続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年12月03日

「おむすび」今度は歩(仲里依紗)が渡辺(緒形直人)に靴のカスタムを依頼する【47回】

「おむすび」今度は歩(仲里依紗)が渡辺(緒形直人)に靴のカスタムを依頼する【47回】


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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第47回を紐解いていく。

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ごはん かたっ

1995年の回想。
地震から5日め。皆、それぞれいったん家に戻り、道具などを避難所へ持ちよって、炊き出しを行いました。大豆と野菜のお味噌汁。わかめの入ったおむすびをみんなでぱくつきます。
結は美味しいと食べながら「でもごはんかたっ」とまた余計な一言を。
愛子(麻生久美子)の良さは決して怒らないことです。「チンして」のときも「かたっ」のときも、ともすれば「そんなこと言うもんじゃありません!」と叱るお母さんはいると思います。街中で幼児を叱ってるお母さんを眼にするので。

結の言動は、当時、おむすびが冷たかったこと固かったことなど、事情を伝える役割もしているのです。
このドラマは、95年の震災の記憶を後世に伝えることも目的になっているので、結は主人公の責任として、視聴者から悪く思われる可能性もあるネガティブ面を請け負っているということでしょう。

もうひとり、ネガティブ要素を請け負っているのが、渡辺(緒形直人)です。
震災前から商店街のチームワークを乱すタイプで、アーケード建設に反対してみんなを困らせていましたが、震災で娘を亡くしてますます偏屈になっています。

2007年現在。聖人(北村有起哉)が渡辺に靴の修理を頼み、拒みながらも渡辺が修理してくれました。その出来はじつにすばらしく、感心した歩(仲里依紗)は、古い靴のカスタムを頼みます。歩は父の行動に倣い、自分もまた、渡辺にやり甲斐を感じてもらうアプローチに作戦変更したのかなと想像できます。

ただ、聖人、歩、結(橋本環奈)と続々渡辺を訪ねてくるのはちょっとうざいかも……。靴のデザイン画は愛子のもので。米田家そろって渡辺に迫ってくる。多勢に無勢。善意の分量が多すぎます。

本日は、靴修理の達人・渡辺さんを演じている緒形直人さんのコメントをお届けします。
チームの中で異端児でありたいので、オフの時間も独りでいるようにしていたそうですよ。だからこその漂う強い孤独感。すばらしいですね。


しっかりと悲しむ、しっかり辛い顔をした演技を朝から届けていきたい
緒形直人

Q1 出演が決まったときの気持ちは?

『ファイト』以来、19 年ぶりの朝ドラ出演になります。社会派ドラマや若者のドラマが多いなかで、こうした日常を丁寧に描く井戸端会議のような物語は、朝ドラならではと感じているので、お声をかけていただき嬉しく思っています。BK での撮影は雰囲気が良いですね。心地が良いです。

Q2 撮影ための準備や役作りについて

関西弁で演技するのがこれまであまりなかったんですよ。なので、何度も音源を聞いて練習していたら、先日、別のナレーションの仕事で、初めてイントネーションを指摘されるという、自分にとってショックな出来事がありました。関西弁に引っ張られてしまいました(笑)。
あとは、なるべく孝雄に近づけるように、撮影中もそうでないときも独りでいるようにしています。台本もあえて孝雄に関係する部分以外は、流し読み程度にしているんです。余計な情報を入れて、孝雄の演技に影響を出したくないから。それだけ孝雄の世界は閉じているんだと思うし。食事のお誘いもいただくのですが、チームの中で異端児でありたいのであえてお断りして、オフの時間も独りでいるようにしていました。

Q3 演じる役・渡辺孝雄について

不幸な役どころですね。神戸の靴店店主・渡辺孝雄は、母子家庭で育ち、弟のために学校を辞め、家庭を支えていた苦労人という設定です。苦労しましたが結婚し、子供が生まれようやく幸せというものを感じていたところ、母を亡くし、妻を亡くし、男手ひとつで懸命に一人娘を育ててきた。そうした状況で阪神・淡路大震災に被災し、すべてを失って 12 年間、まだ一歩も前に進めていない男です。でもこういう人は、地震大国である日本にはおそらくたくさんいるのでしょう。僕自身だったとしても塞ぎ込んでいたと思います。
物語が進むにつれて、自分の不幸にとらわれていた孝雄が少しずつ前を向く様子が描かれていきます。聖人が靴の修理を頼むのもきっかけのひとつ。修理したいと靴職人の本能が芽生えたのでしょう。それでもまた悲しみの殻に閉じこもる。何年も一歩も前に進めなかった男が一歩片足を出そうとしても出せない。そんな簡単なものではないですよね。その葛藤や苦しさを丁寧に演じていけたらと思っています。

Q4 視聴者へのメッセージと見どころ

今回、堀内正美さんともご一緒しますが、彼から「親を亡くすことは過去を失くすこと。恋人や妻を亡くすことは今を失くすこと。子を亡くすことは明日を失くすこと」と教えていただきました。心の復興は人それぞれ違います。阪神・淡路大震災だけでなく地震大国である日本で、こうした人が現実にいることを絶対に忘れないでほしい。そういった意味でもしっかりと悲しむ、しっかり辛い顔をした演技を朝から届けていきたいですね。


(文:木俣冬)

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