「おむすび」歩(仲里依紗)の正体がわかる。そして来週はいよいよ【第30回】
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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。
平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第30回を紐解いていく。
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予告で「栄養士になる」発言
歩(仲里依紗)は大女優ではない。では何なのか? ということで種明かしが行われました。場所をスナックひみこに移しましてーー。
米田家とハギャレンと佑馬(一ノ瀬ワタル)が集合する前で、歩はまず浜崎あゆみの「Boys&Girls」を歌います。
「あんまりうもなかね」とひみこ(池畑慎之介)がぼそり。
このうまくなさだと歌手でもないようです。
歩は意を決して、「みんな見て」とカラオケの画面を指さします。「Boys&Girls」のカラオケビデオのなかに歩が映っていました。
ここで、第11回のカラオケシーンを見直してみましょう。
まず女性の足元が出てきます。そして顎下の横顔、後ろ姿。「間奏12秒」のところではムードたっぷりに振り返り、そこから正面向きで歩いてくる金髪の女性。顔が絶妙に映っていませんが、いま見返せば、仲里依紗さんの体型や歩き方なのです。
ここですでに気づいていた人がいたらすごいです。
歩は東京に出てしばらくモデルをやっていましたが、現在はカラオケビデオ出演を生業にしていたのです。
震災で亡くなった真紀ちゃんの夢を叶えようとしていたけれどいつの間にか流れ流れて俳優業とはいえ決して売れっ子とは言えない立ち位置です。
このなんとも言えない華やかさとは無縁のしょぼさがリアルです。
実際、この国の大半の人がトップに立てることはなく、中くらい、あるいはもっと下のほうにいます。だからこそ、あゆの歌が染みるわけで。
みんな、ひとときカラオケで歌って気持ちを晴らして生きているわけです。
結(橋本環奈)が代わって歌い、歩を励まそうとします。
続けて、るーりー(みりちゃむ)、「うちらも歌おう〜」と無邪気に振る舞い、場を和ませました。いや、ほんと、どんなにギスギスしていても、ハギャレンが無邪気なので救われます。
ハギャレンと歩と結がそろって「Boys&Girls」を歌います。満面の笑顔で。
ちなみに歌は、第11回を見返すとハギャレンのほうが歩よりうまかった。ですが、仲里依紗さんは、わざとヘタに歌っていたらしいです。ここでプロ並みにうまかったら、歩のコンプレックスが感じられなくなってしまいますから、音程が少しズレているくらいのほうが、いまの歩の冴えなくてやりきれない状況が伝わってきます。
続けて歌った結もあんまりうまくなくて、姉妹そろって歌があんまりうまくないという、なんともほろ苦い場面でした。根本ノンジさんの書くものは時々こういう場末感が滲みます。ほのぼの系作家のように思われていますが、「フルーツ宅配便」みたいなものが良かったりします。
帰宅して、歩の部屋で歩と結は2人で語り合います。
すっかり、わだかまりが溶けたようです。
今度は歩が結の蓋していた心を開ける番です。
「子どもの頃みたいにやりたいこと思いきりやればいいじゃん」と歩が背中を押します。
子どものときに、セーラームーンみたいに変身したかった結に戻って、歩に手伝ってもいらって髪を巻いて、大きなひまわりをつけて、キラキラと派手な格好をして、階下に下りていきます。
そして父母に、ギャルも書道もやりたいと宣言します。
頑固なお父さんもついに「好きなことばやれ」と認めます。
思えば、お父さん(北村有起哉)は理容師で、他者の髪をデザインする仕事です。その娘たちも着飾るのが好きで、似ているのです。
次週予告では、「栄養士になりたい」と結が声をあげていました。いよいよ本題に入っていきそうです。結は「Boys&Girls」の歌詞のように、輝き出して、はばたきだして、もう誰にも止めることはできないのです(たぶん)。
(文:木俣冬)
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