「おむすび」結(橋本環奈)はプロポーズされる気満々だが翔也(佐野勇斗)はそれどころではなく【58回】
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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。
平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第56回を紐解いていく。
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愛子が家出
結(橋本環奈)と翔也(佐野勇斗)のどちらにも試練が押し寄せています。結は社食の責任者・立川(三宅弘城)が頑固で、栄養士を認めてもらえず、手こずっています。
翔也は、肩の調子が悪く、独自に調べるとどうやら容易に治りそうになく、不安を抱えています。
久しぶりのデートで、翔也は結におりいって話したいことがあり、結は勝手にプロポーズのやり直しではないかと、表面上はそっけなくしつつ、内心、うっきうきです。でも翔也のテンションとは明らかに温度差があり……。結は全然、翔也の様子がおかしいことに気づいていません。
体調が悪いときにプロポーズはしないと思いますが、翔也は何を結に言うつもりなのでしょう。気になるところへ陽太(菅生新樹)が神戸に出張でやって来て、翔也は帰ってしまいます。
社食の原口(萩原利久)と結が親しくしているのは面白くないと感じる翔也ですから、本当なら陽太と結がふたりきりになるのも、嬉しいわけはないと思います。でも、翔也はやせ我慢して、久しぶりだからつもる話しもあるだろうと言うのです。半分本音、半分は話したいことを話すことにもためらいがあり、ちょうど保留にできて良かったというのもあるのではないでしょうか。
こういう何かぐちゃぐちゃしたはっきりしない感情が根本ノンジ脚本には滲みます。聖人や渡辺(緒形直人)、立川、おじいちゃん永吉(松平健)などもそうです。これは従来の朝ドラ向けではないセンスで、どちらかといえばテレビ東京の深夜ドラマの感覚です。これを描く場合、主人公(ヒロイン)をしっかり描いたうえでやればどちらも生きるのですが、たぶん、ドラマとして、翔也の男の痩せ我慢みたいな部分を狙って物語にしているわけではなく、手癖に近い無意識で書いているのだと思います。だから男性キャラが一様にそういう感じになっている。そのため翔也のキャラもドラマのなかで生かされてなくて、とてももったいないと感じます。余計なお世話ですが。
良かったのは、結がちゃんと、自宅に陽太が泊まることになったことを翔也に報告することです。これ、他意はなくても結が黙っていたら、やばいですが、そこは結、ちゃんとしています。じつは何も考えてなかったりして。
陽太は糸島で家族ぐるみで仲良くしていたから、聖人(北村有起哉)も愛子(麻生久美子)も大歓迎。とくに、愛子はちょうどお店のホームページを作りたいと思っていたので、IT 企業に勤務している陽太に頼ります。でも、聖人はホームページに反対なのでむくれてしまいます。
お客さんが減っているので、愛子なりに何か手を打ちたいと思ってのことですが、聖人はなぜか反対。この感覚、立川と似ている気がします。別に悪意で、相手の提案を否定しているわけではないけれど、自分が作ってきたパターンを壊されるのが面白くないのです。素直に、新しいことに目を向けることができません。そして愛子は苛立って家出してしまいました。いままで我慢していただけ立派だと思います。
で、立川です。結と原口がこそこそ、レシピを作っていると、しつこくつきあっているんじゃないかと訊ねます。が、実は、それが立川の懸念事項ではなく、レシピを作っていることに気づいていました。いきなり、レシピを作っていると頭ごなしに叱るのではなく、さりげなく、原口と結が何か一緒に行っていることを咎めていたのです。ただの短絡的に怒る上司ではないことがわかります。
結のレシピノートを奪って読んだときの立川の表情が印象的。絶対、立川もすぐに結を認めるのだろうと想像に難くありません。
ところで、陽太は、いまどきの企業に努めているようで、ジョイン、プライオリティ、オーソライズと英語をやたらと使い、聖人たちはちんぷんかんぷん。これ根本ノンジさんが脚本を書いた「無能の鷹」でも同じネタがあって、営業相手がやたらと英語を使うのですが、むしろ中身がない感じがすることを揶揄していました。
最近の世の中、それ日本語でいいのでは?と思うことをなぜか英語にする傾向がありますが、誰もがうすうす英語にする必要なくない?と思っていることを表しているようで、愉快ではあります。きっとお気に入りのネタなのでしょう。確かにジョインとかローンチとかアサインとか日本語でもいいよねって思いますよね。
(文:木俣冬)
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