを設置する計画の担当者で、聖人に商店街側の責任者になるよう依頼しました。震災後、聖人に、仮設住宅があるが、仮住まいできるところがある人はそこへいってもらえると助かると役所的な観点で語りました。
Q1 出演が決まったときの気持ちは?
朝ドラ「ブギウギ」で松永大星を演じていた撮影中か放送中に、「おむすび」出演のお話をいただいて、「また大阪に行く日々がやってくるんやな」と思った記憶があります。こんなに続けての出演は珍しいことらしいので、ありがたいし嬉しかったですね。「ブギウギ」と同じスタッフさんも多く、「ただいま〜」という感じです。松永さんがよくやっていた“グッドラック”のポーズをして迎えてくださるスタッフさんもいました。
Q2 演じる役・若林建夫について
若林さんは松永さんと真逆の役なんです。松永さんだけじゃなく、NHK だと大河ドラマ「真田丸」で豊臣秀次役、「鎌倉殿の 13 人」で阿野全成役とクセが強い役をやらせていただきましたが、この流れから想像もつかない地味な役ですね。僕が出ると視聴者の方は「なんかやるぞ」と思うかもしれませんが、神戸市役所の真面目な職員で、突飛なことはしません。…多分(笑)
僕は神戸市出身なのですが、阪神・淡路大震災が起きた時はあれほどの大地震を経験するのがみんな初めてで、何もわからなかったんです。市の職員の方も本当に困っただろうと思います。震災当時、神戸市役所にも大勢の方が避難していたのを実際に見ました。市役所内に公衆電話がいっぱい並べられていて、みんながそこに電話をしに集まっていました。職員の方は対応に奔走していたことでしょう。ドラマに描かれていない部分でも、若林は市の職員として頑張ったのだろうと思います。
Q3 阪神・淡路大震災を描くことについて
阪神・淡路大震災を描くと聞いたときにちょっとヒリヒリする独特の感覚がありました。震災時は大学生で大阪に住んでいたのですが、神戸で暮らす家族と連絡が取れなくなったのが心配で、水をかついで実家まで 9 時間近くかけて戻った経験も。途中、電車が止まっていて、徒歩も交えて神戸に辿り着きました。幸い家族は無事でしたが、避難所へ知人を探しに行ったのを覚えています。だから劇中の避難所シーンの撮影では「こんなんやったね…」と、当時を思い出しましたね。エキストラさんがすし詰め状態で、プライバシーも何もない感じがリアルでした。当時の避難所は現在の避難所の様子とはかなり違っていて、もっともっとギュウギュウでした。阪神・淡路大震災以後、少しずつ改善されたんでしょうね。ただ、「震災」は僕にとって傷であるだけでなく、誇りでもあるんです。震災当時は本当にどうなることかと思いましたし、約 30 年経つ今だから言えることですが、復旧復興して前向きに進んでいった神戸が「誇り」です。一方で、各地で大きな地震が起きるたびに大きく傷つく自分もいます。今年起きた能登半島地震の被災地のことがずっと気がかりですし、復旧復興が遅れている現状にとても心を痛めています。このタイミングで『おむすび』が放送されることで、能登をはじめとする各被災地の方々に「大丈夫だよ、必ずこうやって乗り越えられるから!この国の人たちにはそのパワーがあるよ!」と伝わったらいいなと思っています。
Q4 視聴者へのメッセージと見どころ
作品に出てきたら何かしでかすと思われがちな僕ですが、今回は何もしません…多分(笑)。神戸の復旧復興を願う、真面目な市役所職員役を楽しんでいただけたら幸いです。震災を描く作品なので、神戸や東北、能登など、各被災地の方々が悲しいことを思い出してしまうシーンもあるかもしれませんが、「いや、待てよ。これを乗り越えてきたやんか!」とパワーに変換していただけたら。日本は地震大国で何度も何度も地震に見舞われていますが、その記憶も前に進むパワーなんだと捉えてドラマを見ていただければ嬉しいです。
(文:木俣冬)
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