「おむすび」社食の原口(萩原利久)に翔也(佐野勇斗)が嫉妬【57回】
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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。
平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第56回を紐解いていく。
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立川のレシピ
入社1週間にして、社食の責任者・立川(三宅弘城)に献立を見直しませんかと意見した結(橋本環奈)でしたが、立川の機嫌を損なってしまいます。翌朝、出勤すると、原口(萩原利久)が職場で寝ていて、昨晩、立川の気分転換のカラオケに朝までつきあったと言います。
立川はすぐカッとなりますが、カラオケで発散するとケロッとなるらしい。尾崎豊を歌うと機嫌が治った証拠で、それまでつきあわないとならないようです。
令和のいまではこういうことはハラスメントと捉えられ、避けられる傾向にありますが、平成時代はまだこういう理不尽な上下関係がまかり通っていたのです。
気分のアップダウンの激しい上司の機嫌をとらなくてはならないことって本当に不毛な時代でした。
原口も入社したばかりの頃、結のように立川に意見を言いましたが、同じようにけんもほろろな扱いを受け、以後は黙って従ってきました。
立川はレシピも残さず、原口に伝授することもしていません。
結は原口と組んで、立川の調理を記録してレシピを作ることにします。
こそこそとメモをとっていることに立川が気づきますが、指摘するのはメモではなく、結と原口がつきあっているんじゃないかということでした。
確かに、原口の姉もギャルで、結にギャルぽさを感じて、親しみを覚えたようではあります。
原口の姉もギャルとか、立川のやけに理不尽な振る舞いとか、なんだかその場しのぎの展開のような。この手の手強い脚本には、俳優全員・例えば古田新太さんクラスの手練れでなくては成立させることは困難かと思います。いま、嵐のなかで揺れる船状態ですが、名優・三宅弘城さんの登板によってなんとか支えている状態です。
朝、出勤してきた立川は、「もうええて」と昨日とは別人。朝までカラオケして、家に帰って家族の朝食を作って出勤。もうおじさんなのに、責任者だからとちゃんと朝出勤する生真面目さ。性格はあれだけど、仕事には熱心という、こういう人も世の中にはいる感じを三宅さんが見事に演じています。
結は職場で協力者ができて、疎外感はなくなったうえ、目的(打倒立川、レシピの調査)を見つけ、張り切っていますが、その話しを聞いた翔也(佐野勇斗)は面白くありません。結が同世代の男性と仲良くしていると聞けば心穏やかではないのです。しかも、自分の調子がよくないものだから余計です。
そんな翔也を、「かわいいやつだなあと思って」と結はすっかりお姉さん的な感じです。
昔の結は恋に疎く、大人しかったのに、いつの間にかものすごーく世間をわかった人になっています。悪くいうとスレた感じがするのです。芸能界にずっといるとたいていスれると思いますが、そう見せないのが朝ドラヒロインだったわけで、でも今回はスレた感じを堂々と出していくスタイルです。
序盤、制服を着崩そうとしてためらって控えめで健気に振る舞ってみたけれど、ほんとうはいまのようなサバサバした物怖じしないキャラなのだということでしょう。丁寧な下ごしらえしないで素材のままで勝負する料理のようなドラマなのです。
何も知らない呑気な結と比べ、視聴者は翔也の状況を逐一見ているので、彼に同情してしまいます。が、しかし、翔也も高校時代から、あまりいいことがなく、というか、いいことになりそうになるとうまくいかないとことの繰り返しで。悲劇の選手といえば聞こえがいいですが……。
翔也は本屋で自分の症状が悪いものだと知り、深刻。
結と太極軒でご飯を食べたあと、摩耶山の掬星台に行きたいと持ちかけます。
結は、以前、ここ太極軒でのプロポーズにダメ出ししたので、今度こそ、見晴らしのいい場所で?と浮かれます。
「タイミングとしては悪くない、むしろあり」と思っていると、そこへ、陽太(菅生新樹)がやってきてーーと、翔也にとってまったくタイミングが悪すぎます。
ただただ、翔也がかわいそうに描かれています。彼にもいいことがあることを願ってやみません。
(文:木俣冬)
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