「おむすび」結(橋本環奈)が演説「食べることは生きることだけでなく」【124回】

続・朝ドライフ

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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第124回を紐解いていく。

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最終回まであと1回

歩(仲里依紗)は身寄りのない詩(大島美優)の未成年後見人になろうと考えはじめます。最終回、まるで歩が主人公のようですが、結(橋本環奈)にも見せ場がありました。

ある日、大腸がんステージ3の患者・丸尾(細川岳)の病室に行くと、いない。手術が急遽決まったそうなんです。手術する前に、もう少し栄養を採る必要性を訴えてきた結としては大慌て。もともと、担当医の井上(井上拓哉)は栄養は点滴でいいから早く手術をしたほうがいいという見立てでした。上司の蒲田(中村アン)も生え抜きの新人に任せようとしていたのですが、結としてはこのままでいいと思えず、休止中のNST総出で説得に向かいます。

結果的に、蒲田が低栄養を解消してから手術したほうが術後の経過がよくなると判断したと言って一件落着。しかも蒲田がこれからは担当を代わると言うのです。

大腸がんの治療に関して筆者は専門外で体験もないのでどの程度、栄養士の判断が優先されるものなのかわかりません。ここで思うのは井上という役割が、最終週に急に出てきて、ただ場をかき乱すだけの役割で、お気の毒だなということです。井上役を演じた井上拓哉さん、いまのところいいところのない憎まれっ子役をよくぞ演じられました。

例えば、蒲田も、森下(馬場徹)も、最初はやな感じで出てきて、あとでいい人な部分がてきました。何かと斜に構えた態度をとっていた篠宮(辻凪子)もNST不要論を掲げていましたが、いまやNSTがあったほうがいいと思うようになっています。結のこともリーダーと認めていたり、すっかりチームの一員です。井上にもそういう場面があるといいですが、明日最終回なんで、もうそんなシーンを入れる余裕はないような気がします。

手術を阻止した結たちは、勢いに乗って、上層部にNSTの存続をかけあいます。結が代表して大演説。

「食べることは 生きることだけでなく、そのかたの家族や未来にもつながっているということです」

「食べることは生きること」というのはよく聞く言葉ですが、結はそこにさらにプラスしました。手術の成功が第一ではない。その後の患者が快適であることを考えることが大事です。

ここへ来て、ドラマは未来に目を向けます。歩が詩の後見人になろうとするのも、未来ある子どもに手を差し伸べたいという気持ちです。誰もが、より良く生きられるにはどうしたらいいのか、このドラマは考えたいのだと想像するに難くありません。

想像でしかないですが、こういうテーマを制作チームは打ち合わせで共有していたと思います。ただ、その思いを脚本という設計図に落とし込むときに、えいやっとフライパンにぶっこんで強い火力で炒めたんでしょう。スーパーで買ってきた野菜と肉を炒めただけでも十分美味しいし、栄養もとれます。生きていけます。

このドラマ、結の家の家庭料理が、パスタとかうどんとかチャーハンとか、わりと簡易なんです。ドラマによくあるやたらと凝った、インスタ映えしそうな、料理本が出せそうなメニューではないのです。ごくたまに、ごちそうが出るくらいで。忙しく、さほど裕福でもない家庭のリアルな感じです。そしてドラマもまた、そうなんです。とてもシンプルなのです。

視聴者としては、インスタ映えする、料理本が買いたくなるような手のこんだ、洒落た場面やセリフが見たい人もいるのです。でも、今回はそうじゃないのです。

そういえば、当初、宇佐川CPは「毎日食べたい町中華」と表していました。そういう感じなのでしょう。定食屋、町中華も美味しいですよね。もし、このドラマが残念と思うとしたら、単に、おしゃれで凝ったレストランと思って、おしゃれしてきたら、太極軒だったというだけのすれ違いです。ほら、あの、オレンジジュースと思ってお茶を飲んでびっくり、みたいなことがありますよね。先入観をもち過ぎると勘違いがおこります。

太極軒は太極軒で美味しいのです(筆者は太極軒の場面が好きでした)。お店の人もいい人だし、居心地良さそうだし。最初に、地元に根付いた昔ながらの美味しい定食屋さんだと思って出向けば、断然、満足できるのです。

そもそもタイトルが「おむすび」です。そのおむすびも具に凝ったりしない、いつも塩むすびなんですよ。質素倹約しながら、栄養はしっかりとって、みんなで生き延びていくという話なんだと思います。あと1回!

(文:木俣冬)

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–{「おむすび」第24週あらすじ}–

「おむすび」第25週あらすじ

第25(最終)週「おむすび、みんなを結ぶ」3 /24-3 /28


愛子と聖人が糸島に移住することになり、一人前になった翔也(佐野勇斗)が神戸の理容店を継ぐ。

そんな折、結たち NST は来週手術予定のがん患者が食事を全く食べられないため 、 手術の延期を担当医に申し出るが、担当医は点滴で補給すればいいと延期に反対する。

さらに病院の上層部からの要請で、コロナの影響による人員不足に対処するため NST の活動が一時停止されることに。

一方、歩の元に退院した田原詩がしばらく泊めてほしいとやって来る。

結は詩の行く末を心配するが、 歩は詩に自分のアパレルの仕事をやらせ、やがて大きな決断をす る。

–{「おむすび」作品情報}–

「おむすび」作品情報

放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始

出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。

【結の家族・米田家の人々】

米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。

米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。

米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。

【福岡・糸島の人々】

四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。

古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。

風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。

宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。

真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。

佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。

田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。

柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。

ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。

草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。

大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。

佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。

大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。

飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。


根本ノンジ

音楽
堤博明

主題歌
B’z「イルミネーション」

ロゴデザイン
大島慶一郎

語り
リリー・フランキー

制作統括

宇佐川隆史、真鍋 斎

プロデューサー
管原 浩

公式サイト

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